2022年02月16日

すごい見世物が見たいだけで、すごいストーリーが見たいわけじゃない

客の事情を考えよう。
誰も説教されたり、
これがいいんだぜなんて思想のおすすめをされたりしたいわけじゃない。

あくまで、娯楽のためにスクリーンにやってくるのだ。
だから、餌がどうぶら下がっているかしか、興味がないはずだ。


だがそれは餌にすぎない。
なぜなら、餌を食べた観客は、
「次のものをよこせ」というからだ。
このときに、やっとストーリーの力が発揮される。

見世物とはガワのことであり、
見たこともないシチュエーションであるとか、
見たこともない絵であるとか、
あるいは、見たことがあって安心感のある芸能人の、
新鮮な姿とか、見たことがなかった角度とか、
そういうものである。
それを見に来るわけだが、
実のところそれを見せるだけだと、
数分で終わってしまう。
じゃあ見世物小屋でいいじゃないか。

映画が生き残って来た理由は、
そこにストーリーがあるからである。
見世物を見ているうちに、
いつの間にか感情移入して、
人生に深く刻まれるテーマに感動したり、心を動かされてしまうのが、
結果的な映画の娯楽なのである。

もしも有名女優の乳首が見れる映画、
だけだったら、ただの見世物だろうね。
残念ながら、ヘルタースケルターはそういう映画だったろう。
岡崎京子も浮かばれんわ。

映画は、見世物と文学の合いの子である。
文学だけだったら、
わざわざ映画を見ずに、
見世物だけだったら、
今ならYouTube検索か、バズったツイートを探すだろう。

その両者がうまく融合した企画を考えなければならない。

テーマやストーリーがいかによく出来ていても、
見世物としてのヒキがないものは、
辛気臭い日本映画と同じでしかない。
見世物としてのヒキしかなくて、
ストーリーもテーマもめためたなものは、
シナリオの体を成していないだろう。


最近企画を通り、製作されるものは、
両極端になっている気がする。
見世物でしかなく、ストーリーなんてほとんどないようなもの。
テーマやストーリーがしっかりしていても、
文学すぎて見世物としては誰も来ないもの。

前者は大手で商売のラインに乗るが、
何も残らず、
映画の面白さを伝えられず、
次に期待されず、
映画館という市場を、じわじわと縮小させている戦犯だと思う。

後者はマイナーな映画館で上映されて、
好事家の収集対象になり、賞などを得るものの、
内輪受けにすぎず、
多くの人びとには喜ばれないもの。

両方を同時にすることが映画のはずなのに、
どちらかにしか行かないのはなぜだろう。

投資の仕組みが阿呆なのか。
内容を吟味できない投資家が阿呆なのか。
投資でしか作れない、作り方が問題なのか。

僕は映画会社のプロデューサーでないから、
その辺の事情がさっぱりわからんのだよね。


面白い企画はいくらでもつくれる。
なぜ、そういう人たちにうまく仕事を振り、
その船頭になり、
時代を動かす映画をつくれないのだろうか?

プロデューサーが弱体化しているのだろうか。
一プロデューサーが責任を負えるほどではないほど、
製作費が膨れ上がっているのだろうか。
あるいは、一プロデューサーがやるべきと言っても、
沢山の人間の意見を聞くから、
丸いものになってしまうのだろうか。

そこのところはよく分らない。



あなたが書く企画や脚本は、
見世物としてどういう餌があるのだろう?

あなたが書く企画や脚本は、
見世物パートが終わったあとの一時間五十分くらい、
どういう文学を見せてくれるのだろう?

両輪をきちっと意識しているだろうか?


予告編をつくってみろとか、
キャッチコピーを書いてみろとか、
僕はよく言うけど、
それは、見世物と文学が両立しているか、
チェックできるからである。
両輪になっていないコピーは本質を示せていないし、
そもそも両輪でないものにはそういうコピーは書けない。


すごい見世物を見に来たとおもったら、
よりすごいストーリーを見てしまった。

そういう風に、映画はなるべきだと思う。
そういう風に宣伝するべきなのに、
そうなっていないのは、
内容がそうなのか、それとも宣伝部が阿呆なのか。
そこのところもよくわからない。


どうせ投資家は脚本を読めていない、
という絶望感はある。
プロデューサーが脚本を読めていないこともある。
(僕はプロになるまで、まさかそんなことがよくあるとは思わなかったのだが)
だからといって、
つまらない脚本はつまらない映画しか生まない。
面白い脚本、
つまり、すごい見世物があって、すごいストーリーがあるものを、
書かなければならない。
posted by おおおかとしひこ at 00:28| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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