2021年07月21日

展開の4要素

展開ってなんだ。中盤でよく分らなくなることはとても多い。
そして新要素を無闇に投入して、
出落ちでまた行き詰まることもとても多い。
なぜか。展開というものを良く分っていないからだ。

僕も完璧に理解したわけではないが、
今のところ展開とは4要素に分けられると考えている。


1. 順接
2. 対立
3. 転換
4. 新要素


1. 順接

順接とは、「それをそうしたらそうなった」
という「普通の展開」だ。

お湯を沸かす→お湯が沸く→カップラーメンに入れる
→三分待つ→食べる

などである。
これらは丁寧にシーンを割って描くこともあるし、
適宜つまむこともある。

お湯を沸かす→完成→食べる
お湯を沸かす→食べる
のようにだ。

日常でよくあるものほど省略される。
日常で滅多に見ないものは省略されない。

女の子と出会う→結婚

は手抜きだろう。そのプロセスを見たいのだから。


この順接は、
「ほっといてもそうなる」と、
「人の意思でどうにかする」の二通りに分かれる。

「ほっといてもそうなる」は、
坂道にボールを置く→転がる
空港に荷物を置く→盗まれた
崖の近くに→落ちる
などだろうか。
「言わんこっちゃない」という展開にもなるだろう。

「人の意思でどうにかする」のは、
上のほっといたらそうなるのを、
どうにかしようという展開だ。

空港に荷物を置く→盗まれないように紐をつける
(→盗人が現れる→紐がついてて盗まれない)
給料がない→腹減った(このままだと死ぬ)→バイト探す
恐ろしい事件が起きる→逃げても止まっても死ぬ→戦う
崖→落ちそう→なんとかしてギリギリで踏みとどまり、脱出

などだ。
容易に考えられる通り、ここがストーリーになり得る部分だ。
つまりストーリーとは、
「ほっておいたらこうなる」だろうことを予想して、
そうならないように行動すること、だとも言える。

「ほっておいたらこうなる」が分かりにくい場合、
「こうなるよ」を事前に示すことがある。
デスゲームで最初に「こんなの簡単だぜ」って飛び出して、
最初に死ぬことで「このゲームは難しい」と示すとかね。

これらをうまく使い分けて、
ストーリーは進むことがある。

カップラーメンレベルの話から、
勉強しない→落第寸前→猛勉強→落第止める→東大合格
猛勉強→バカだから落第→ドロップアウト→やくざの元締めに
みたいに人生の展開まで、
ものごとのスケールはいろいろある。


2. 対立

1.の順接は、一人のシーンでも描けるが、
二人以上のときの展開がこれである。

人間二人いれば、どこかしらで対立するものである。
今晩何食べようでも対立するし、
一緒に仕事をしても対立するし、
敵方同士は対立する。

対立した後に、
ほっておいたら分かれる、喧嘩する、などがあるし、
それを止めるために話し合う、分かれる、などの、
順接で展開させる手がある。

展開に困ったら対立させれば、
次の順接を考えやすくなるぞ。
(そして展開のための対立は詰まらないから、
初登場時にすでにのちの対立のタネを撒く。
それが伏線というものだ)


3. 転換

これまで順接で来たものが、
方向性を変えること。

これまでの流れは一旦保留して新しい流れに関わることもあるし、
これまでの流れに戻れずに転換することもある。

転換は順接の変形で、
「こうなるだろう」から、
予測を超えたものになってゆくこと。

転換が激しすぎると、
「斜め上の展開」などと揶揄されるが、
斜め上こそ求められている場合がある。
どんでん返しは、究極の転換だろう。

順接ばかりでも飽きるし、
転換ばかりでも飽きるから、
これらは緩急や起伏とともに使い分けられたい。

転換はいくつあってもいい。
「なにい?!」といいまくる車田漫画は、
転換ドリブンで話を進めることが多いね。
(逆を言うと、順接が詰まらないわけ)


4. 新要素

食材の記事でも述べたけど、
同じ材料だけで展開していると、
いつか煮詰まってしまうことになる。
焦げつく前に、新要素を投入して、
新たな展開に持っていくことはよくある。

新キャラ、新舞台、新事実などかね。

とくに新事実の発覚は、
これまでの流れを変える転換としても機能する。
新キャラの登場も、
たいてい新事実を抱えているから、
すぐではないにせよ、じきに転換点があるだろう。

煮詰まってきたら新しい場所へいき、
そこで新しい人に会い、
新しい事実を聞くことで、
新章スタートを切ることができる。
「そこへ行けば手がかりがある」パターンでもいいし、
偶然もたらされてもよい。
(後者はご都合になる場合と、スピードが早ければノリノリの場合があるだろう)



これらの4つは、
その展開がどのような機能か、
で分けてみた。

自分のストーリーの展開部を俯瞰して、
これらの4色で色分けしてみるとよい。
あるいは、名作のプロットを分析して、4色に色分けするのも良い。

今順接だから、そろそろ対立か転換にしようとか、
今対立してるから、その順接を描き、転換まで粘ろう、とか、
転換して、順接でその後を描き、新要素投入でまた転換しよう、とか、
転換ばかりで咀嚼できないから、ここは普通に順接を伸ばそう、とか、
大まかな展開を考えるときにも、
パズルのピースとして使うことが可能だろう。

たとえば順接を▷、対立を⇔、転換を◎、新要素を⭐︎とかにして、
図に書いてみてもよい。

なんなら、「思いつくすべての展開」を、
カードに書き出して、
色別に整理するとか上の記号のカードにするとかして、
色々並べ直すなどをしてみたり、
足りない展開を思いついて追加したり、
ある部分は省略できるとわかったり、
正解の道筋が見えるかもしれないよ。


「正しい展開」というのがあるかはよく分からない。
ただ、「面白い展開」「詰まらない展開」はある。

詰まらない展開は、
目的がはっきりしない、
展開が遅い、
順接ばかりで平坦、
順接が足りなくて理解できてない、
淡々としすぎ、
驚かない、
などだろうか。

いくつかは機能の組み合わせを変えることで、
良くすることができる。

良い展開とは、
気持ちが展開から離れずに、
次を予想したり、人物の気持ちに深く入ったり、
つまりは夢中になっている状態のことだ。
posted by おおおかとしひこ at 00:54| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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