2021年06月28日

取返しの付かないところから、話を始める

これは大変難しいパターンだ。


ストーリーというのは時間軸だ。
もとに戻れるのは時間軸による変化ではない。
可逆的なのは「時間」を描いたことにならない。
空間を順番に描き、もとに戻ってくるだけのことだ。
そうではなく、
時間を描くとは、どこかで元に戻れないものを書くことだと思う。

だからストーリーの中では、
もとに戻れない変化がある。

人が死んだり、生まれたり、
会社がつぶれたり、家を追い出されたり、
気持が変わってしまったり、
人生観が変わってしまったり、
何かを失ったり、得たりする。

それはストーリーのきっかけであったり、
結果であったりする。

ある変化をした結果、二度と戻れない変化になってしまうこともあるし、
二度と戻れない変化をしたから、二度と戻れない変化になることもある。

ふつうのストーリーは、
まだもとに戻れる変化からはじまり、
ついに二度と戻れない変化へと至る。

しかしそれではゆっくりでインパクトが足りないから、
二度と元に戻れない変化から始めるパターンもある。


妻が死んだところから始める。
振られたところ、別れたところから始める。
家がなくなったところから始める。
会社や部がつぶれたところから始める。
殺人事件から始める。
ニューヨーク壊滅から始める。

失うことが一番やりやすい。
「次にどうするのか」を力強く書けるからだ。
逆に、力強いストーリーをつくったら、
最初に失うところから始めると、
立ち上がりのベクトルを作りやすいと思う。


生まれたところからやってもよい。

ようやくつくった会社のスタート。
部活、家、家族、息子、などのスタートだ。
出会って即片思いするラブストーリーなどもそうだ。
新しい都市やアミューズメントパークのオープンもか。

これらはすでに力強いスタートを切っているから、
初期ベクトルを持っている。
ただしその威力が落ちたとき、つまりそれに飽きたときに、
次のストーリーの勢いを保てるかが、継ぐポイントとして難しいと思う。

いずれにせよ、
穏やかな変化、もとに戻れる変化から始めるよりも、
インパクトがあり、スタートダッシュが効く分、
ヒキが強い。
ただそのあとの力強い行動へとつなぐことが、
パワーを落とさずにすることが難しいだけだ。

だから一度練習として挑戦しておこうぜ、
というのが今回の提案だ。

それが自分にとって難しいならば、
いつもの緩やかなスタートで始めればよい。
ただ、パニックから始める方法をマスターしておくと、
始め方のバラエティが出て、
飽きられない手法となるだろう。

ストーリーは山と谷の連続だが、
それをどうコントロールするか、
ということに究極的にはなってくる。
谷から始めるか、山から始めるかだ。

谷から始めれば山を登るのが楽しくなるが、
山から始めると、谷へ降りるのが面白くなくなる。
上昇を面白く描くか、下降を面白く描くかだ。

うんこ映画実写「ガッチャマン」は、
インパクトのあるバトルオープニングだが、
そのあとの谷がひどい。あまりにも詰まならくて眠気が襲ってくる。
(そのあと一度もオープニングを超えることなく終了する)
山から始めて、そこがピークだった例として記しておく。

結局、ラストのピークと比べて、
全体がどうか、ということに最後はなってくる。

元に戻れないポイントから始めるのは、
ラストのピークとの兼ね合いという計算をしておくといいだろう。
posted by おおおかとしひこ at 01:48| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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