状況描写は最小限にせよ。
そのためには、
その状況は、いくつのパーツで出来てるか、
わかっていないといけない。
たとえば、
「戦争の跡、惨劇のよう」
という描写をするとしよう。
映画は具体的なので、
具体物で、抽象的なことを表現する。
たとえばこうだろう。
地面に爆撃の跡。
転がる死体。
建物が崩れる。
砂煙。
犬が鳴いているが、動くものはない。
千切れた手。
蝿が死体にたかる。
鉄条網。
乾いた空。
とりあえず多めに書いてみた。
「最低限の描写」セットはなんだろう?
地面に爆撃の跡。
転がる死体。
蝿が死体にたかる。
だろうか?
転がる死体。
犬が鳴いているが、動くものはない。
地面に爆撃の跡。
だろうか?
それとも、
転がる死体。
建物が崩れる。
砂煙。
千切れた手。
鉄条網。
だろうか?
どれも、「戦争の跡、惨劇のよう」
を描いていると思う。
ロングやアップ、
音のなるものや無音、
動くものと動かないものなど、
異なるものを用いて描いているように思う。
じゃあ何が最低限の組み合わせなのだろう?
僕は、
「後で使うかどうか」
で決まると思う。
千切れた手が腕時計をしていて、
それをあとで使うならば、千切れた手はマストだ。
鳴いている犬は、ヒロインの飼い犬で、
それきっかけでのちの話が進むならば、
犬はマストだ。
鉄条網に引っかかってパンクした車から話が始まれば、
鉄条網はマストだ。
逆に、そのようにあとで使わないならば、
千切れた手、鳴いてる犬、鉄条網は、
カットしても構わない。
状況描写は、
「あなたの頭の中に現れた絵」
を文字に起こすことではない。
「あとで使うもので、
今の描写をすること」である。
後で使うものがひとつもないなら、
景色のワンカットで済むかもしれないんだぜ。
最低限の要素のセットとは、
「あとで使うもののセット」ということなのだ。
予算が最低額になることも重要だが、
むしろ、
あとで一度も使わないものをカットしたとき、
残ったものでどう描写できるかを考えれば良い。
あとでヘルメットを使うならば、
「爆撃の跡に水溜りが出来ていて、
その中に落ちているヘルメットを兵士が拾う。
そのヘルメットは銃弾で穴だらけになっていて、
拾ったヘルメットから水がシャワーのように漏れ落ちる」
とすれば、
ヘルメットひとつで戦場の惨劇が伝えられる可能性がある。
もしヘルメットをあとで使わないならば、
これだけヘルメットをフィーチャーしなくてもよい。
つまり、
あとで使うもので状況描写をするということは、
「状況描写の時点からストーリーが始まっている」
ことを意味する。
セットアップはセットアップ、
ストーリーの始まりはそのあと、
だとすると、セットアップは冗長である。
つまり、最低限の要素のセットではない。
あとで使うものだけで、
巧みに状況描写をしてみよう。
そういう強い意図がない限り、
状況描写はだらだらしているぞ。
2021年11月21日
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