2022年01月06日

ハリウッドスタイルと日本のスタイル

を書き分けて解説している例があったので。
https://mobile.twitter.com/Yuki_Mats/status/1477615862593257474


ハリウッドの記法に関しては類書に詳しいので省略するとして。

・1ページ1分は変わらないが、1ページはA4一枚で、文字数が倍くらいある
・センター合わせで台詞、ノーマルでト書き
・ト書きは異様に書き込む
(これは専門家よりも投資家に向けて書いている可能性がある)

ような特徴がある。

両者の比較としては、
知らない人にとっては興味深いだろうが、
ちょっと日本の脚本を貶めすぎだな。

ハリウッド版の脚本のように、日本のフォーマットでも書けるぞ。

〇剛の実家、内、夕日が斜めに差し込む

   剛と薫が、おそるおそる入ってくる。
   ガラス戸を開けると埃が舞う。
   床に積もった埃に剛の足跡。
   口を押える薫。剛、薫の手を取る。
剛  「十五年ぶりだから、俺もどこにしま
 い込んでるか分からない」
   障子を開ける。六畳間にちゃぶ台、座
   布団、古新聞、隅にはブラウン管。
剛  「なんも変わってねえな……」
   蛍光灯の紐を引っ張るが、電気はつか
   ない。
   薫、口元を袖で抑えながら入ってくる。
   鴨居にある先祖の写真を眺める剛。
   薫、たんすの上の色褪せた写真を見る。
   中学生くらいの男の子、その後ろで笑
   う中年男女。
剛  「……体育祭を見に来てくれた時だ」
   その男の子は、剛の中学生時代。
   他に小学校入学式、七五三の写真も。
   と、いきなり黒電話がりりりり、と鳴る。
薫、剛「!?」


ざっとこんなもんか。
みての通り、徹頭徹尾、何も起こっていないので、
あまり褒められた脚本ではない。
ということは、もう少し詰められる。
一分くらいに縮められると思う。

この、「何が起こっているか、明らかにする」
ために、日本の脚本記法を使いこなすことだ。

どういうビジュアルかは、正直監督が決める。
脚本家は、何が起こるのかを明らかにするべきだ。
(もちろん雰囲気は大事)

このシーンでは、
写真の伏線と、
電気が来ていないのに鳴る電話の、
ふたつの要素以外は重要ではないだろう。

その、「何が起こるのか?」のリストが日本型の脚本だと言ってもよい。

そもそも例に挙げられている日本型の脚本はわりと下手だ。

台詞で説明してしまっているし、
「……」に頼りすぎている。
絵で語るのは、ハリウッド型だけでなく、
日本型脚本でも出来る。
要は腕だ。



で、こうした記法は、
おそらく「脚本が読めない人」用にあるんじゃないかって思った。
ハリウッドのほうが、圧倒的に投資家が読むからね。

日本の脚本が読めないのは、
「起こること」と「それをどう描くか」を分離しているからで、
どう描くかだけで投資が決まるなら、
黒澤みたいに油絵でも描いてろってことだ。

まあ、今の日本の投資環境では、
脚本すらきちんと読まれていないから、
投資家向けサービスのために、
こうした脚本スタイルにすることもあり得るかもしれない。

ただし現場にはいらないよな。こんなに情報過多。
ストーリーの方向性が見えてないものね。
posted by おおおかとしひこ at 00:31| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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