初心者編、中級者編、上級者編と分けてみよう。
【初心者編】
「薙刀式という、誰もが使えて、楽ができる、
親指シフトとかよりすごいキー配列がある」
と聞いたことのある人は、
どうやれば実現できるのか気になると思う。
実はお使いのPC、キーボード、ノートなどで、
そのままプログラムを走らせるだけで、
薙刀式は使える。
スペースキーと文字配列部分30キー、
つまり、
QWERTYUIOP
ASDFGHJKL;
ZXCVBNM.,/
スペース
の31キーが普通にあれば、どんなキーボードでも使えるぞ。
(最近の小さいキーボードでは右下の「/」が省略されてたりするから、
気をつけた方がいいが、99%どのキーボードにもこの31はある)
最近の自作キーボードではなるべくキー数を減らすゲームをしていて、
たとえば32キーのTreadStone32でも、
ふつうのキーボード(109キーある)でも、
Macでも使えるぞ。
ただし、安いキーボードでは使えない可能性がある。
薙刀式は3つのキーを押す組み合わせがあるため、
それを認識しない安い(1000円台とか)キーボードでは、
配線が省略されてコストダウンされている可能性がある。
大丈夫かどうかは、
文字部分を3キー同時押ししてみて、
(順番はおいといて)2文字しか出なかったら、
配線がコストダウンされてることがわかる。
とはいえ、メジャーな3キー押しは大体どのキーボードでも行けるので、
薙刀式をある程度動かせるようになって、
本格的にやりたいときに、
キーボードを新調する手もある。
(Nキーロールオーバーと明記されているものは、
任意のキーの同時押しが可能だ。高いキーボードだけど)
ということで、
薙刀式をはじめるには、
次の二つをやるとよい。
1. キーボードを新調する。
(いつも使ってる、慣れたものを使えばコスト0)
2. 薙刀式を走らせるプログラムをダウンロードしてダブルクリック。
(コスト0、無料だ!)
そもそも初心者の人は、
「今あるPCに別のキーボードを接続」
ができることを知らないかも知れない。
PCないしノートにUSB端子があれば、
USBケーブル経由で、あらゆる有線型キーボードを挿せるんだぜ。
Bluetoothの設定をすれば、あらゆる無線型キーボードが使えるんだぜ。
ノートPCについてるキーボードが不満だからと言って、
ノートPCの上に3万円する高級キーボードを乗せて使う、
変態プログラマーもいるくらいだ。
この人はリチャードストールマンといって、
有名エディタemacsの作者である。
この人のビジュアルから、
キーボードonノートPCのスタイルを「尊師スタイル」って呼ぶ。
キーボードはキーボードの性能(打ちやすさ)、
ノートはノートの性能(モビリティ)と、
それぞれの性能を組み合わせて使うのが、
プロの道具の使い方というものだ。
ちなみにバード電子からは、
尊師スタイル専用のアクリルボード
(キーボードを押し込んだ時にノートPCを誤打しないためのブリッジ)
すら売り出されているぞ。
4000円弱で買える。変態だね。
キーボードを日常的に使う人は、
キーボードにお金と情熱をかける。
自分の仕事道具に注意を払わない人は、
プロとしてレベルが低いと思う。
リチャードが使うキーボードは3万円するHHKBという、
日本の最高級キーボードのひとつだ。
文房具に注意を払わない書き手は、
自分の文体に注意を払わないようなものだと思う。
弘法筆を選ばずは、常に真だろうか?
