2021年08月02日

わがままなキャラを一人作る

主人公=作者の罠に取り込まれない、
ひとつの方法。

わがままで自分勝手なキャラを一人作ること。


作者=主人公になると、
作者のわがままを主人公で叶えたくなってしまう。
代償行為である。

都合よく成功したいこと、
努力もせずにモテモテになりたいこと、
何故か最強能力を持っていて、
それを一発披露してみんなに尊敬されたいこと、
お膳立てをうまくされて、最後の一発だけ成功して、
手柄を独り占めしたいこと、
ご都合でいろんな条件がそろうこと、

などが横行してしまう。
他人がそんなことをやってたら、
ふざけんなクソわがままが、
と思うようなことでも、
いざ自分がとなると、甘くなってしまうのが、
人間というものだ。

これは、何回かメアリースー的な脚本を書いてみて、
その度に指摘され、
痛い目をみて、
自分と主人公の分離の痛みを経験しないと、
克服することは難しい。


それを避ける方法論として、
僕はこれまで、作者と主人公を別人にすること、
という提案をしてきた。
今回はその別案。

そのわがままな人格を、
主人公とは別キャラで存在させてしまうのである。
そして、自分のわがままな要求を、
そいつにさせてしまえばいいのだ。

主人公から見たらどうだろう?
めんどくさいやつだろう。
いまそういうこと言ってる場合じゃねえだろとケンカもするだろう。
そこでコンフリクトが生まれるわけだ。

つまり、メアリースーを放置して気づかない代わりに、
意図的に他者として利用してコンフリクトにするわけである。

よくあるキャラは、
いいところの坊ちゃん嬢ちゃんだろう。
クライアントの御子息というパターンもある。
単に、わがままな恋人でもよい。

このキャラクターに自分のわがままを言わせることで、
作者の代償行為をするとよいのだ。

こうすることで、わがままを客観化できる。
それを「処理」する側を描くことで、
トホホという客観化だ。

どんな文脈でもとりあえず「コーラ飲みたい」というキャラを入れれば、
それだけで話はややこしくなる。
つまりコンプレックス化が出来ることになり、
一段ミッションのレベルが上がる。
主人公は、そのキャラがいなければそのまま遂行したミッションと、
「コーラを手に入れる」の二つをクリアしなければならなくなる。

これを利用して、ストーリーをより面白くし、
逆境を増す、メアリースーのある種の利用方法だ。

そのキャラがいくらでもわがままを言うならば、
「なんと自分は御都合主義でものを考えていたのだ」
ということに気づくだろう。
言う側でなく、言われる側に立って、
初めて気づくことだからだ。


無意識の欲望の博覧会であるところの、
なろう小説では、
少し前にお嬢様ブームがあった。
これは、わがままを言う側と、言われる側の、
両方の欲望を満たすものである。
わがままを言うのは快感であり、
わがままを言われるのはドMには快感である。
それを娯楽化したものだ。

代償行為をここまで昇華するとは、
集合知は面白いなあなどと横目で見ていた。


さて、
ふつうに考えて、
わがままを言うキャラは、
ただのうざいキャラになってしまう。

ところがそいつが成長する瞬間は、
かなり面白く描けると思うよ。
最初はわがままだったが、急に男になったとか、
そういうのはストーリーの好物である。

トラブルメーカーは、
ストーリーを転がすためだけに存在したりするが、
ただの記号ではなく、
人間としての変化を描けると、
ストーリーとして興味深いものになるだろう。


そして、そうした代償行為のキャラクターを成長させると、
あなたのわがままも、一種の昇華をすることになるだろう。

次は、そのわがままキャラを出さなくても、
自分のわがままや御都合主義を客観化できてるはずだ。
「あいつならここでコーラが欲しいと言うだろう」と、
自覚的に客観視できるようになると思う。

あなた自身の書き手としての成長を、
物語自身でやることが可能だ。


僕が短くていいから何回も何回も完結させよ、
という理由は、
小さくてもいいから成長のステップがあるからなんだよね。
成長しない書き手は、たぶんほとんど完結の経験がないか、
まともに変化して終わる結末を描いたことがないかだ。
posted by おおおかとしひこ at 00:56| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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