2021年07月24日

件のコントの文字起こしを見たけど

論点がズレてるよな?

(添削スペシャルの途中ですが、
大事な話なのでカットイン)


以下文字起こしの原稿。
---

小林「じゃあ、トダさんがさ…ほら、プロデューサーの」

片桐「(トダさんが誰か気づいた雰囲気で)あぁあぁあぁ」

小林「『作って楽しいものもいいけど、遊んで学べるものも作れ』って言っただろ」

片桐「ふん」

小林「そこで考えたんだけど、野球やろうと思うんだ。今までだったら、新聞紙を丸めたバット、ところが今回はここ(紙を指し示すようなしぐさ)にバットっていう字を書くんだ」

片桐「うんうんうん」

小林「今までだったら、ただ丸めた紙の球。ただ、ここに『球』っていう字を書くの」

片桐「うんうんうん(理解したような雰囲気)」

小林「そして、スタンドを埋め尽くす観衆。これは人の形に切った紙とかでいいと思うんだけど、(指で人型を作りながら)ここに『人』っていう文字を書くんだ」

片桐「うん」

小林「つまり、文字で構成された野球場を作るっていうのはどうだろう」

片桐「あぁ、いいんじゃない。じゃあちょっとやってみようか。(小林と同じように指で人型を作りながら)ちょうどこういう人の形に切った紙いっぱいあるから」。少し移動して箱を持ってくるような動き。

小林「あー、あのユダヤ人大量惨殺ごっこやろうって言った時のやつな」

片桐「そうそうそうそう。トダさん怒ってたなー」

小林「『放送できるか!』ってな」

---引用ここまで

このコントにおいて、
二人は「愚か者」の役をやっている。

しかしただの愚か者ではなく、
ある程度知性があり、
良いことと悪いことの区別をしている。

世の中で悪いと思われることをして、
わざと怒られて喜ぶタイプの愚か者を、
二人は演じていて、
「何なら怒られるだろうか?」
という文脈である。

そのときに「ユダヤ人大虐殺」を出すのは、
これが「悪いこと」と認識しているわけだ。

そのことについて無知でもなく、
そのことを賛美しているわけでもなく、
そのことを馬鹿にしているわけでもなく、
そのことを冗談にして笑っているわけでもない。

悪いことの中の、一番悪いことの例として、
「ユダヤ人大虐殺」を使っているわけだから、
それがどのようなものか理解しているわけだ。

これのほかに、たとえば、
「万引き」でも「落書きをする」でも意味は通じる。
しかし多くの人が怒る、
もっとも悪い出来事の一つで、
「ユダヤ人大虐殺」が選ばれているわけだ。


ただしい歴史認識だと思うが?


このコントをものすごく縮めると、
「怒られないギリギリの、やっちゃいけないことは何?」
「ユダヤ人大虐殺!」
「一番アカンやつやん!」
ということでしょ?

観客がこれを見て笑うとしたら、
「この愚か者二人が、
怒られるか怒られないかのギリギリの線を行こうとしているくせに、
一番悪い例を出した」
部分だろう。
これを笑う観客も、正しい歴史認識を持っていると思う。


「どのような文脈であれ、
ユダヤ人大虐殺に触れてはならない」
ではないと思う。

ヒトラーがユダヤ人だけを集めて収容所にうつし、
ガス室に送り込んだことは、
世界の悪行の中の一つであり、
風化させてはならないもののひとつだ。

殺人、テロリズム、収賄など、
世の中にはたくさん悪いことがあるが、
それを超える悪いことの例として、
ユダヤ人大虐殺が使われるのは、
正しい判断ではないか。


おそらく、
この文章を理解できない者がイスラエルに通報して、
(どのような通報が行われたのか現時点で不明)、
イスラエルは誤解したまま遺憾の意を表明したのではないか?
このコントの文脈を、上の文字からは理解できなかったのだろう。


おそらく、
「外交問題に発展する」と恐れた、
上の文章を理解できない者が、
小林の首切りをして自分の立場を守ったのではないか?

そうではなく、
理由はどうあれユダヤ人大虐殺に触れないことに決まっている、
ということなのだろうか?

それは「触れてはいけない」ことになり、
それへの議論を封じ、
正しい歴史認識を歪めることになるのでは?

元のコントを読んで、
「ユダヤ人大虐殺を冗談の対象にして、
歴史を正しく認識していない」
と思う人は、
読解力がない人だと僕は思う。



障害者にウンコ食わせたことは、
明確に障害者への差別行動だけど、
このコントはホロコーストへの反対運動ではないか。
なぜいけないのかがまったく分からない。

世界で一番悪いことの例にホロコーストを使うことが不謹慎だというならば、
ホロコーストは悪いことの例ではなくなってしまう。


なんかやべえんでクビにしました、
という愚かな組織委が見え隠れする。
読解力のない人には上の文章を読ませてやれ。
ただし切り貼りなく全文な。


追記1: ひろゆきがどのように翻訳されたか検証していた。
プレイホロコーストと翻訳したそうだが、
全体の文脈まで翻訳されたかは不明だ。
ただひろゆきもやっちゃいかんことでホロコーストを出している、
ところまでは理解してて、翻訳ミスなのではないかと指摘していた。

追記2: そもそも90年代のサブカルチャーは、
カウンターカルチャーだ。
強固なカルチャー、体制に対して、
なるべく反抗することが表現だった時代だ。ロックとおなじ。
体制側にサブカルが入って、
過去の反抗を揶揄される、というのはサブカル知らなすぎだよな。
改宗しないと体制に入れないのか?
筒井康隆の例がふじさんからあったけど、
筒井なら貫くだろうね。
そもそも監督引き受けないだろうけど。



件のコントに関しては、カウンターでも反抗でもなく、
「正しい歴史認識をもとにしたホロコースト批判」
が正しい読解だと思うがね?

もともとラーメンズのコントは、
頭のいいやつしか分からないと言われていた。
チクったやつが悪意を持って翻訳したか、
登場人物全員バカか、の二択になりそうだ。


今回の通報の件は極めて異例の段取りで、
デマや誤解も含めたネット社会に対して踊らされやすい、
デジタルリテラシーの低い政府を炙り出したわけだ。
一種のデジタルテロだよね。
ひろゆき仕事しろ。
posted by おおおかとしひこ at 14:24| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。