200円くらいの筆で、小説一冊書いてくれと言われたら、
弘法もキレるんじゃない? もっといいやつ使わせろよと。
筆を選ばないのは、ちょろっと書くレベルだろう。
そのへんの駅に走るなら普段の靴でもいいが、
マラソンやるのに靴買わないのは、
足を壊しに行くようなものだ。
qwertyローマ字は、効率が悪い。
打鍵数が多く、左小指で12%ものAを叩き、
右小指でめっちゃ遠いエンターやBSを叩かなくてはならない。
人間工学的に最適化されていない、
めちゃくちゃな動線のまま、
大量にものを書くのは、
自分を壊しに行ってるようなものだ。
薙刀式はカナ配列の一種で、
そうした動線を整理して、
特に長文を書く時に疲れない打鍵スタイルを目指した、
ライター向けの配列ともいえる。
伝統的にそれは親指シフトの役割であったが、
公式サポートは終わったし、
40年前のキーボード理論よりも、
最近は民間で研究された、
効率のさらに良くなったさまざまなものが出てきている。
薙刀式はそのひとつだ。
(メーカーはキーボード研究を何十年もしていない。
金にならないし、
そもそも大手メーカーはもうキーボードをつくらずに、
小さなメーカーに外注している)
薙刀式はどんなキーボードでも使えて、
WindowsとMacで使える。
(iPadは無理です。ごめんなさい)
そのプログラムについては、
http://oookaworks.seesaa.net/article/456099128.html
を見ていただくとして、
この記事ではキーボードの話をしよう。
僕がおすすめする初心者用の薙刀式に便利なのは、
バッファローのBSKBB500BKだ。2000円切るくらい。
安いので一部のマイナー3キー押しが使えないです。
パンタグラフでキーストロークが短いため、
物理的に疲れにくいのがいいよね。
接続もBluetoothでコードが絡まない。
そしてこのキーボード、
キーピッチ(一個のキーの大きさ)が、
標準の19.05mm(=3/4インチ)よりも短い、17mmなんだよね。
これは、「指を動かす範囲を小さくできる」ということだ。
19ピッチは手の大きい外人向けで、
日本人は17〜16あたりが適切だと言われている。
薙刀式はなるべく指の動きを小さくしてるが、
さらに指の移動距離も少なくて済むという、
疲れにくいためには重要なキーボードだ。
あと、めちゃ薄くて持ち運びしやすいのもいいね。
薙刀式はどちらかというと、
撫で打ちする人に向いている。
このキーボードは薄いので、
パームレストを必要としないのもいいところ。
これで一日4000字くらいまでは行けるけど、
もう少し書く人は、
初心者を脱して中級者編へどうぞ。
【中級者編】
中級者以降は、予算と知識が増えていく。
何も考えずにまずHHKBを買え。3万円だ。
これが以降の高級キーボードの基準点になる。
自分のベストの文房具にたどり着くまで、
あなたは何本ペンや鉛筆を潰してきた?
それくらいのキーボード潰しを、
これからやらなければならないぞ。
HHKBのいいところは、
キーの荷重が45gという軽さ、
静電容量無接点方式というスイッチによる、
打鍵感の柔らかさ、
に尽きる。
これで終わりと思えばそれもよし。
僕は気に入らなかった。
・キー荷重45gは重い
・キーストロークが4mmで、パンタグラフの2mmくらいが良い
と思ったからだ。
で、同じ静電容量方式で、
キー荷重35gという軽さの、NiZという中華メーカーのキーボードを見つけ、
わりとヘビーに使っていた。
今Amazon見たら2万2000円で、HHKB買うより安いね。
https://www.amazon.co.jp/AKEEYO-アップバージョン】NiZ-パソコン用キーボード-ワイヤレスキーボード-ゲーミングキーボード-USBレシーバー付き_66EC/dp/B07DXK9NP9/ref=asc_df_B07DXK9NP9/?tag=jpgo-22&linkCode=df0&hvadid=265807859949&hvpos=&hvnetw=g&hvrand=16177698317482278367&hvpone=&hvptwo=&hvqmt=&hvdev=m&hvdvcmdl=&hvlocint=&hvlocphy=1009306&hvtargid=pla-469309933130&psc=1
薙刀式を打つのにおすすめのキーボードは、
・キー荷重が軽いこと
・ストロークが短くて撫で打ちしやすいこと
・両手の親指でスペースキーが押せること
・パームレスト不要で、手首のベタ置きで使えること
・キーピッチは小さい方がいい
みたいなことかな。
実は紹介したもの以外は大同小異で、
どれで打ってもぶっちゃけ似たようなものなんだよね。
困ったらバッファローのパンタグラフか、
NiZのatom使っとけ、みたいに思うな。
で、そもそも左に傾いてる(ロウスタッガードといいます)、
ヘンテコな形が、
左手首のひねりを強制して、
左手が痛くなるのでは?
と僕は思う。
左右対称のキーボードのほうがいいのでは?
