人間は環境の何かを利用したり、影響を受けたりする。
それは物語でも同様で、
それらをうまく使って、きっかけや行動に結びつけるとよい。
シナリオハンティング(現地に赴き、取材すること)
の理由がこれだと思う。
あたまで考えていることと、
実際のそこにあるものは違う。
想像を超えたもの(すごいものというより、
これがリアルなんだ、って気づかなかったもの)が、
そこにあったりするものだ。
昔会津若松城に桜を見にいったとき、
白虎隊の展示とかあって、一応見とこうか、
くらいのテンションでみたら、
白虎隊が全員切腹したのは知っていたが、
その原因が、
遠くに戦の上がった煙を見て、
「もうだめだ」と思って全員自決したらしいのだ。
いや、戦えや。
なんやそれ。
白虎隊の名前しか知らなかった僕は、
とても驚いたことを覚えている。
そんな適当な死に方をした人たちが、
なぜ歌に歌われ、有名なのかまったく意味不明だと思った。
それよりも、
意外な事実が分かって、想像していることと、
実際の差ってデカイなあ、なんてことの経験がでかいなあと思う。
そこに行ってみるまで分らないことはたくさんある。
若き者たちの集団自決が、
まさか現場でなく、遠くに上がった煙きっかけなんて、
そんなディテール、思い付きすらしないよね。
そこにある大きなものに影響を受けるだけでなく、
ほんの小さなものに影響を受けたり、
きっかけになることすら良くある。
男女が別れる原因を聞いてみると、
「そんな小さなことで?」ってことがよくあるよね。
昔付き合ってた彼女の30歳の誕生日を忘れてて、
それが別れのきっかけになったことがある。
実の所、それは大きな理由ではないのだが、
それまでに至る何かが蓄積しているものだが、
それが単純な最後のちょっとしたことで崩壊するということは、
とても良くあることだ。
第一次世界大戦はセルビア皇太子の暗殺から始まったが、
まさかここまで戦火が拡大するとはだれも思っていなかったことだと思う。
そうした、何気ない、小さなことが、
とても大きな雪だるまの最初のひとつかみになるなんてことは、
よくあることだ。
それが、
想像だけだと気づかないことなんだよね。
「いや、俺はそれに気づくのがうまいぞ」という人もいるだろうが、
それは「自分が詳しく知っている世界」で書いているからだと思う。
「自分がよく知っている世界ではあり得ること」だとしても、
「知らない世界で、それが小さいきっかけになるんだ」
という発見がないと、ディテールは面白くならない。
ということで、シナリオハンティングでは、
そうした実に細かい、何かを探すことを勧める。
もちろん、大枠に必要なことや、
絶対やらないといけないことは見ておくとして、
人間は大きなことだけでなく、
とても小さなことに影響を受けたり、
それがきっかけになるということを観察するべきだろう。
そしてそれが、特殊なその世界の、
何か象徴的な小道具になるとまとまると思うよ。
何が人に影響を与えるだろうか?
雨が降ったから殺人が起こった(止められた)だってあり得る。
風が吹けば桶屋が儲かるじゃないが、
そういった連鎖を組むことが、
ストーリーの面白さだったりするよね。
蝶の羽ばたきから台風になる面白さが、
ストーリーの面白さなわけだから、
その蝶になるものは何かを探すわけだね。
そしておそらく、その第一歩、雪だるまの最初の小石が見つかれば、
逆算してきたストーリーはパズルのように組みあがると思うよ。
2022年01月30日
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