一回終えたけど、もう一個足しておく。
(全部書き終えてからですます調でないことに気づいたが、
まあいいや。このままやりきる)
前記事の行動表や動機の表は、
整理のための、リライトのための方法だ。
書き終えたものの分析に使うわけだ。
それを第一稿から考えられるやり方はないだろうか?
カードによる方法がありえるので紹介しておく。
詳細解説の手書きメモに記したけれど、
全体の構成を考えるときに、
僕は「1分1行」で考えることがよくある。
15分なら15行で書けるわけだ。
これをカード法でやってみるとよい。
15分なので、カードを15枚用意する。
A4の紙を4つに切って作ってもいいし、
8つに切って作ってもいい。
書きやすく試行錯誤しやすいものがよい。
デジタルは禁止。アナログでやること。
「手とストーリーの関係を作る」ことがこの目的。
実際には15枚では足りない。
30枚くらい作っとくとよい。
50枚いるかも。理由はあとで。
1枚のカードに書くのは、1分ぶんの場面だ。
1分がどれだけか分からないかも知れないが、
そこはカンでいいよ。
何を書くかというと、
場所と起こることを書くと良い。
一行あらすじみたいなことだ。
カードが変われば場面(シーン)が変わるかな?
「同」「〃」という書き方で、
前のシーンから動かずにストーリーが進んでもいいぞ。
それらを沢山つくるのだ。
「ITオフィス、実験室」
「ゴーグルをつけると、AR侍が現れる」
「〃」
「目覚めたAR侍に、切られる(バーチャルなのでセーフ)」
みたいな感じ。
まだ構想段階だから、いろんな場面がありえる。
「オフィス」
「タケル、仕事中のさくらにたのみごとをする」
なんかは前の版で残っていたカードだろう。
「高校」
「転校生の親友に、はじめて話しかけるさくら」
みたいな、親友とのバックストーリーもあったかもね。
「撮影所」
「カゲロウの、どうしてもOKが出ない場面」
「脚本家自宅」
「首を吊っている脚本家が見つかり、映画はお蔵入り。
(死因は結末に悩んだノイローゼ)」
「映画会社」
「当時のスタッフとカゲロウを会わせて情報を聞く」
なんて場面もあり得たかも知れない。
「富士山頂」
「山賊がいないことを確認して、さくらを切る真似をして成仏」
は前の版のクライマックスだ。
こんなのを最低15枚、多分20枚くらいは、
作ることになるだろう。
そしてそれを、並び替えるのだ。
どういうのが面白いストーリーになるかを、考える。
取捨選択。順番の入れ替え。
多いなら削る。
もし思いついたら新しくカードを作ってもいい。
あれとあれを一枚のカードにまとめられるかも知れない。
もしフラッシュバックが必要なら、
カードを半分にしたものを作ってもいいかもね。
「撮影所(フラッシュバック)」
「カゲロウ役と子役が交わした言葉」
とかがあり得たかも知れない。
「高校(フラッシュバック)」
「転校生の親友にさくらが話しかける」
「マクドナルド(フラッシュバック)」
「好きな男ができて、親友とさくらで被った」
みたいなのも思いつくかもね。
これらは構想時、アイデアノートにあったものかも知れない。
「さくらの自宅」
「剣の稽古をさくらにつけるカゲロウ」
みたいなこともあり得たかもだ。
アイデアは沢山考えろ。
色々なパラレルワールドがあり得る。
で、これを15枚に厳選するのである。
(フラッシュバックは1/2枚扱い)
何パターンもあり得る。
気に入ったやつは手書きでメモを取る。
これがプロットになるわけだ。
ここでベストを一個に絞ってもいいし、
複数残しといてもいい。
複数残すならスマホで写真とっとけ。
それくらいはデジタル使ってもよい。
さあ、やっと本題。
一幕、二幕、三幕にカードをわけなさい。
5枚、5枚、5枚に分かれるかな?
