2021年08月22日

【薙刀式】ソフトとハード

面白いツイートを見たので。
> k.bigwheel⌨️️ 開発基盤エンジニア(SRE)@株式会社Speee
> 自作キーボード、これ、最適化すればするほど入力デバイスとしての不条理さ、とくに日本語入力周りのぎこちなさに気づくんよな。
> ハードウェア的な完成度というよりソフトウェア側が未成熟すぎる。

ハードの完成度は最近ものすごく高まってて
(金属削り出しケースとか、高級スイッチとか)、
それは技術の発展というより、
既存のよその技術を、コストをかけて流用してる感じ。
ソフトの完成度は、
JIS規格とMS-IMEの独占が、新規参入を阻んでる感じ。


本来、
ソフトの方が、「発明」をしやすいと僕は思っている。
だって思えばすぐだから。

実装の困難さはもちろんあるが、
思うものはだいたい実現できるはずだ。

ハードは、思ったことと実際が違ったりすることは、
とても多いものだ。
(寸法が合わないとか、曲がりがひどいとかね)
コストがべらぼうだとか。
(アルミケース10万とか、現実的じゃない)


「3キー同時押し」は、
頭の中では想像するものの、
今まで誰も実装していなかった。
僕が薙刀式で、
「し+濁音+よ」=「じょ」
のやり方を思いつくまでは、
誰もそんなことをやろうとさえしてなかった。
(もしあったら教えてください)

組合せ爆発の実装の困難さは想像に難くないが、
いったん「便利だぞ」ってわかったら、
他に実装してくれる人が出てくるのが、
ネットで繋がった社会の面白さだ。
アイデアさえあれば、実装のやり方は問わないのが、
ソフトウェアの面白さだと思う。

それもこれも、3キー同時押しは、
DvorakJなら出来るだろと僕が思いついただけのことで、
DvorakJを作った人は薙刀式のような3キー同時押しを、
想定して作ったわけではない。
だけど、3キー同時押しを想定したDvorakJが、
薙刀式のアイデアのベースになっている。

こうして、アイデアがアイデアを生んでいくのが、
ソフトウェアの開発だと僕は思う。

フィクション芸術、たとえばアニメや漫画や小説は、
ある作品からヒントをもらい、
組み合わせたりオマージュしたりする。
ひどいときはパクる。
アイデアとは、そのようにして、
伝搬し、変形し、練られていくものだと僕は思う。
仮にパクったとしても、
本家以上に練られて、素晴らしいものになりさえすれば、
後ろ指をさされないのが、
アイデアの開発というものだ。

僕は薙刀式のアイデアは独占していない。
真似してどうぞ、そもそもコピーフリーです、
にしてある。
次への発展を、いつか誰かがするかも知れないと期待してるからだ。

オープンソースというのは、
そうした原始共産主義のような良さがある。
初期のAppleは図面と仕様を全て公開して、
これで面白いプログラムをつくってくれと、
オープンに投げたそうだ。
それで、Appleが思いつかなかったアイデアが、
たくさん生まれたわけだ。

僕は、ソフトウェアはそうするべきだと考えている。
そのかわり報酬の仕組みを誰かが別に用意するべきだなと。


ハードウェアのほうが、
材料費+加工費+利益
というビジネスになりやすい。
わかりやすいからね。

ソフトウェアはそういう風になっていない。
アイデア料という、コロンブスの卵に値段をつけるのは困難だからだ。
シェアウェアは、いまいち広まりにくい。
オープンソースというタダノリに負ける。

囲い込みをした途端、
アイデアの自由は発展を奪われる。

テレビがタダで見れて、
ビデオもなくて放送しぱなしでツッコミもされず、
漫画も電車の網棚に転がっていた時代は、
アイデアはパクリ放題だ。
つまり、アイデアはミームのように流通していた。

テレビが録画されてツッコミ放題になり、
つまりテレビが電波でなくストレージになり、
漫画も網棚から消えたら、
発展が止まってしまったように思う。
パクリ論争をチェックする機構が、
業界を硬直させたように思う。

僕は昭和の人間なので、
パクリ上等、ただし元ネタよりよくなってないやつは三流、
という見方なのだが、
昨今のギスギスしたものを見ると、
自由な発展の時代に戻ればいいのに、
と嘆いてしまう。


で、日本語入力だ。

最近ほかのIMEや、ワープロ時代の無変換変換の使い方など、
MS-IME以外の操作法に興味が出ている。

MS-IMEの操作法が、
日本語を書くのにベストと思えるまで、
洗練されているとは思えないからだ。

ほかにIMEとして常用してるのは、
iPhoneだけど(IMEの名前はしらない)、
変換精度はそれほど高くない。
連文節変換なんて大体だめだからね。
文節単位での変換確定に手間がかかって、
やはりキーボードより速度は劣る。

「ほかのIME」として僕が知ってるのは、
Google日本語入力とAtokくらいだ。
前者は処理速度の遅さに満足がいかず、
後者は有料のため触ったことがない。

かつて存在したサードパーティの日本語IME(FEP)、
たとえば松茸やWXやVJEなどは、
Windowsのアップデートなどによって駆逐されたそうだ。
プラットフォームを握る側が、
掃除を名目に土地を一掃するのは、
ヤクザのやり方である。
目的は独占だ。

JIS規格に沿わなかった親指シフトキーボードは、
早々に普及という使命を終えた。
僕はJISキーボードがまったく使いにくいと思っていて、
だから配置を自由に出来る、
論理配列カタナ式と薙刀式で、
機能キーも自由に再配置して、
いらないキーを全部捨てようと思って、
36キーのMiniAxeをもう三年くらい使っている。

