このストーリーの主人公は誰でしょうか。
元カウンセラーで、AR侍の面倒を見ることになった、さくら?
途中で終わってしまい、息子を助けなければ、
と緊急事態に陥っている、カゲロウ?
劇的な事情を抱えているほうが主人公とは限りません。
僕は、乗り越える壁が大きく、
それが価値があるほうが、主人公だと思います。
僕はさくらであるべきだと思いました。
侍は成仏するだけだけど、
さくらの人生はこれからも続くからです。
だとしたら、彼女のストーリーにならなければならないと。
そのためには、彼女のほうのドラマが大きくなければなりません。
長い文章であるとか、設定がデカイとかは、
関係がありません。
おそらく、「より心が動くほう」
と定義できると思います。
カゲロウがすることは「あきらめること」です。
さくらがすることは「勇気を出して、救えるものを救うこと」です。
なにをするか、がドラマです。
なぜそれをするかが動機です。
ドラマとは、動機をもった行動の行方です。
その一連において、
どちらが価値があり、どちらが心が動くか、
がどちらにドラマがあるかだと思います。
その意味で、さくらが主人公であるべきだと思いました。
ところで、もとの話に劇的なドラマがあったかしら。
さくらは重い過去はありながら、
とくにそれが今回の件と直接関わりがあったわけじゃない。
「AR侍を成仏させる」というメインプロットは珍しくて面白く、
それが中止した映画であった、
というアイデアも面白いですが、
そこにドラマがあったかというと、
設定がおもしろかっただけ、といえます。
今おじいさんになっていた元子役とか、
設定は面白くても、
そこに人間のドラマがあったかというと、
そうでもないです。
だから、「物珍しいアトラクションを見たが、
映画を見た感じになっていない」というのが、
全体の印象でしょうか。
こういうことがあって、
こういうことがありました。
面白いでしょ? だと、
映画とアトラクションの区別がつかない。
こういうことをしようと思って、
こういう行動をしました。
紆余曲折あり、
結果、こうなりました。
そして、そのことにはこのような価値が秘められているのだ、
というのが映画であり、物語だと思います。
単なるそのレポートだと面白くない。
感動があったり、笑いがあったり、
何かしらの感情が深く動くことがドラマの役割だと思います。
設定が面白くてもそこがおろそかになっているものは、
シナリオとして面白くないということです。
さくらのドラマを用意しましょう。
僕のアイデアでは、
過去の失敗をもう一度繰り返さないこと、
が彼女の動機になるのでした。
それは、「言えなかった言葉を言うだけ」で成立するのでしょうか。
実はそこを第一ターニングポイントにするといいんじゃないかなあと思っています。
しかし15分なので、それが間に合わないならば、
解決を引き受ける、というところが第一ターニングポイントになると思います。
いずれにせよ、
目の前に迫った問題(おかしな侍)に出くわしたことで、
自分の内面の問題(過去から逃げていること)に、
立ち向かうことが彼女のドラマになるでしょう。
そこで、全体の構成を俯瞰してみることにします。
15分での構成を考えましょう。
次回。
個人的には、
1幕・3幕と、2幕の関係が、
すごくチグハグに感じます……
1幕でさくらと患者の問題を設定するのなら、
2幕にも患者が出てきて欲しいし、
3幕では、さくらと患者の問題が解決していて欲しい。
もしくは
2幕をさくらとカゲロウの話にするのなら、
1幕・3幕は、さくらとカゲロウにかかわる問題・解決にして欲しい。
1幕でさくらと元患者の話を設定して、
2幕でそれとはあまり関係のないさくらとカゲロウの話をして、
3幕でさくらの戦いはこれからだ!エンドで終わるのは、
なんかチグハグだな……と。
主人公が最後に一歩を踏み出して終わるテンプレに似た嫌な感じ。
一歩を踏み出してからを本編にしてくれー、作中で扱う要素は解決できる問題だけにしてくれー、と言いたくなる感じ。
「じゃあそれでお前がリライトしてみろ」と言われてもできないのが歯がゆいですが……
失礼なコメントになってしまっていたら申しわけありません。
それはもう元々のシナリオにある構造的な問題なので、
やりようがないかなあと思いました。
さくらのプロット(患者とカウンセラー)と、
カゲロウのプロット(息子を追っていたが、
それは子供の頃の自分であった)は、
まったく別の話で、
いわば二本立てです。
同時に解決させるなら、
富士山頂に患者を呼んで、
同時に治療するしかないと思います。
(患者に山賊役をやらせるか?)
