先日の編集試写であった出来事。
作中で使われている、
病院のモノクロのイラストについて、
「赤十字って広告に使えないんじゃなかったっけ?」
という疑問が出た。
そこの会社の販促物や広告で、
いっとき赤十字は使わないように、
みたいな流れがあったらしい。
みんなオロオロして誰も何も調べようとしない。
監督の俺が自らスマホでググり、
日本赤十字社のページのガイドラインを示した。
https://www.google.co.jp/amp/s/webtan.impress.co.jp/e/2014/07/08/17778%3famp
https://www.jrc.or.jp/vcms_lf/redcross-mark2011.07.pdf
根拠はジュネーブ条約38条。
赤十字をデザイン、
つまり看板や服や車に使えない理由は、
そのデザインを使ったそれが、
本物の病院、医療従事者、救急車だと、
誤認されないためである。
緊急地震速報に似たSEが使えないことと同じ理由だ。
じゃあドラマの中に出てくる病院は?
それは病院だという文脈であり、
ドラマ全体が病院であるわけではないから、
禁止ではないだろう。
ガイドラインによれば、
赤を使ったり、十字に見えたりしているものは、
すべて赤十字と指定している。
病院のアイコンとしてのイラストで、
なおかつモノクロ一色なので、
赤十字のガイドラインに抵触しないですね、
と僕がその場を取り仕切り、
そのまま次の話になった。
いや待て。
なんで監督がこんなことやらんといかんのや。
法律チェックする人たちが周りにいるやんけ。
営業はなぜ知らぬ。
広告代理店の皆様は何をしてるんや。
プロデューサーは。
これだけ人が集まってて、なんで監督がやるんや。
いや、まあ、知らなかったのは百歩譲るとして、
ググって正解に辿り着くのが俺が最速とは、
どういうことなんや。
神社仏閣や教会は、
広告に出さないって知ってる?
宗教関係はクレーム入れる人が多い
(我が宗教を勝手に一企業の利益活動に使うな)
人が多いから、
法律的に禁止ではないが、避けとこ、
のジャンルのひとつなんだよね。
だからそこの神社仏閣の広告でない限り、
初詣や鳥居を潜るシーンや、神前結婚式や(キリスト教スタイルは可能)、
宗派が特定される葬式のシーンは、
まず出さないことになっている。
昔銭湯に入ったじいちゃんに、
「極楽極楽ゥ〜」って言わせたら、
「仏教に抵触する」ってチェックが入り、カットされたなあ。
(どう考えても仏教ではなく、
日本に根付いた民間の習慣だろうに)
身近な例だと、運動会の万国旗もダメだ。
国旗の使用は結構ナーバスなので。
そのチェック機能に比べて、
宗教と同程度重要な医療に関して、
誰も知らないどころか、
ガイドラインにたどり着けないって、
大人が十人以上も集まって、
オンラインでさらに何人も繋いでるこの現場、
どんな烏合の衆だろうと思った。
少なくとも、
コンテや仮編集で、
病院のイラストを使うことは、
何週間も前からわかっていたことだ。
それに誰も何も気づかないとは、
一体どういう仕事の仕方をしてるんだろう?
僕にはまるで分からない。
ちなみに僕はそのガイドラインの条文を知らなかったが、
「赤い十字を避ければ良い」
みたいな現場のTIPSは知ってたので、
「モノクロの十字が使えないのはへんだろ」と思い、
一応その場で公式なガイドラインを確認しただけだ。
で、バカだと、
仏教ダメ!神社ダメ!国旗ダメ!極楽ダメ!
赤十字ダメ!
と、各個撃破で記憶するため、
「調べるのめんどくさいから、
かつてダメだったやつは避けることにしよう。
表現を変えてください」
と、
自分で調べるよりも相手に表現を変えさせる選択肢を選びがち。
そういう恫喝は結構喰らってきた。
それよりも、
「公的に重要なものは、
誤解を避けるために使用には注意する。
どのような誤認があり得るかは、
都度調べれば良い。
この場合はそのケースに該当するかどうかを、
個人で判断したうえで議論する」
というスタンスの方が、
柔軟にただしく対応できると思うがな。
仕事のスタイルだろうか?
生き方だろうか?
調べることができない人が、
その場のメンツを立たせるためだけに、
表現を譲歩させる。
それは許されるべきでないと思う。
でもその愚かさを告発する場面がほとんどなくて、
こうしたことは闇に葬られがち。
なので覚えてるうちに記録しておいた。
クレームを恐れて縮こまってる場所だと、
こうしたのびのびした判断ができない。
もっと大胆に、細かく、仕事をするべきじゃないかな。
2021年11月29日
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