日本語入力の、
ソフト的な発展を、僕はしたいのだと思う。

だってJISキーボード×qwertyローマ字×MS-IMEは、
僕の手書きより効率が悪いもの。
(自分のqwertyは530字(変換後)/10分。
自分の手書きは900。なお普通の大学生は、450ないし300)

薙刀式×MiniAxeで1500くらいまで来たけど、
僕は2000とか2500で書きたい。

それには、
MS-IMEを改良できるといいなあと思っている。

それをする術が僕にないため、
薙刀式では、
編集モードと称して、
機能キーやショートカットやマクロを含んだ、
60キー分の配列をつくっていて、
日本語入力の動線を再整理しようとしている。

(最近は、『「」一文字戻る』をメインに使い始めたので、
『選択部分の前後に「」をつける』『選択部分の前後の「」を取る』
のマクロごとペアにして活用している)

だけど「欲しいけど実装できない機能」というのもあって、
たとえば「この文を選択」「前の文を選択」「次の文を選択」
「この段落を選択」などだ。
脚本を書くとき用の、「このシーンを選択」「このセリフを選択」
なども欲しい。
AutoHotKeyなどで組めば行けるだろうが、
そこまでやる気力がないのでやってない。


こうした、
ソフトウェアが本来持つべき発展力を、
囲い込みは削ぐ。

悪意あるウイルスを防ぐためと称して、
セキュリティが生まれたためだ。

DvorakJの使用許可をする「一流」企業はない。
セキュリティの内容まで知らずに盲信しているからである。
なんならDvorakJのソースコードを全部読めばいいのに、
そんな手間を情報部はかけないよな。



冒頭にもどると、
自作キーボードのハードウェアの発展は、
会社単位でバリバリやっている部分が大きい。
発展する中国がやってるのもでかい。
日本で個人単位でバリバリやってる人は、
設計個人+施工中国+FedExという開発システムだ。

ソフトウェアの発展は、
個人単位でやってる人たちばかりだが、
会社的なものに乗っからないことと、
JISとMS-IMEの囲い込みに阻まれている感が強い。

もっとも、自作キーボード内のQMKや、
Mac内に常駐させる薙刀式は、
eswaiさんが開発してるし、
AutoHotKeyで書いた配列エミュレータ、
kenichiro_ayakiさんの紅皿は、
最近色んな配列を貪欲に取り込み、
やまぶきを継ごうとしている。

優れた日本語の論理配列は多数あり、
僕は積極的に紹介しているが、
置いてすぐ使うハードウェアに比べて、
ブラインドタッチマスターまでの労力とラグがある。

こうした個人開発の偉大なる発展が、
ハードウェアに比べて、
知られていないだけのことだ。

写真が撮れたり、触れないから、
ミームに乗りにくいのかも知れない。
シェアしづらい情報は、
ネットではなかなか広まらないのかもだ。

(ということで、
Benkeiのロゴとか作ればいいのかな。こんどやってみよ)



日本語入力のデフォルトは、
洗練も熟しもしていない。
ワープロ時代でほとんど止まっている。
囲い込みで進化を阻止してるすらある。

iPhoneのほうがマシだと僕は思う。使いやすいし。

僕は、薙刀式でキーボードの日本語入力を発展させてるし、
もっと洗練させたい。
posted by おおおかとしひこ at 10:49| Comment(2) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは、141Fです。

【甘くて酸っぱい蜂蜜小梅。】
http://61degc.seesaa.net/article/239652315.html

打ちづらい3キー同時打鍵を使わずに済む方法を探しに探して、蜂蜜小梅配列は現在の蜂蜜マトリックスにたどり着きました。

***

「スペースキーで変換する」は、ATOKの大発明でした。DFJやWXシリーズが追随してデファクトスタンダードとなり、現在に至ります。「変換キーで変換する」松茸やVJEシリーズが古臭く見えたものです。スペースキーの長いJISキーボードは、OADG準拠とか言わないでほしいものです。

***

囲い込みといえばやはり Apple ですよね。露骨なまでの排他性に恐れをなして、Mac も iphone も使ったことがありません。Windows 文化圏の適度な自由さが心地よくて、PC-9801 からこの方、Microsoft の庭先で遊んできました。
Posted by 141F at 2021年08月23日 01:26
>141Fさん

へえ、蜂蜜小梅の初期は3キー同時押しだったんですね。知りませんでした。
しかしいきなりBとの同時押しはキツそう。
薙刀式はまず「やゆよ」を打ちやすいところに置いたので、
初手からだいぶ別方向に行ってますね。
ここからマトリックスへ辿り着くのか、なるほどなあ。

Macは逆に操作法としては極めてシンプルな哲学に貫かれて、
バージョンアップもほぼないように見えるので、
ほとんど使い勝手が変わってないんですよね。
その削ぎ落とした美学だけ使ってればいいので、
逆にクリエイティブなことに自分の時間を割くことができます。
僕がWindowsを使うのに躊躇したのは、
逆に調教の手間ですね。
調教の方法がカオスすぎて、今更何から始めていいか、初心者お断りな雰囲気も嫌でした。


しかしスペース変換が発明されたとき、
「じゃ変換キーいらないじゃん」「別のことに使おうぜ(たとえば確定やBS)」
という話にならなかったのだろうか…
知らないだらけですいません…
Posted by おおおかとしひこ at 2021年08月23日 02:05
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