2021年11月21日

その状況は、いくつのパーツで出来ているか

状況描写は最小限にせよ。
そのためには、
その状況は、いくつのパーツで出来てるか、
わかっていないといけない。


たとえば、
「戦争の跡、惨劇のよう」
という描写をするとしよう。

映画は具体的なので、
具体物で、抽象的なことを表現する。

たとえばこうだろう。


地面に爆撃の跡。
転がる死体。
建物が崩れる。
砂煙。
犬が鳴いているが、動くものはない。
千切れた手。
蝿が死体にたかる。
鉄条網。
乾いた空。


とりあえず多めに書いてみた。
「最低限の描写」セットはなんだろう?

地面に爆撃の跡。
転がる死体。
蝿が死体にたかる。

だろうか?

転がる死体。
犬が鳴いているが、動くものはない。
地面に爆撃の跡。

だろうか?
それとも、

転がる死体。
建物が崩れる。
砂煙。
千切れた手。
鉄条網。

だろうか?


どれも、「戦争の跡、惨劇のよう」
を描いていると思う。
ロングやアップ、
音のなるものや無音、
動くものと動かないものなど、
異なるものを用いて描いているように思う。

じゃあ何が最低限の組み合わせなのだろう?


僕は、
「後で使うかどうか」
で決まると思う。

千切れた手が腕時計をしていて、
それをあとで使うならば、千切れた手はマストだ。
鳴いている犬は、ヒロインの飼い犬で、
それきっかけでのちの話が進むならば、
犬はマストだ。
鉄条網に引っかかってパンクした車から話が始まれば、
鉄条網はマストだ。

逆に、そのようにあとで使わないならば、
千切れた手、鳴いてる犬、鉄条網は、
カットしても構わない。


状況描写は、
「あなたの頭の中に現れた絵」
を文字に起こすことではない。

「あとで使うもので、
今の描写をすること」である。

後で使うものがひとつもないなら、
景色のワンカットで済むかもしれないんだぜ。

最低限の要素のセットとは、
「あとで使うもののセット」ということなのだ。

予算が最低額になることも重要だが、
むしろ、
あとで一度も使わないものをカットしたとき、
残ったものでどう描写できるかを考えれば良い。


あとでヘルメットを使うならば、
「爆撃の跡に水溜りが出来ていて、
その中に落ちているヘルメットを兵士が拾う。
そのヘルメットは銃弾で穴だらけになっていて、
拾ったヘルメットから水がシャワーのように漏れ落ちる」
とすれば、
ヘルメットひとつで戦場の惨劇が伝えられる可能性がある。

もしヘルメットをあとで使わないならば、
これだけヘルメットをフィーチャーしなくてもよい。

つまり、
あとで使うもので状況描写をするということは、
「状況描写の時点からストーリーが始まっている」
ことを意味する。
セットアップはセットアップ、
ストーリーの始まりはそのあと、
だとすると、セットアップは冗長である。
つまり、最低限の要素のセットではない。


あとで使うものだけで、
巧みに状況描写をしてみよう。

そういう強い意図がない限り、
状況描写はだらだらしているぞ。
posted by おおおかとしひこ at 00:34| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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