2021年08月27日

名作のどこを分析すればいいか

「名作を分析して学べ」なんてよく言われるが、
どこをどう分析すれば正解だろうか?

「自分がこれを書くとしたら」
という視点で分析するのがいいと思っている。


あなたは評論家ではないから、
それがどのような評価であるとか、
過去のあれとあれの組み合わせであるとか、
そういうことを論じるのではない。
(もちろん、詳しくなれば、
そういうことも自動的にわかるようになるが)

そうではなく、
「もし自分がこれを書くとしたら、
どういう風な準備をして、
どういう風な段取りでシナリオを書くだろうか」
という視点で分析するとよい。

たとえば。

・最初に思いついたアイデアの核
・そこからどうやって発展して、これにたどり着いたか
・他のバリエーションの展開、登場人物、結末などはあり得たか、
 そしてこれがベストといえる要素は

などについて考察するとよい。
あなたが作者になったとして、シミュレーションするわけだ。

これは主観的な分析ともいえる。


一方客観的な分析法として、
以下のものはおすすめである。

・主人公について、行動の軌跡を抽出してみる
・他の登場人物について、同様
・各登場人物の動機のリストを作ってみる
・一枚にストーリー全部を無理やりいれて、俯瞰する図をつくってみる
・三行あらすじをつくってみる
・ログラインを書いてみる
・ペライチ枚にストーリーを纏めてみる
 つまり、プロットに還元する
・名セリフを書き出してみる、それがなぜ名セリフになるのか、考察する
・お気に入りの場面を、全部書き起こしてみる
・三幕構成の線を引く。幕の終わりはどうなっているか? そして三幕の時間はそれぞれどうか?
・詳細に分析する。各シーンの時間を測る
・各シーンを一行あらすじにしてみる
・各シーンを三行あらすじにしてみる
・各シーンでの対立ポイント、解決を明らかにする
・テーマを書いてみる
・テーマを語る構造を図にしてみる
・テーマを語る要素は、最低いくつか、書き出してみる
・登場人物の魅力について書いてみる
・他にどういう魅力があるのか、書いてみる
・伏線と解消のペアを、図にしてみる

などだろうか。

僕はいちいちこういうことをやっていた時期が一年くらいあった。
さすがに疲れるので、
全部はやらなくなったが、
「これは」と思うものについては、
とことん腑分けして分解していたものだ。

もちろん、映画館で一回だけ見ても分らないから、
何回も見直せるものに限った。
だけど、名作って大概なんとか見れるから、
かたっぱしからそういうことをしていた。

重たいテーマだけじゃなくて、
コメディとか、ライトなものや大衆的なものまで、
「どのようにすれば、オレは書けるか?」
を中心に、主観的に分析したり、
「これはどのような要素から出来ているか?」
「これはどのようなパーツからなり、どれは交換できて、
どれは交換できないか?
どれとどれがかみ合っている重要なパーツか?」
を客観的に分析したりした。

こういう時期が人には必要だと思う。

僕は、ひまな学生の時にやっとけ、
と思うが、
実際やったのはプロになってからだ。
若いときは、「過去のものを勉強するとそれにとらわれて、
今のセンスが台無しになる」
という恐怖感があった。

しかしセンスで登っていけるのは20代までだ。
次のセンスのやつが来るからね。
あとセンスはどんどん尖っていく。
先鋭化することがセンスだが、
尖りすぎると誰もついてこれなくなる。
だから、センスと関係ない実力をつけよう、
なんて思って、
センスと関係ない所を徹底的に学ぼう、
なんて思って、こういうことを一人ではじめた。


色んな分析法があると思う。
僕はあくまでこうした、というだけにすぎないし、
決まった分析法があるわけではない。
自分なりに分析すればいい。

「よし、俺はこれを書ける」と思うまで、
やることだ。
「いや、絶対無理だわ、このシナリオは素晴らしい」と思うまで、
分析するとわかることもあるけどね。
その時は素直に負けを認めて、
それはそれで勉強として心に刻むことだ。


名作を分析する、などと簡単に言うけれど、
何をどうしたら分析になるのか、誰も教えてくれない。
ということで書いてみた。
参考にされたい。
posted by おおおかとしひこ at 00:15| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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