2021年11月11日

興味の持続

上手な書き手と、下手な書き手の差は、
ここに現れるような気がする。

下手な書き手のものは、
途中でどうでもよくなる。


言葉を変えると、
興味が持続せず、途切れる。

書き手がいかに「ほら、すごいだろ!」
といっても、
「興味ねえし」となるわけだ。

つまらなさの正体は、
興味がないのに続けさせられることだと思う。

つまり下手な書き手は、
「今、観客の興味」
を読み取る力がない。

一方上手な書き手は、
巧みに観客の興味を誘導して、
飽きさせず、
あろうことか爆笑させたり、涙を流させる。
観客と一体になり、
観客の望むものを与え、
望む以上のものを与える。

その差はなんだろう。

下手な書き手は、滑っている自覚がない。
上手な書き手は、滑ってたり、
上手くいってる自覚がある。


これは非常に感覚的なものだ。

だが客観性がないと、
このズレを起こしやすい。

・観客が興味がないのに、あると勘違いする
・観客が感情移入してないのに、
 作者だけ感情移入している
・観客がもう飽きてるのに、同じ話題を続ける

あるいは、その逆もある。

・観客が興味を持っているのに、ないと勘違いする
・観客が興味を持ち、待てるのに、
 焦って場面転換したり別の話題に行ってしまう
・観客に答えようとして、観客の先を行ってない

などだろうか。


あなたは面白い話をしているつもりが、
観客はちっとも面白くならず、
興味を持続せず、早く帰りたいと思うこと。

これにどう気づくかだね。

お笑いで、
登場以降、詰まらないと思うたびに札を上げて、
過半数を超えたら途中で中止、
みたいなバラエティをよく見るだろう。

どうしたら札を上げられずにすむ?

登場した瞬間は、
誰も札をあげない。
まだどうなるかわからず、
期待感で一杯だからだ。

ツカミに失敗すると札があがる。
しかし全員ではない。
ツカミはまあ滑ったとしても、
次の何かを見てから判断しようという人たちの方が多い。

二回滑ったら?
かなりの人が札をあげる。
どこかで笑いを取ったら?
札をあげるのをやめて、
この先を見るかも知れない。

三回滑ったら?
これまでの面白さと、
詰まらなかった不快を天秤にかけて、
札をあげるかどうかを判断するだろう。



つまり、
つねに面白さを提供していれば、
札は上がらない。

あなたが面白いと思っていても、
観客が詰まらなければ札は上がる。
それが滑っているということだ。


下手な書き手は、
一度も面白いものを提供できずに、
途中で脱落するような感覚である。

どこかで噛み合うかと待ってても、
一向に噛み合わないので、
滑る一方なのだ。


いま滑ってるのか、興味を持続してるのかは、
どうすればわかるだろうか?

僕は、「もっとも贅沢な観客に自分がなる」
ことだと考えている。

名作をたくさんみろ、というのはこういうことだ。
名作と言っても一ジャンルや特定の時代のものではなく、
古今東西あらゆるジャンルの名作がよい。

なぜなら、いろんな滑らない方法、
興味を持続させる方法があるからだ。

あなたがあなたの作品を一番前の席で見て、
興味が持続するかしないかを判定すれば良い。

そのジャッジが厳しければ厳しいほど、
それを切り抜けた面白さだけが世に出る。
当然、
そのジャッジが厳しければ厳しいほど、
あなたは自分自身の批判に傷つき、
立ち直れないかも知れない。

じゃあ、
ぬるい批評ならいいのか?
あなたを甘えさせてくれる人の前だけでしか、
作品を披露しないのか?
あなたが信者を抱える西野のような人物なら、
それも良い。プペルみたいな糞をつくってればいい。

映画はマスコミニュケーションである。
全ての人々の心を掴まなければならない。

そのためには、
あなた自身が最も手厳しい観客になるとよい。


その観客の興味を持続させられないものしか出来ないなら、
さっさとやめることだ。

あなたが唸らなくて、観客が唸るはずがない。


注意すべきは、
観客としてのあなたが、偏ってはいけないことだ。
古今東西あらゆるジャンルを見ておくことは、
観客としてのあなたを鍛えるだろう。
特定のジャンルと特定の時代しか見てなかったら、
そこにしか刺さらない。

貪欲であれ。
古今東西の名作に匹敵する面白さをつくれ。
自分を甘やかして、面白くなるはずがない。

創作の苦しみとは、
まさにこの観客を喜ばせるものを、
思いつく苦しみだ。



下手な書き手は、
面白くもなんともないものを出しても、
受け手が興味を持ってくれると勘違いしている。
あなたはまず嫌われているところから出発していて、
最後には好かれなければならない、
ということを理解していない。

上手い書き手は、
まず興味を惹くもので誘蛾灯にして、
上手に人参をぶら下げて、
こっちの水は甘いぞと誘導してくる。
気づいたら興味や興奮のジェットコースターにいる。



なぜ、どうして、どのようにして、
観客は興味を持続するのか?

観客としてのあなた自身に問うと良い。
何に興味が今持続しているか?
なぜこの人物に興味が出たのか?
なぜこの先を待ってしまうのか?
何を期待しているのか?
どこで心を奪われたか?

こうしたことを整理してみると、
名作のそれが明らかになる。

わかったら、それをやればいいだけだ。
posted by おおおかとしひこ at 00:02| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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