2021年07月11日

【自キ】歴代のお気に入りスイッチを並べる

キースイッチは万年筆におけるペン先に当たる、
タッチを決める重要なパーツである。

これまで金と労力に糸目をつけず、
徹底的にやってきた。
ちょっと振り返ってみる。



1. Gateron Silent Red+20g、15g
2. Novelkeys Cream+25g+テープMOD
3. Kailh Choc Red+20g+ダブルスプリング
4. Gateron Ink Yellow+25g+ダブルスプリング
5. Kailh Speed Silver+25g+シリコンシートMOD
6. Gateron Ink Yellow改造「マシュマロイエロー」
7. Durock Alpaca+Ink Yellow Stem「イエパカ」
8. Durock L1改造「マシュマロL1」
9. Novelkeys Box Cream+スロー55gバネ切り
10. Everglide Aqua King+スロー55gバネ切り
11. Gateron Ink Yellow改造「イエロー55」
12. Gateron Pro Silver改造「シルバーマスク」

結構な遍歴だなあ。4年くらいかかって、
こんなにやってきたのか。


キースイッチは、
最初はHHKBの静電容量に飛びついたことで目覚めた。
スイッチ遍歴を貫くテーマがずっとあって、
「軽いスイッチにしたい」ということである。

HHKBの45gは、小説を書くには重すぎた。
それが出発点だ。

「打つ気持ちよさ」に「軽さ」という目的が加わったのだ。

NiZの静電容量35gを使ったが、まだ重いと思う。
自作キーボードで触らせて貰った35gのGateron Clearが、
市販で最も軽いと知り、
それがついてるQizan MagicForce45を、
アメリカから個人輸入する。
軽いのは良い。静電容量のゴムドームより、ストレート感が強く気持ちいい。
しかしタッチは、静電容量に比べれば気持ち良くはない。


オープンしたばかりの遊舎の、
65gから15gまでバネ交換したChocを触り、
25gないし20gが僕の求める軽さだと知る。
ハンダゴテを使ったこともないが、
自作キーボードに踏み出すことを決めた。
ここからが、独自改造スイッチのはじまり。

僕はPCBや物理回路設計には興味などなくて、
すでに惚れていたMiniAxeで、スイッチを弄るために自作道に入ったようなものだ。

物理配列はカラムスタッガードやTS配列など、
イベントで色んなものを触りまくったが、
これだというものには出会えなかった。
だったら最もシンプルなものをベースに、
工夫すればいいのではないかと考えた。
物理配列の影響が一番小さい方が、
スイッチの個性が出ると思ったのだ。


誰もが最初は使う、Gateron Silent Redが出発点。
底打ちが静音ゴムで和らげられて、
軽いバネでも痛くないのがポイント。

で、色んなスイッチテスターを触るうちに、
「スムーズさ」というファクターがあることを知る。

CreamのPOM素材が気にいる。205のルブもやる。
しかし静音ではなくうるさいので、
スイッチ内のステム接触部にテープMODを施す発明をする。

次に知ったファクターは、
「スピード」だ。
接点までの距離が短いから反応が早いとして、
「スピードスイッチ」と呼ばれる。
でも僕が求めていたものは、
「トータルトラベル」だった。
MX系の標準4mmは、ストロークとしては長すぎる。
僕はMacのパンタグラフ出身なので、
ほんとは2mmでいいと思っている。

そう思ってChocをしばらく触ってみたが、
気持ち良くはない。

軽いスプリングだと、底打ちまでに加速し過ぎてしまい、
底打ちでダメージを受けることがわかってくる。

で、
「底に別のダンパーを仕込んで、
二重のバネにすればいいのでは?」と思いつく。

半分に切ったスプリングを入れた「ダブルスプリング」を発明。
(これはベッドやバイクのサスで使われている、
車輪の再発明だった)

しかしバネ鳴りというか、
二つのバネが擦れ合う感覚が0にはならなかった。
プログレッシブスプリングに手を出すが、
軽いものがないので、肌に合わない。

バネ以外のやわらかクッションなら?と思い、
EVA、ゴム、シリコンなどを試して、
エラストマー樹脂にたどりつく。

マシュマロ改造と命名して、
色んなスイッチを試していた。


軽さ、底打ちの柔らかさ、スムーズさ、スピード。
「スイッチの気持ちよさ」は、
これらのファクターに分けられる。
もうひとつ加わったのが、
「スイッチのブレなさ」だった。
Boxステムはブレない。
それを求めてDurock系列へ。

そこで出会ったのがスロースプリング。
初動は重く、アクチュエーションは普通で、
底打ちが軽く感じる構造。
「力が底へ抜ける」感覚になる。

僕は「軽く始めて、底で重たく受け止める」
ことを考えていたが、その真逆のアプローチがあることを知る。

最終的にこのカーブの進化系、
ダブルレートスプリングは、スローのこの特徴をさらに追求して、
初動とアクチュエーションと底打ちが、
ほとんど同じ重さに感じる。
だから抜け感が相当良い。

Durock系列で知ったもうひとつの要素は、
「ファクトリールブ」だ。
これまでリニアスイッチは205が定番だったが、
これは摩擦もあるバターナイフの感じだ。
しかしDurock系列、ぼくはAlpacaで初めて知ったファクトリールブは、
105系列の、サラサラで撥水する感じのスムーズさだった。
のち、
材料の組み合わせやキツさでも変わってくることを知る。



ペン先の「気持ちよさ」は、様々なファクターによって成り立っている。

バネの軽さ(アクチュエーション基準)、初動から底打ちまでのフォースカーブ、
スピード性(アクチュエーション距離、総トラベリング)
軸の直進性、
スムーズさ(ステムとハウジングの材質、キツさ、ルブ)、
底打ちの柔らかさ、鳴り、
戻りの鳴り

が、今僕が評価しているポイントだ。
気持ちよさ、押下圧の軽さという二つの指標が、
触ることで僕自身の分解能が上がり、
このようなことが「分かる人」になってしまった。

分からない人はさいわいだ。
気持ちいい気持ちよくないだけ言ってればいい。

しかし一度「ちがう」と思った人は、
何がどう違うのか、
それをどうやったら「よい」になるのか、
調べ、分解し、再構築し、試し、評価して、
また分解する、
という自作ループに入ることになる。

それは、
親に食わせて貰っていた子供が、
ただ与えられるだけの人生から自立して、
自分の世界を求めて旅をし、
自分の城を作る行為に似ているとすら思った。


僕のスイッチの遍歴は、
ああでもないこうでもないと、
試行錯誤しながら、
現在のエンドゲームにたどり着いた旅路である。

さらに新しいファクターを発見するか、
旅をやめて根城になるかは分からない。

ベースの物理配列が変わればまた変わるかも知れないし、
論理配列である薙刀式からまったく別の配列になれば、
また変わるかも知れない。

ただ現在の、

薙刀式完成版
+MiniAxe(トップミドルナイロンプレート、ボトムミドルにエラストマー詰め、
シャムガキケースで重みマシマシ)
+サドルプロファイルキーキャップrev3(開発中)
+Gateron Pro Silver改造シルバーマスク
(バネ切り、ボトムにマステ三重貼り、トップにシリコンシート)

は、かなりいいセッティングだと思っている。


使えば使うほど不満が出て、
改良するべきポイントが出てくる。
改良とはすなわち、使い続けていることかも知れない。
posted by おおおかとしひこ at 11:12| Comment(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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