4、5、5かな?
3、6、5かな?
短編だから、きれいな1:2:1になることはないだろう。
大体1:1:1くらいでいいと思う。
もしそうなってないなら、
何かを引き、何かを足しなさい。
たとえば「キル」のオープニングショット、
「診療所で患者に襲われる」は、
僕は中盤に移動させた。
1分くらいはかかるものを、
フラッシュバックにしたりもしたね。
「二人で実際のフィルムを見る」
なんて場面も中盤に足したわけだ。
「ヒーヒー言いながら富士山にのぼる二人」
なんてコメディリリーフで、
緩急のための場面も作っておいたし。
しかもこれには、
「富士登山は大変だと絵で示す」重要な役割がある。
(これはカードにメモ書きしておいてもよい。
迂闊に捨てられないカードになるだろう)
そして、幕切れにどのようなエピソードがあるかを調べる。
それが、「強力な幕切れ」かどうかをチェックする。
「キル」では、
押し付けられた難題に「最悪…」という場面だった。
「富士山の侍」では、
「過去のトラウマを思い出して、
それでも『あなたは心の病です』と告げる」
場面であった。
どちらがドラマティックか、一目瞭然だ。
もちろんドラマティックなだけではなく、
「ここから何が期待できるか」
「センタークエスチョンは何か」
などがどう提示されているかをチェックするわけだ。
ただ場所が移動するだけでターニングポイントとする初心者がいる。
そうではなく、
「目的が決まる」場面にするとよい。
とくに、
一幕の幕切れ、第一ターニングポイントと、
二幕の幕切れ、第二ターニングポイントでは、
センタークエスチョン(それが解決すればストーリーはエンド)
が提示されなければならない。
ならない、わけではないが、
そうであると分かりやすく、面白くなる。
面白いのは、「危険が待ち受けていることが提示されているにも関わらず、
なお前に進もうとすること」だろう。
危険こそがドキドキのスパイスだ。
「キル」には何もないが、
「富士山の侍」では、クリニックの結果ハサミで刺された場面が挿入され、
下手したらこうなるぞの失敗例が危険として提示されているわけだね。
こうして、
カードを入れ替えたり、
新しいカードを作ったり、
カードを捨てたり、
前のを復活させたりする。
カードは30枚か、50枚か。
アナログのいいところはなんぼでも試行錯誤ができることだ。
一晩寝かせて、頭がクリアになったとき、
また考え直してもいい。
スマホにはいくつものバージョンのストーリーが記録されるかも知れない。
新カードを見たり、旧カードを見たりして、
また入れ替えてもいいぞ。
「一番面白いバージョン」が出来るまでやると良い。
あなたの「納得」は必要条件でしかなく、
十分条件は「みんなが見て面白いこと」だ。
さて、本題その2。
大体出来たな、と思ったら、
赤ペンと青ペンを用意すること。
各カードに、「主人公の行動」を書きなさい。
ないカードもあるだろうけど気にしない。
赤は、積極的、能動的な行動。
青は、リアクションや受動的な行動。
(ショックを受ける、思い悩む、思い出す、なども含む)
青と赤のバランスは?
