じゃあストーリーそのものはどうだったか、
あらためてリスト化してみましょうか。
以下は出来上がったシナリオを、プロットに戻す行為だと言えます。
濃縮還元というか。
これをすることで、話の構造が見えてきます。
過去に失敗を抱えたさくら、
新しい職場でカゲロウの世話を押し付けられる。
それは没になった映画の途中までのキャラクターだった。
息子が富士山の頂上に捕らえられているが、
途中でフィルムは終わっていたのだ。
カゲロウは続きをしたがっている。
その子役の現在に会いに行き、
台本を入手するさくら。
しかし息子など実在せず、
さらわれたのは子供のころのカゲロウだとわかる。
富士山頂まで登山し、
ARで山賊対カゲロウのチャンバラをやる。
カゲロウは山賊を倒す。
その瞬間、カゲロウは成仏する。
ただのAIキャラに戻ってしまったカゲロウ。
だがプリンタからカゲロウのお礼が出てきた。
不明な点が出てくると思います。
映画の中の話、カゲロウは狂っていた、という落ちだったのでしょうか。
それと成仏との関係性がよくわかりません。
(そもそも没になった映画は、狂っていたというどんでん返しのあと、
どのように決着したのでしょうかね)
クライマックスから逆算しましょう。
さくらは終始カゲロウに付き合っているだけのキャラクターになってしまい、
主体性がないキャラクターになっています。
なぜ彼女はカゲロウに協力するのか?
という根本的な、主体的な、
動機が抜けていると思います。
今のところ読み取れるのは、
「酷い目にあう失敗をした(それは不明)が、
乗りかかった船で、
都合よく強制リンクを張られたので、
逃げられずにやる」
という、どちらかといえば消極的な理由です。
失敗をしたことが本来動機に関わるべきですが、
本編では絡んで来ません。
さくらは失敗を抱えていたのだから、
カゲロウに協力することは、
この失敗を清算することになる何かがある、
というふうに普通はやります。
現代の精神病患者と、侍の山賊退治と、
中止されたフィルムと、
そこに関係性をつくらないと、
さくらが協力するのはただの親切、ないし仕事でしかありません。
(プログラマがいるんだから、
リンクの解除くらいできるだろと思うし)
クライマックスで、
そのさくらの何かが清算されないといけないでしょう。
カゲロウの無念は成仏し、
さくらの無念も成仏するべきでしょう。
極論、彼女の首の傷が消えてもいいと思います。
ちょっとファンタジーなので採用しませんが、
ファンタジーならば傷が消える、
というくらいに劇的な彼女のドラマを用意するべきでしょう。
注意すべきは、過去に劇的なことがあるべきではなく、
現在の選択や行動が劇的であるべきことです。
いくらでも過去話は盛れそうですが、
今、彼女が何をするかが、
その悲惨な過去より面白くないと、
現在は面白くなくなります。
ここまで逆算すると、
この全体の旅に出る、
第一ターニングポイントが弱いということがわかります。
押し付けられた仕事、厄介な仕事、
しかしもうリンクしてしまったから、
という強制的にやること。
そうではなく、
前向きに、自分から進んで何かをするべき動機が必要になるでしょう。
「やれやれだぜ……」では推進力が弱いのです。
「侍の思いを叶えることが、
自分の失敗を解消することにもなる」
という理想を目指すことにしましょうか。
さくらの内面に入ってみます。
なぜ心理カウンセラーになったのでしょうか。
なぜ患者をうまく救えなかったのでしょうか。
なぜ今は関係ない仕事のITをやっているのでしょうか。
つなぎのための、単なる事務バイトなんでしょうか。
人を救いたいという情熱があったとして、
それはなぜカゲロウを救うまで、
沈黙していたのでしょうか。
それともそれは触れるべきでないくらい嫌なのでしょうか。
そのへんがあいまいなので、
「かつて救う情熱があったかもしれないが、
一回失敗したら萎えてしまい、
いまは逃げているが、今回なんとなく人助けをした」
という中途半端なストーリーになっています。
ここに、劇的な何かが必要です。
あとよくわからないのが、
息子は存在せず、実はカゲロウの子供のころだった、
というどんでんですね。
どういう映画だったんだ?どういうストーリーだったんだ?
というのがよくわからない。
カゲロウがつらい思いをしたがゆえに、
架空の息子をつくって人生を送るようになった、
すなわち「精神病の患者」であった、
という風になると、
「彼を救うことが、あの失敗を繰り返さないことだ」
に親和性がでてくるように思います。
そうしようとしたのかな。
その芽はあるけど、出来ているとは言えません。
とりあえず、
侍は幻覚が時々見える、
という風に分かりやすく設定しましょうか。
そういう変わった侍キャラなんだ、
と事前に説明されたとしましょうか。
あるいは、どうもそういう変な症状があって、困っている、
というスタートでもいいかもしれません。
カウンセラーとしての仕事は、
統合失調症もしくは解離症だと気づき、
(このへんは調べる必要があります。強度の鬱でもいいのかな)
専門医と相談することが正解だったでしょう。
かつてそれに気づけなかったのはなぜか、
未熟だったから、
ではストーリーにならないので、
何か失敗の原因が必要です。
それをカゲロウ相手にリベンジすることにしないと、
物語にはならないと思います。
「あなたは病気なの」と、
患者に言えなかった、ということにしましょうか。
専門的に難しいことは全部放っておいて、
単にその勇気がなかった、
ということだと成立しそうです。
誰にでもわかりやすいし。
じゃあ、最初に言えなかった理由を探せばいい。
親友が患者だったから、
ということでいいかもしれません。
カウンセラーだから症状には気づいていたが、
なかなか言い出せなかった、とします。
それが悲劇を招いた、
ということにすれば、
失敗の原因が特定できるし、
それが侍の心を救う原動力になると思います。
さくらとカゲロウ。
これは二人の物語です。
双方に、深いドラマを足していくわけです。
これでメインプロットに必要なものはそろったかな。
次回。
2021年07月25日
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