2022年03月03日

表現とは、逆のことである

まあそんなこと山ほど聞いたことあるよね。
最近の例からそれを研究してみよう。


ロシアに侵攻されたウクライナの大統領、
ゼレンスキーの演説から。

ゼレンスキー
「私は支持率20%の大統領だ。多くの人に罵られている。これはこの国が自由な証拠だ。大統領を罵り逮捕されるような国にウクライナをしてはならない。支持率7割でもそんな国には住みたくない」
(ロシアが攻撃を開始した後の演説)


支持率20%というマイナスを、
自由の国というプラスに読み替える論法だ。
支持率7割にプラスになっても、
自由を失うマイナスは許せない、
という、
現状肯定の理屈である。

この論法を使わなければ、
「現状OKです」しか言えない。

だが、
現状のマイナスは実はプラスなのだ、
という「逆」を使ったレトリックであることに、
表現者ならば敏感になるべきだろう。


他にも、
人は「そのままでいいんだよ」と言われると弱いとか、
人は積極的に泥をかぶる人間を応援したくなるとか、
そういう感情移入の手法を使っているわけである。

この原稿を書いたコピーライターはそれを分かったプロだし、
もしこれがコメディアン出身の本人の言葉ならば、
実に表現の核心を分かった表現者だといえよう。


逆を使おう。
一番プラスと一番マイナスを使うのだ。

「今は真っ暗だ。しかし夜明け前が一番暗い」
とかも同じ論法なわけだね。

もっともコントラストをつくれるから、
表現として強くなるのだね。
「グッドニュースとバッドニュースがある。
どっちから聞く?」も、
コントラストを用いた、逆を利用した論法だ。

もしあなたのキャラクターが、
絶望の時にゼレンスキーのようなセリフを吐けるなら、
そのセリフは歴史に残ると思う。
posted by おおおかとしひこ at 21:31| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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