頭の中で何をしているのか、現代科学は解明したとは言えない。
だけど、シナリオに必要なのはふたつだ。
イメージと論理。
どちらが欠けてもいけない。
頭の中でイメージを出来る人が、
まず創作者としての資質だろう。
絵をイメージできない人は、
映画シナリオライターには向いていない。
(逆に音楽家など、視覚を必要としない才能があるかも知れない)
また、その凄い絵を表現できないと意味がない。
あなたの白昼夢を、おなじくらい魅力的に誰かに伝えられるか、
ということは、芸術の永遠のテーマだろう。
また、その白昼夢が、
あなたの思うほど大したことがない可能性も、
あなたは検討できなくてはならない。
夢から覚めた瞬間、
ひどく現実味がなく、色褪せるあの瞬間を思い出そう。
あなたの白昼夢はどちらだろう。
所詮夢だから感覚が増幅されていただけの快感に過ぎないのか?
それとも、夢から覚めてなお現実に戻っても、
興奮する内容なのか?
主観と客観だ。
客観視が下手な人は、
あなたの興奮が、あなただけの興奮なのか、
世の中全体、マスを巻き込めるだけの興奮なのかを、
区別できない。(たいてい主観判断しかできない)
それを区別する訓練を積まないと出来ない人もいるし、
最初から冷めている人もいる。
(あんまり冷めてると離人症になっちゃうよね。
なんでもかんでも「何がオモロいの?」と、
分かんなくなってしまう状態だ)
また、
下手な人は、イメージの書き換えも上手じゃない。
「自分の見た白昼夢にどれだけ忠実か」
に終始するのみになってしまう。
上手い人は、
「こうもできる」「こうしたらよくなる」
「こうしたら悪くなる」の判断が的確だ。
「自分の見た白昼夢よりも、こうした方がさらに面白い」
を判断できるほど客観的である。
自分の白昼夢がどのような要素からなっていて、
それらを分解分析できていると、
それらの要素の入れ替えを客観視できるからだろう。
「冷静と情熱のあいだ」なんて僕はいうけれど、
分析は冷静に、表現は情熱的であるべきだろう。
さて、これはすべて、
イメージ、ディテールの話である。
右脳、左脳で言うと、右脳の部分の創作である。
映画シナリオは、これだけではダメで、
左脳の部分、論理の創作が必要である。
それが、ストーリーの論理だ。
なぜそれをしたのか、なぜあれをしないのか、
動機はなにか、それに対してどう思ったのか、
どういう事件が起こったのか、
なぜそれに気づかず、出し抜かれたのか、
なぜそれを知っていたのか、知らなかったのか、
人間関係、社会関係、
事件の顛末、展開の経緯、解決に至った原因、
これまで解決できなかった原因と対処、
これら全体から導かれる結論はなにか。
などなどなどの、
「なんで?」に答えるすべてのことを、
あなたは創作しなければならない。
これは子供が「宿題をできなかった理由」を、
創作することの延長だと僕は考えている。
「やったけど忘れました」に仮にするとすると、
「では今から家に帰って取ってきなさい」
と突っ込まれ、
「やったけど、犬に噛まれてぐちゃぐちゃになった」
と言い訳し、
「ではそのぐちゃぐちゃでいいから証拠を持ってきなさい」
と突っ込まれ、
「全部食べてしまいました」
と言い訳をするような感じだ。
それでもまだ納得しないから、
これを逆転する、「全員が納得する理由」を、
考えつかなければならない。
この例では、たぶんそんなのないだろう。
だから「犬に噛まれた」という設定がまずかったのだな、
と反省して、
別の言い訳を初手から創作するわけだ。
これの高度なものが、裁判だろうと考えている。
法廷劇は、
この嘘の仮定と嘘を見破る、コンフリクトで出来ている。
納得のいく論理立てを出来た方が、勝ちだ。
もちろん、犯罪の立証と逃れを争うだけが、
物語ではない。
いろんな焦点や問題を追うことが物語である。
あなたはそのことについて、
すべて破綻のない、納得のいく、
架空の論理立てをしなければならない。
これはイメージの助けを借りることもあるけれど、
純粋に左脳的な創作だと僕は考えている。
論文は、ある証拠について論理立てるが、
物語の創作は、あるテーマについて論理立てるわけだ。
論文は一万字程度だが、
物語は数万字である。
うち論理半分、イメージ半分ってとこだろう。
あなたの白昼夢は面白いか?
あなたの嘘の論理は面白いか?
そしてそれは、どちらも欠けていないか?
イメージしか出来ない人は、
「なぜそうなるのか」「オチは何か」
「そもそもなぜこの話をしたのか」
「別の論理に変更すること」
などが出来ない。
おそらく、説明や議論も苦手だろう。
論理しか出来ない人は、
「イメージがつまらない」「地味」
「感情が震えない」「印象がない」
などの特徴がある。
おそらく、口は立つが具体を手で作れない人だろう。
どちらも出来なければ、
映画シナリオにならないことに注意されたい。
イメージのみの人は、絵描き、写真家、建築家、服飾デザイナー、
グラフィックデザイナー、などに向いてるかも知れない。
論理のみの人は、政治家、法律家、弁護士、財務士などの、
士業に向いてるかも知れない。
映画シナリオには両輪が必要で、
どちらも人並み以上の能力が要求される。
あなたの弱点はどちら?
得意はどちら?
両輪をバランスよく鍛えよう。
2022年01月25日
この記事へのコメント
コメントを書く