親指シフトはqwertyローマ字よりも効率が良く、
JISカナよりブラインドタッチに向いている。
だが親指シフトよりも効率が良く、楽な配列があることを、
親指シフターはあまり知らない。
より新しい配列に変えてはどうだろう?
そんな乗り換え先ガイドをまとめてみた。
親指シフトは、
二つの親指キーとの同時打鍵により、
50音を30キーに圧縮(同手シフト)して、
清濁同置(逆手シフト)に成功した配列だ。
だがそれ以降の配列では、
もっと進化した考えが出てきた。
・親指2シフトはキーボードに左右されるから、
親指1シフト(スペースキーのみ)や、
文字キー部分(中指や薬指でシフト)を使えば?
・親指シフトは、実は人>中>薬>小の順に頻度順になっていない。
もっと指の強さに応じた頻度分布になるべきでは?
・よく使うカナの繋ぎを、打ちやすいキー配置にできるよね?
たとえばアルペジオ打鍵JKやJIによく使う二連接を入れるなど。
・清音と濁音は前後の連接が違うから、
むしろ清濁は別置のほうが運指的に合理的では?
(記憶負担があがるが)
・逆に、清濁同置だけでなく、
半濁音や小書きや拗音も同置にすれば、
より記憶負担が下がるのでは?
などだ。
これらは親指シフトが生まれた時代になかった考え方であり、
むしろ親指シフトを批判する形で生まれてきた考え方である。
親指シフトはパイオニアであるが、
最高峰ではない。
もっと疲れず、もっと直感的に、もっと楽に、
打てる、すぐれた配列はたくさんある。
まずは、
親指シフト2キーのままの、
「親指シフト方式はそのままで、文字の配置をさらに合理的に変えたもの」
の紹介。
TRONカナ配列、飛鳥配列のふたつ。
1. TRONカナ配列
TRONカナ配列は、親指シフトの、
「同手シフトで別の音、逆手シフトで濁音」を遵守したまま、
文字の配置だけを変えて、もっと使いやすくした配列だ。
日本語のカナの頻出トップ2は「い」「う」だが、
これがJKという最強位置に置かれてある。
親指シフトでは何故か小指と薬指という弱い指に当てられていて、
これだけでも、指の疲労度が変わるだろう。
親指シフトの考え方、
つまり「文字領域は8本の指、親指2本の同時打鍵で、
文字を変化させる」はいいアイデアだが、
文字の配置は必ずしも最高ではない。
TRONカナ配列は、
親指シフト方式をそのまま生かして、
配字をさらに練った、改良親指シフトと言える。
TRONカナ配列のもう一つのアイデアは、
「濁音になるカナ」を、必ずしも単打面に出していないこと。
親指シフトでは濁音になるカナは表面に限定されていたが、
濁音になるカナはすべてが頻度が高いわけではない。
(たとえば「ほ」など)
こうしたマイナーカナを裏面に置くことで、
メジャーカナを表面に出すことに成功した。
ただし、「一つのキーに、濁音になるカナとならないカナを置く」
原則をつくり、
逆手シフトで一意に濁音カナが決まる仕組みだ。
(これを、「濁音に関して排他的配置」と呼ぶことにする)
TRONカナ配列は、
これらのアイデアを盛り込むことで、
親指シフト方式でありながら、
親指シフトニコラを凌駕した効率性を持つ。
2. 飛鳥配列
飛鳥配列は、親指2シフトを使うアイデアは継承したものの、
同手シフトと逆手シフトで役割を変えず、
単打面、右シフト面、左シフト面の計90範囲を使い、
清濁別置を実現した配列だ。
清音と濁音は、前後に来るカナが違うから、
運指の効率化(最短距離)をするなら、
別に並べるべきだと考える。
当然、他のカナもすべて連接のしやすさを考慮されていて、
あるキーを打った後に、次に来やすいカナが、
次に打ちやすいキーになるようになっている。
「指がぬるぬる繋がる」と形容される。
親指シフトは同時打鍵のみだが、
飛鳥は同時打鍵かつ連続シフト
(押しっぱなしで次の文字にもシフトがかかる)を、
採用している。
このため、シフト面を継続したまま連接を組める。
これが、指がつながりやすい秘密だ。
