2021年11月08日

リアリティとは、「それがそこにいそう」という感覚

リアリティがないものは、リアリティがあるべきだ。

だけど、そもそも考えてみよう。
フィクションとは、現実にないものを書くことだと。


現実にありそうなことは、
フィクションで扱うべき題材ではない。
明日遅刻しそうとか、
モテないから今日も退屈とか、
友達のくだらない話を聞くだけとか、
そういうものは現実でやっていればよい。

創作というフィクションに出てくるのは、
そうした現実にはないものだ。
幽霊とか、恐竜とか、タイムスリップとかだ。
現実にないから面白いわけで、
現実にあるものを出してもつまらないのである。

だから、そもそもフィクションとは、
リアリティがないものを扱うジャンルである。
まずそれが大前提だと思ったほうがいい。


で、それが「現実にはないもの」だからこそ、
「現実にありそう」を描く必要がある。

現実にはないから意味ないね、
ではなくて、
「それはそこにいそう」とおもえれば、
フィクションは、
それをみている間だけは現実になるのだ。


そもそも映画に出てくるような、魅力的な登場人物が、
現実にいるだろうか?
いないよね。

現実はフィクションよりいくらかしょぼくて、
魅力がない人たちであふれている。
だから、作り事の中の登場人物は、
どこか現実から離れた、魅力があるわけだ。

でも、それが「いない」と思わせてはならない。
「いそう」と思わせなくてはならない。
現実にいないものが、
「そこにはいそう」にならなくてはならない。

リアリティとは、そのための手段、道具だと思うとよい。


風魔の小次郎みたいな、
山猿みたいで、無鉄砲で、
自分のことだけを考えているやつがいたら?
ただいるだけじゃ、リアリティがない。
「いそう」にしなければならない。
周りはどういう扱いをしているか?
またこういうことをやっているから、なんかあったら、きつくお灸をすえる、
という風に反応しているだろう。
半ばあきらめながら、でも対応慣れしているだろう。
それもリアリティだ。

あるいは、本人自身はどう思っているか?
ドラマの小次郎は、
どこか冷めた目線を見せることがある。
ただ無鉄砲で訳が分からない男ではなく、
彼は彼なりにいろんなことを分析していることが描かれ、
それも彼の性格や存在に、
リアリティを持たせるために一役買っている。
なぜかヨシズミとかハンカチ王子とかの、
当時の世相を知っていて、
「今、ここにいそう」ということに一役買っている。

そうしたことを散りばめていくと、
「ああ、この人は、ここの世界にはいるかも知れない」と、
錯覚し始めるようになる。
その錯覚が、リアリティだ。

そのトンデモ忍者の世界に、
普通の常識の女子高生がいたら、
「警察に相談したほうが良いのかしら」と、
これまたリアリティのある判断をすることがある。
こうして、「それがそこにいる感じ」は、
更新されてゆく。


リアリティは、
「リアリティがなければならない」という、
ネガティブチェックではない。

「リアリティがあると、信じられる」という、
ポジティブな要素だと思うとよい。

それは、
現実にないものが、
今その世界にいるとしたらを、
どれだけ面白がれるか、
ということと関係していると思う。


幽霊はいない。
だが物語の世界にはいる。
どういうリアリティで、それを表現するか?

よくあるのが、
「触れたら透けてて、手が通り抜ける」というやつかな。
そこで、「幽霊がいるんだ」という確信になることが、
良くあるよね。
「フィクションでよくあるリアリティ」だから、
それで納得がいきやすいということもあるだろう。

でもそれで足りない、という判断ならば、
新しい幽霊のリアリティを考えてもいいんだぜ。

「ポルターガイストにお茶をだしたら、
コップを掴んだら割れる」でもいいんだよ。
「それがほんとうにそこにいる感じ」が、
創作できればいいんだ。


つまり、リアリティは創作なのだ。


取材をして、リアルを知ることは重要だが、
それは「現実にいるものが、現実にいる感じ」でしかない。
あなたがやるべきことは、
「現実にいないものが、いまここの仮想現実にいる感じ」
を創作することなのだ。


リアリティは、つまり取材では得られない。
あなたが、観客が、それを見て、
「それはそこにいそう」を想像できる創作が、
リアリティだ。


もしあなたの作品が「リアリティがない」
と言われて悩んでいるのだとしたら、
リアルが足りてないのではなく、
「リアリティという創作」がたりてないんだぜ。
posted by おおおかとしひこ at 00:06| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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