と思うと、自作キーボードに行くしかないね。
【上級者編】
ここからは半田付け必至の自作キーボードたちだ。
最初にあげたカッチョいいTreadStoneも、
半田付けをして作るキットで、
キットと、キースイッチと、キーキャップを、
別々にパーツとして揃えて、
自分でアレンジして組み上げることを、
密かに秋葉原近辺でやってるのだ。
まあまず5万円用意することだ。
その中でもおすすめは、
Reviung41かな。
シリコンシートを切る工程があり、
相当手間がかかるやつなので、
これを作る前に何個か初心者用のキット
(meishi2、テンキーなどのマクロパッド、
コルネのlight版とか)を組んで、
作業自体(半田付けや基本知識)に慣れることをお勧めする。
これのいいところは、親指キーに両手でリーチしやすい形状だね。
左右一体型なので持ち運びもしやすいし。
実物は秋葉原の自作キーボード専門店、
遊舎工房で触れる。一回触ったら虜だぜ。
自作キーボードは、同人誌と同じで、
スキルのある人が仕事の隙間にコツコツと作って頒布してる世界だ。
だからしょっちゅう欠品している。
コミケみたいに定期的に出してくれればいいが、
そうもいかないので、ある時に買うべし。
これらで薙刀式を打つならば、
チェリープロファイルのキーキャップが低くておすすめ。
親指をななめに押せる、
薙刀式キーキャップも安めで販売しております。
【超上級者編】
薙刀式を毎日使うようになると、
「もっと良くならないか?」という欲が出てくる。
指の動線がもっと楽にならないか、
もっと最小にならないかと。
薙刀式が使えて、左右分離が出来て肩が楽になる、
自作キーボードキットMiniAxeを僕は愛用している。
これがミニマムじゃないかな。
そしてそれに装着する、3D形状のキーキャップ、
「サドルプロファイル」が今のおすすめだね。(1万2000円)
キースイッチはショートストロークの、
Gateron 3pins Prelubed Silverを、
さらにストロークを短く(1.9mm)、
底打ちを柔らかく(シリコンシート仕込み)、
バネを軽く(25gくらいに)改造して使っている。
ここまで来ると変態さんなので、
これに限らず、自分なりに合うものを知ってることだと思う。
キーボードの世界は、
混乱している。
伝統的なキーボードは、コストダウンが進みすぎて、
安っぽい打鍵感のものばかりになってしまった。
(数千円の価格帯)
それを超えるために、
高級キーボード、
東プレのリアルフォース、HHKB、
ゲーミング用のメカニカルキーボードなどが、
よりよい打鍵感をアピールして商売している。
(1万円〜3万円)
しかしこれらは、
伝統的に左に傾いた、手に負担を与える形だ。
左右の手を均等に使うためには、
自作キーボードに手を出すしかない。
(5万円〜15万円くらいまでは用意のこと)
どこまでを求めるか?
どこで妥協するか?
という話だ。
薙刀式は、これらのうちどのキーボードでも使える。
それが強みだったりする。
低級から高級の違いはなにか?
触っただけでわかるのか?
ある程度はわかる。
でも本当にわかるのは、
「一日一万字書いたあと」だろう。
安物のボールペンと高級万年筆の違いもそうだ。
安い車と高級車の違いは、長距離や高速走行のときに出る。
我々の身体は作業に応じて適応してくれるが、
マシンはそうではない。
勝手によく使うキーがいい場所に来てくれることはない。
薙刀式は、何百万字も書き終えたときの、
最適化された指の動きを、
最初から作ってしまったような配列だ。
まずはお試しキーボードから始めて、
徐々にランクを上げて、
ほんとにこの話が信用できるか、
試されたい。
リチャード・ストールマンはC++の作者ではありません。
彼はテキストエディタ"Emacs"の開発者として有名です(ちなみにC++の作者はビャーネ・ストロヴストルップという人です)。
ちなみに弘法は実際のところ、自分で一から筆を作るほど拘っていたそうですね。
ある意味では自キ勢のご先祖さまと言えるのではないかと笑
ありがとうございます。直しておきます。
ググった情報に間違いがあったのか。
こうしてエコーチェンバーになってくんだな。