をつくろう。
悪役はいるか?
どんなに悪いのか?
あるいは、ダースベイダーみたいな分かりやすい悪役でなくともいい。
なんとなく嫌な感じの人、苦手なタイプの人でも構わない。
そんな人を、
悪役の側に転落させる方法がある。
「その人が許せないと思えるエピソード」を創作することだ。
よくある、
「悪の帝王が膝に抱いてた猫を水槽に放り込んでピラニアに食わせる」
は、その典型的なエピソードだろう。
もはや古くてギャグだけど、
初めてそれが登場したときは、
震え上がるほど残酷だと思われたはずだ。
だって酒鬼薔薇聖斗の話が出る時に、
かならず「猫を殺していた」が、
残虐なエピソードとして語り継がれるからだ。
「猫を殺す」は、残虐さ、許せない人をつくるエピソードの、
恰好のネタである。
大阪人ならば「串カツを二度づけするやつ」は許せない。
僕は昔デートした女の子の、チャーハンの食い方が許せなかった。
個人的な嗜好や好みを超越した、
人類共通にわかるエピソードを創作しよう。
たとえばシャア・アズナブルは、
親友ガルマを見殺しにして、
「なぜ死んだのか?」とテレビで嘆く兄を見て、
「坊やだからさ」と吐き捨てる男だ。
いかにイケメンだろうが、いかに天才パイロットであろうが、
いかにセイラさんの兄であろうが、いかにララァの恋人であろうが、
親友を謀略のために見殺しにする男は許せない。
この一点において、シャアは悪役なのだ。
続編のZにおいては、女にモテるダメ男レベルでしかなく、
それは許せない(笑)のだが、
悪役としてのカリスマ性が全然なかったのは、
「親友を見殺しにする」に匹敵する、
悪役としてのエピソードがなかったせいだ。
なぜその人は悪役なのか?
ものすごく人当たりもいいし、
人気もあるし、
やろうとしていることは正義感が動機で、
だから偉大な人のはずなんだ。
でもただ一点だけ許されない、
寒気のするエピソードがあるんだよ。
そうなっている悪役が理想ではないだろうか?
ダースベイダーは恰好が悪役なんだけど、
悪役であるエピソードはひとつもない。
だから子供向けなんだよスターウォーズは。
あなたの悪役は、どこが許せないのだろう?
インド映画「ダンガル」の悪役コーチは、
リアルにいる小物の感じがものすごくよかった。
立ち回りだけは小物で、
そんな奴がコーチの権力を使うべきじゃねえって、
本気で怒れたもの。
悪はカリスマだけでなく、
世の中にたくさん転がっている。
無能の上司も悪役になるぞ。
それを象徴するエピソードを、
ひとつに凝縮してみるんだ。
それを初登場時か、なるべく早めに披露すると、
「こいつだけは倒さなければならない」と、
全員が感情移入するぜ。
主人公に敵対するから悪役なのではない。
世の中にはいろんな立場の人がいるから、
たまたま敵対的な立場になる人もいるだろう。
でも普通は、話せば「ああこの人も人間なんだ」となるはずだ。
だが悪役はそうではない。
話せば話すほど、「この人は人間として許すべきではない」
となるような何かをもっている。
それを端的に示せれば、稀代の悪役が誕生するぞ。
ずっといい人だと思っていたのに、
実は悪役だったとわかるシーンも同じくだ。
この人は人として嫌だ、許せない、
そう思えるシーンがあれば、
その人物は敵対者というフラットな立場から、
悪役という感情的な役割を得られる。
ちなみに、その悪はどこから出てくるだろう?
人間観察だろうね。
あなたがこれまで出会ってきた、
大きな悪から小さな悪、
あるいは自分のやった悪、
やろうとしたがしなかった悪、
あるいは相手は自覚がないのに、
あなたが深く傷ついた悪。
あなたは、悪を理解しなければならない。
そして悪はたぶん、
「世界はこうできている」という認識からやってくる。
それくらい、根深く、相互理解できないものだと思う。
ジョージルーカスは、たぶんいい人なのだろう。
一緒に暮らすにはいい人でも、物語作家としては三流だ。
ダースベイダーも帝国軍も、悪そうなビジュアルをしてるのに、
とくに悪いエピソードを持ってないんだよね。
悪に触れずに物語を書けるというならば、
人間の本質から遠すぎると思う。
2022年02月04日
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