青ばかりなのは消極的なストーリーで、
赤ばかりなのは積極的すぎる(攻撃的な?)ストーリーだ。
少なくとも一幕に赤が一個もないのは、
「ただ状況に流されている人」になってしまう。
「キル」がその例であろう。
第一ターニングポイントは、
「センタークエスチョンの解決に、
主人公自らが乗り出す」であるべきだから、
ここが赤になっていないと、
乗れないものになると思うよ。
これらを鑑みて、消極を積極にするにはどうすればいいか、
(前に人参を出すか、後ろの吊り橋を落とす)
積極を消極にするには(一拍おくとか、他の登場人物に何かをさせるとか)、
などを考えていくわけだ。
そしてまたカードを新しくすることになるだろう。
第三は、起伏のチェックだ。
日常レベル、いけいけどんどん、危険や敗北、
くらいの、0、+、-
の状態を想定して、
カードを起伏グラフのように作ってみよう。
「富士山の侍」では、
カゲロウに真実を告げたら頭痛を起こし、
再起動しなくなるという最大の-があった。
ここから逆転するには、
富士山に登る、という一番大変な冒険をしないといけないわけだ。
それだけではなく、
さくらがカウンセラーを辞めた理由を話し、
最大のチャレンジになるだろう、
という-から+への反転が期待されるわけである。
そこからいきなり+の大勝利にするのではなく、
コメディリリーフで一回日常の0をはさみ、
さらには一回失敗する(城門をあけて村が壊滅)、
という-にすることで、絶体絶命をつくる。
それを、
「もう一回やろう」で、最大の+に逆転ホームランを打つわけだ。
こうした、
起伏や緩急の計算こそが、
ストーリーの面白さになるわけだ。
ちまたの教科書ではもっと何段階にも細かく分けて、
グラフを書けなんて言うけれど、
僕はプラマイと0の3つくらいで大雑把に捉えたほうがいいと思う。
そうすることで、
0がずっと続いて単調だぞ、とか、
+ばかりだからきっと観客も-が来ると予測してるだろうとか、
俯瞰的にも砂かぶり席的にもストーリーを見れるようになると思う。
この、0+-は、あなたの生理的リズムになっているかも知れない。
他人のリズムを学び、コピーすることで、
違うリズムのジャンルを書く能力が得られるかもよ。
あなたの「納得」ではなく、
「面白さ」のほうが重要なのだ。
あなたはあなた独自のリズムでなく、
面白いリズムを奏でる必要がある。
で、そうなるように、
またまたカードを並べ替えたり、
新しく作ったり、捨てたりするわけだ。
カードは15枚だけじゃなくて、
50枚くらい準備しとけ、
という伏線はここで回収される。
ということで、
おまけ記事的に、
カード法を紹介してみた。
場面、三幕構成、行動や動機、起伏、
の4つをチェックできるやり方だ。
あなたはどのように「キル」をリライトするだろう?
そもそもどうやって「キル」は生まれただろう?
そしてどのようになるのがベストだろうか?
それらをカード法で分析することも、
やってみると良いだろう。
そこにあるものから、カードに還元することは比較的たやすいから、
やってみるとよい。
そして最終的には、
あなたは、「富士山の侍」に匹敵するものに、
初稿で辿り着かなければならない。
『富士山の侍』は観客としても本当に観たいと思える脚本でした。
自分の考えた物語が、実力が上の人の手によってさらに良くなるさまはなかなかの快楽をともないます…
ひるがえって「せっかく思いついたアイデアも、具現化の技術が足りないと腐ったまま出荷することになる」という恐ろしさも痛感しました。
2014年にはじめて添削講座に応募して以降、日々勉強したり実制作したり励んでますが、まだまだだな…と、そしてメアリー・スーに取り憑かれそうになってることにも気づけました。メアリー・スーはほんとに手強いです。引き続き精進します!
最近思う脚本の役割って、
「人間と人間でやること」
に特化した方がいいんじゃないかと考えています。
ARや侍やドローンや富士山はあくまでガワで、
結局「失敗をどうやり直すか」の芝居こそが、
リライト版の面白いところだと思うので。
そうすると、
「人間と人間(と三人以上の人間)が、
どういう緊張を持って対峙するのか」
を用意してあげるのが脚本の仕事なんじゃないかなあ、
と思います。
(もちろん緊張は前座で、
そのあとの解決こそがメインディッシュですが)
相撲にたとえたのは、
結局そこのガチンコ部分が、
シナリオなんじゃないかなあ、
となんとなく考えているからです。
最近のシナリオは、そこから逃げてるのをエンタメと呼んでる気がしますね。
ともあれおつかれさまでした。
代表作は次回作。次回を期待します。