それはかなり難しく、
そもそも何をすればさくらの過去が解決するのか、
設定されていないですからね。
心の問題は劇的解決というのは難しく、
刀で切れば終わるものでもなく、
クライマックスに持ってくるのは困難と思われます。
短編の題材として選ぶべきものでない可能性が高いです。
つまり、もともとのシナリオは情報が渋滞していて、
どこかは捨てる必要があるものだったといえます。
とはいえ、
たとえば富士山頂を捨てるとか、
さくらの内的問題を別物にして、
カウンセラーでなくするとか、
カゲロウはおいといて患者治療をクライマックスにするとか、
にした場合、
もとのシナリオとは別物になりすぎると、
初手で判断しました。
このへんが「添削」の限界ではないでしょうか。
原作の映画化などを考える時に、
リスペクトを保つとこのへんかなあと。
いや、壊していいんだとなったとき、
どういうストーリーにするのかは、
一から考えた方が早いでしょう。
ARなし、タケルなしにして、
侍を幽霊として、イタコを出し、
親友の患者に取り憑かせる(またはさくらに取り憑かせる)
クライマックスにして、
カゲロウと親友の二人同時に治療する、
などの離れ業が必要になると思います。
ARよりも幽霊やイタコのほうが自由が効くので。
カゲロウは映画の霊でもいいし、
そこも設定過多なら、
自殺した侍(息子はいなかったと絶望して自殺したが、
それを忘れている、など)
という体でもよいでしょうか。
精々クライマックスは病院の屋上で、
バックに富士山が見えてる、レベルかな。
一応そこまで考えた上で、
解体しすぎかなあと思い、
原作を尊重する判断としました。
上のアイデアは差し上げますので、
興味があれば自分で構築してみてください。
キル、富士山の侍、【脚本添削SP2021】、私の頭の中、がごっちゃになってしまっている。
ひどく戸惑われたと思います。申し訳ありません……
そうしたことをひとつずつ整理するのがリライトというものです。
「複数のストーリーが同時に存在する」
に慣れると、自在に行き来できますよ。
さくらと患者、さくらとカゲロウの二本の話を同時に解決する方法についてですが、
設定部の患者と、展開部のARキャラを同じ人物にするのがいいのではないでしょうか。
1幕でカウンセラーであるさくらは患者を救うことに失敗する。患者を救えなかったことを後悔し、患者を向き合うのが怖くなり、カウンセラーとしての自信を失う。
2幕でさくらは、ARキャラになった元患者と再会し、もう一度患者を救うチャンスを得る。
元患者の問題解決に乗り出し、1幕では知らなかった患者の事情を知る。
3幕で、患者の問題を解決する。ARキャラになった元患者を救うことで、患者を救えなかった後悔が消え、自信を取り戻し、再び患者と向き合えるようになる。
みたいな。
二本だった話が一本になり、その一本を解決すればさくらの内的問題も解決できます。
でも、15分じゃ難しいかもしれませんね……私には破綻なく面白く書ける自信もありません。
さらに元原稿の設定やプロットを生かして、となってしまうともうお手上げです。
なるほど、もはやARの必要性はあるんですかねえ。
本人でいいじゃないか、に対する、
それでなければならない、という理由が欲しい。
自殺してしまったから二度と救えない、
という状況があるとして、
(ご都合にも)AIとして保存されていた、
という序盤があり、
もう一度対峙する、ということならば、
比較的ストレートな話になるでしょう。
でもAI一回はさむ意味が分からないので、
舞台をSFにして、
遠くの星にいる人の意識をAIに転送して、
仮想空間で対処法を知る、
みたいな嘘をつかないといけないでしょうかね。
もともとのアイデアがつまりねじれていることは、
このように分析をしてみてもよくわかります。
ねじれているままなんとかするか、
ほぐし切ってから再構築するかは、
手間とも関係してきますからね。
もとのアイデアはそのねじれがヘンテコで面白くて、
アイデンティティになってると僕は思ったので、
そこを生かすには、と考えた立場でしょうか。
ガワは何でもよくなってしまいます。
患者の幽霊、生きている患者の再訪、死んだ患者の家族・友人の依頼、さくらがタイムスリップする、でもなんでもよくなってしまいます。
ARキャラに記憶が宿っている説明が難しい、ARである理由がほしいというのもその通りだと思います。
思いついた事を長々と書いてしまいました。
お付き合いいただいてどうもありがとうございました。