2022年01月22日

マーベルには完結請負人でもいるのか(スパイダーマンノーウェイホーム評)

あまりにも素晴らしすぎて、拍手しかなかった。
サム・ライミ版の1からの、
スパイダーマンを完結させてくれてありがとう。

あの日蜘蛛に噛まれて始まった、
ピーターパーカーの冒険を、
ここまで見てきてほんとうによかった。

ネタバレなしで批評したい。


この物語単体のテーマはなんだろう。
「セカンドチャンス」だろうね。
もう一度やり直せるなんて簡単なことを言うけれど、
そんなにうまいこと行くわけがない。

スパイダーマンのヴィランたちは、
ただの純粋な悪は少なくて、
なんらかの暗黒面に落ちた理由があることが多い。
その結果怪人になったパターンがね。
本当はその心の闇まで完全に晴らして欲しかったが、
悪役総集合という今回のネタでは、
拾いきれなかったのは残念だ。

怪獣墓場からかつて倒した敵たちが蘇るのは、
ウルトラマンでもやったことだ。
今回のネタはマルチバース、
いわゆるパラレルワールドだね。
パラレルワールドから呼び寄せてしまったヴィラン「たち」が、
今回の敵だ。

彼らをそのまま元の世界に帰せば済む話だった。
だがそのまま帰せば、その世界のスパイダーマンに、
殺されてしまう運命だ。
今回のピーターパーカーは、
「彼らを治せば、運命は変わる」と考える。

セカンドチャンスが生まれると信じて。

だがそのことによって、
とてつもない悲劇が襲う。
ピーターの判断は正しかったのか?
誰にとってのセカンドチャンスなのか?

このセンタークエスチョンを、
見事に落としてきたのは、
ものすごい脚本力だ。


僕はマーベルコミックを読まないが、
このアイデアは原作的なものにあるのだろうか?
物凄いアイデアだぜ。
よく考えればパラレルワールドものにありがち、
な後半のアイデアだけど、
「セカンドチャンス」というテーマに、
全て落としてくる見事さ。
号泣するしかない。


新聞社のあの親父が出てきたラストから、
ついにライミ版3の完結の失敗を拭うチャンスが来たと、
僕はものすごく期待したが、
しばらくゴタゴタがあって、
たぶん成功しないだろうと予測していた。

でもスパイダーマンは、
支える脚本家に恵まれた。

こんな回収の仕方があったのか。
パラレルワールドものは基本嫌いだけど、
このアイデアのためなら許す。
ライミ版スパイダーマン3の失敗だけでなく、
リブート版アメイジングスパイダーマンの失敗の尻拭いをも、
この映画はやってのけた。

魔法と科学というご都合主義は、
セカンドチャンスを描くための、
単なるマクガフィンに過ぎない。


ラスト、ピーターパーカーの決断が素晴らしい。
これ以上は映画館で号泣しながら見るがいい。
ゴースパイディーゴー。
お前こそ本当のヒーローだ。
posted by おおおかとしひこ at 23:03| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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