2021年09月01日

This is Ad.

スティーブジョブスが、
時代を変えたスケルトンのiMacを発売するときのエピソード。


何をどうアピールするか、
ジョブスはとても悩んでいたらしい。

オシャレなデザインであること、
画面がこれまでにくらべて格段によくなったこと、
コンパクトな周辺機器などに特徴があり、
だからiMacは時代を変えたのだが、
CMでどうアピールするか、
とても悩んでいたそうだ。

そのときたまたまアートディレクターが通りがかり、
相談することになった。
話を聞いたアートディレクターは、
そのへんにあった紙を丸めて5個つくり、
それをいっぺんにジョブスに投げたそうだ。

驚いたジョブスはとっさにそれらを受け止めた。
「何をするんだ」というジョブスに、
「This is Ad.」と彼は答えたそうだ。
ジョブスの手には、一個しか取れなかった丸い紙が残っていた。

つまり、色んな性能の総合的なバランスとか、
説明に時間がかかることは、
説明できないことである、
ということを彼は言おうとして、
ジョブスはそれを理解したのだ。

「強い表現とは、ひとつに集約したものである。
逆に、ふたつ、みっつは弱い表現だ」
ということをジョブスは理解したというわけだ。

以後、
Think Defferentを描くCMから脱却したMacは、
業界に旋風を巻き起こして一般客を掴み、
iPodやiPadのCMでも同様の哲学が貫かれることになる。

ワンメッセージ、というのは広告でよく言われる原則だが、
複数のもののバランスがいいんだよね、
なんてことを伝えたいときもあるだろう。
それでも、ワンメッセージにするべきだ、
というのがこのエピソードの結論だ。
二つ目、三つ目は捨てて、
「受け止められるだけのひとつ」にメッセージは集約するべきなのだ。


広告だけではないぞ。

あなたの作品は、なに?

ひとつに特徴をまとめたとき、
どういうことを言えるだろうか?

二つ目、三つ目を書き足したくなるのは、
5つも丸めた紙を放り投げることに等しい。
一個受け止めてわかるものに、
書き直しなさい。

ちなみに、そのときに出来上がったCMがこれ。
https://www.youtube.com/watch?v=cs73NP6BQrs
オシャレでかわいい、という事だけに特化した表現。
She is a rainbowが、ワンメッセージだ。

ここまで強く、たったひとつにまとめることが、
決断だ。
つまりは、表現とはひとつの印象に絞る決定のことである。
3つも4つも持ってくるのは、
表現者として未熟なのだ。
posted by おおおかとしひこ at 00:19| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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