清濁別置で記憶負担が大きな代わりに、
運指の効率化を徹底した配列だといえる。
飛鳥には、
覚えやすさを重視したかえであすか、
拗音を同時押しで打てるようにしたあまのあすかなどの、
改造版も存在する。
親指シフト系列には、
親指2キーをいい位置に確保しなければならないデメリットがある。
(もっとも自作キーボードでは、親指2シフトを
簡単に実現できるタイプが増えてきたが)
どのキーボードでも使えるように、
親指以外のキーでシフトする配列もある。
(実質、そのほうが多い)
3. 月配列
(他のナンバリング違いもあるが、シンプルな元祖2-263式を勧めておく)
ベースになるのは左右交互打鍵の運指を重視した、
新JIS配列。
これを中指シフト化して、親指を除く30キー範囲で使えるようにしたもの。
「DまたはKの後の文字にシフトがかかる」という前置シフトで、
単打は1打、シフトは2打の、
複数打混在方式だ。
運指効率がいいことと、記憶負担が少ないことが特徴。
一方、濁音はL位置の「゛」を後付けする二打
(「ひふへほ」のみシフトカナなので三打)と、
打鍵数が増えることが欠点。
しかしローマ字より打鍵数は少なく、
頻度の高いものが単打面にあるため、
親指シフトの同時打鍵が中指ずらし押しになった程度の感覚だろう。
4. 薙刀式
30キーどころか27キーにしかカナがない。
(打ちづらいQTYを使わない)
シフトはスペースキーのシフトのみ。
濁音、半濁音は人差し指の逆手同時押し、
拗音は「し」と「よ」の同時押しで「しょ」になるなど、
清濁半濁小拗外来音をすべて同置とした、
記憶負担最小の配列。
(TRONの「濁音に関して排他的配置」のアイデアを拡張して、
「濁音に関して、半濁音に関して、小書きに関して、
拗音に関して、外来音に関して排他的配置」になっている)
また、BSやエンターやカーソルやIMEオンオフが、
同時押しを含み30キー内にあり、
文字打ちだけでなく変換確定までシームレスに行う思想である。
飛鳥配列同様、運指のつながりに意が置かれ、
ある、ない、する、られ、して、こと、てき、ひと、
など、日本語の重要語句が、
片手アルペジオという最速運指で打てるように配置されている。
5. 新下駄配列
飛鳥同様、清濁別置で運指の効率化を図った配列。
親指を使わず、
中指シフト、薬指シフトを用いて、
DK、SLと逆手の同時押しでシフトがかかる方式。
単打面と合わせて3面あり、この90キーに、
運指効率を考えて清音濁音、半濁音、小書きが配置。
とくに100万字統計を根拠とした、
使用頻度の高い順に並べられた連接効率は、
他の追随を許さない高速性、楽さを誇る。
また、IまたはOと左手の同時押しで、
拗音を1アクションで打てるようになっており、
すべての1モーラを1アクションで打てる配列。
(親指シフトは拗音や外来音に2打かかる。
また、1モーラ1アクションは新下駄の特権ではなく、
蜂蜜小梅、薙刀式でも実現)
記憶負担は全配列中最も重いが、
マスターすれば最高に効率が良い。
新配列系の中ではタイピングゲームなどで最も結果を残していて、
高速性能には定評がある。
これは徹底した運指効率の楽さの結果だろう。
親指シフトよりすぐれた配列は、
ほかにも沢山あるが、
メジャーどころを独断と偏見で紹介した。
僕の評価は以下だ。
親 T 飛 月 薙 新
記憶負担 A A S B B S マスターの大変さ
連接効率 B A S A S S 書いてて気持ちいいからどうか
速度 B A S S A S 短文長文での速度総合力
疲労度 A A A A B B 指の酷使や打鍵数
親指シフトより一段階すぐれたら○、二段階すぐれたら◎、
一段劣るなら×として、
T 飛 月 薙 新
記憶負担 × ○ ○ ×
連接効率 ○ ◎ ○ ◎ ◎
速度 ○ ◎ ◎ ○ ◎
疲労度 ○ ○
親指シフトが性に合い、
これ以外ないと決めてる人は置いといて、
効率性や手指をいたわるために親指シフトを使っているならば、
