伏線と回収は、
物語の基本である。
この映画の脚本は、それが凄まじくよかった。
以下ネタバレで。
今回のトラブルのもとの魔法のシーン、
注文が多すぎとちょっとムカついたよね。
それが伏線なんだよな。
すっと終わったら伏線にならない。
印象的にしないものは伏線の資格がないからだ。
だから、
ストレンジの「子供だな」発言があったり、
スティーブと呼べからの「サー」に戻すムカつきがあった。
このムカつきは、我々観客のムカつきでもちょっとある。
これが全部伏線なんだよなあ。
今回のトラブルは、
ピーターが魔法に注文をつけすぎて、
マルチバースから呼んだ敵を、
元の世界に戻せるか?だ。
いわば今回はピーターの蒔いた種の、
掃除という大枠である。
いよいよそれが叶うとき、
魔法を修復する方法は、
最初の条件にするしかないと。
つまり、「みんなピーターを忘れる」だ。
その死に等しい決断をするピーターが素晴らしかった。
そしてサーからスティーブに戻す、
その伏線の利き方よ。
そのあとのMJと親友との別れがすごくよくて、
生まれ変わってもあなたを探すという、
その別の形のドラマを見ることができた。
三人でMITの封筒をあけたあのカフェが、
なんというよそよそしさになっていることか。
これこそが文脈のすごさだ。
同じ場所、同じ人がいるのに、
全く意味が変わってしまう。
芝居とはすなわち見立てであることが、
とてもよくわかる例だ。
ただカフェでコーヒー買ってしゃべるだけの芝居なんだぜ?
なのに我々は、
MJが思い出してくれる奇跡を、
ハラハラしながら待ってしまう。
なんというクライマックスだろうか。
そして背を向けた先には、
スパイダーマンとしての戦いがある。
MITには行かず、孤独に雪の中戦う。
皆はクリスマスで楽しそうにしてる中。
そうだ。今回のピーターは、
グウェンがプロムパーティーで待っているのに、
I can'tと、背を向ける男であった。
あのカフェで、
二人の目印、
たとえば2での、ベネチアングラスを使う手もあったと思う。
でも「この世界線の」ピーターは、
戦いに身を投じる男だよな。
なんというハードボイルド。
今回のホームシリーズは、
三部作で終わりなのかなあ。
大学生の彼らも見てみたいよなあ。
夜学のMITに行って欲しいなあ。
親友とMJは付き合ってて、
三角関係になるのさ。
スパイダーマンの良さは、
学園ものと絡めてるところなんだよね。
今回も大学受験をうまく絡ませてきた。
アメリカの大学合格通知ってあんな感じなんだ、
って初めてみた気がする。
あのカフェで三人で開けた通知は、
一生忘れられない場面になったなあ。
ほんとうにお見事だった。
(ミステリオの正体バラシのシーンといい、
ヴァルチャーと車の中といい、
今回のシリーズは普通のセット内の場所で、
名場面があるね)
ほんとにネタバレなしで行ったので、
まさかのピーター1と2の登場に、
胸をこんなにワクワクさせるとは思わなかった。
宇宙刑事三人が揃った時、小6以来じゃないか。
トビーマグワイアはサイダーハウスルールから見てるぜ。
老けたなあ。でもよかった。
ドックオクを、よく似たおじさん探してきたなあ、
なんて思ってたらまさかのウィレムデフォー登場に興奮する。
なんだよ!ヴィランオリジナルキャストかよ!
からのスパイダーマン12が登場するとはね。
なんだよ、デビルマン対マジンガーZかよ。
メタバースって、そういうメタかよ!
しかも出オチで終わらせないところが、
本当によかった。
1はMJと色々あったっぽいし、
2はMJを「今回は」助けられて、
テーマのセカンドチャンスを体現する。
ハリウッド映画では、
Are you OK?という台詞が必ずある、
という皮肉があるが、
このシーンでのAre you OK?の切り返しも、
全くもってよかった。
実はアメイジングシリーズは詰まらなくて脱落してたが、
グウェンを失うのか、
ちょっと見たくなったな。
見せ物とテーマを描くバランスが、
本当に素晴らしい。
そして伏線と回収。
アメイジングの回収もギャグで良かったし、
メタ具合のバランスが凄く良い。
(マトリックス4聞いてるか?)
映画の教科書に載るレベルの、
三部作であったと思う。
日本よ、これが映画だ。
じめっとしたの作ってんじゃねえよ。
2022年01月22日
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