もっといい配列がもっとあることを、
知ってもらいたい。
このままでは井の中の蛙だと批判されてもしょうがない。
これらの打鍵の様子を動画にダイジェストでまとめたものがあるので、
それをも参照されたい。
どれが楽そうで速そうかは、百聞は一見にしかずだろう。
https://m.youtube.com/watch?v=rUiEKIaGtHg
(TRON、月配列は未収録、月系の月光は収録)
ちなみに上に紹介したものは、
TRONをのぞいて「やまぶきR」の後継エミュレータ「紅皿」に実装されている。
https://qiita.com/kenichiro_ayaki/items/03ac81a20137c3d91554
(TRONもニコラの定義ファイルを書き換えれば使えるよ)
Windowsでは紅皿をインストールするだけで使えるので、
以下のHPなどで使用方法を確認の上、使われたい。
なおDvorakJでは、TRON、飛鳥以外は実装されている。
Macは、
飛鳥はLacalle、月配列はGoogle日本語入力、
薙刀式はBenkei、新下駄はKarabinar-Elementsで使える。
TRONカナ配列: https://www.personal-media.co.jp/utronkb/tron-layout.html
飛鳥配列: https://ameblo.jp/asuka-layout/entry-10589277915.html
月配列: http://jisx6004.client.jp/tsuki.html
薙刀式: http://oookaworks.seesaa.net/article/456099128.html
新下駄配列: https://kouy.exblog.jp/13627994/
親指シフトはすぐれた配列ではあるが、
まあまあすぐれた配列だとしか僕は考えていない。
よほど早くてバンバン文章を書いてる親指シフトの動画があれば、
僕も考えを改めるが、ネットにはないんだよなあ。
新下駄、飛鳥、薙刀式は動画があり、
たしかにqwertyローマ字やJISカナよりすぐれているのは分かる。
だけど親指シフトはこれに比べると、
そこまでピンと来るほどじゃあない。
ちなみに新配列系の動画をまとめたリンク集を作ったので参照されたい。
これらに埋れれば、親指シフトが特別優れてるといえない、
というのが僕の感想だ。
(もちろんqwertyやJISカナよりはすぐれているが、
この二方式は最低レベルの効率性能だと考える)
http://oookaworks.seesaa.net/article/475004852.html
もしシフターの方で、
カナ配列ダイジェストに載せたものより、
さらにすぐれた打鍵動画をアップできる方がいたら、
是非見せて欲しい。
親指シフトは富士通のサポートが終わったことで、
他の新配列と同じ立場になった。
じゃあもっといい配列に乗り換えても、いいと思うんだよね。
(追記)
「親指シフトと同じ打鍵法だけど配字がすぐれているため、
今すぐ乗り換え可能な配列」
の最初の例で小梅配列を紹介していたが、
廃盤だそうなので、TRONカナ配列に書き改めました。
141Fです。
拙作をご紹介いただきまして、ありがとうございます。と言いたいところですが、小梅配列と蜂蜜小梅配列は未完成につき廃版(アーカイブ)扱いにしたバージョンです。シン蜂蜜小梅配列以外の旧版を、このような脈略で紹介されてしまうのは、作者として甚だ不本意です。
小梅配列+蜂蜜マトリックス≠蜂蜜小梅配列
http://61degc.seesaa.net/article/456950036.html
誠に勝手ではございますが、心中をお汲み取りいただけると幸いです。
なるほど事情はわかりました。
親指シフトニコラから操作が近い順に並べて、
段階的に「違う考え方がある」ことを示したつもりですが、
一番ニコラに近い操作法の代表は、
ではTRONにやってもらいますかね…
少々時間をください。