2022年03月19日

ワルツと四拍子

リズムについて。


小学校の頃、三拍子(ワルツ)というのをならった。
音楽にはテンポがあり、
二拍子、三拍子、四拍子…があると。

中学の頃ロックに傾倒すると、
それが8ビートや16ビートと呼ばれていることを知り、
ああ、8拍子や16拍子のことだなと理解する。

ところで、
なぜ5拍子や7拍子、9拍子、10拍子、
11, ... 15拍子がないんだろ?

数学的にはあり得るはずだが、
何故ないのか?
というのを音楽教師に聞けるほど、
僕は音楽が好きじゃなかった。

監督になって、
自分で作詞作曲する場面が増えてくると、
歩きながらアイデアが浮かびやすいことに気づく。

そして歩きながら歌うといい感じになることが、
経験的にわかってくる。


そこで気づく。

左足、右足、左足、右足。
これは4ビートではないかと。


左足、右足で1ループが二拍子、
2回で1ループが四拍子、
3回で1ループが8ビート、
4回で1ループが16ビート、とわかる。
違いはなにか?

歩みの速度だ。

軍隊の行進のように、
歩く様にカッコをつけて歩くと、
二拍子になる。ザッ、ザッの左右が1ループ。
これはマーチと相性が良い。
365歩のマーチをこれで歌うと気持ち良い。
体を左、右と揺らしながらヨコノリで歌える。

もう少し普通に歩くと四拍子。
(軽くジョギングしながらだと、
「フルメタルジャケット」の海兵隊訓練シーン、
ファミコンウォーズでパロられたようになる)

少し早足で踊るようにステップすると八拍子。
さらに頭でリズムを取りながら歩くと16ビート。

2が基数になったこれらのビートは、
つまり人間が歩くことと関係している。
2がベースなのは、人間の足が2本だからだ。

もし3本足の生物が音楽を奏でるなら、
ワルツになるだろう。
椿とか三回対称の120度構造なので、
彼(彼女?)の中ではワルツが鳴るはず。


なぜワルツが高尚な感じがするのだろう?
獣的な2ベースのビートに対して、
それを数学的に頭で崩したリズムだからじゃないか?
ワルツの、少し頭のいい感じ、
分かってないとわからない感じは、
獣の反射以外の要素だと思うんだよね。

さて、
では5や7の拍子がない理由は?
5や7が数学的に美しくないからだろう。
獣的でもないからだろう。

と思ったら、
インド音楽には7拍子の音楽があり、
9拍子や11拍子の音楽とペアで演奏して、
最小公倍数でループする、
みたいな伝統音楽があるらしい。

で、これは宗教と結びついていて、
「世界はこう出来ていることを示す」
みたいな意図がある。
つまりは、頭のいい感じのさらに頭のいい感じになるわけだ。

こうなると、
もはや、「体が動きだすビート」ではなくて、
「頭で解釈するもの」になってしまうのだろう。



さて、
脚本は楽譜である、
などと僕はよくいう。
じゃあ何ビートなんやろ?

僕は、「登場人物の数のビート」だと考える。
つまり、よく分からない雑音みたいなものだ。
それが、話が進むにつれて、
登場人物が結束したり、解離したりして、
要素がどんどん減ってきて、
ついには敵味方みたいな単純なふたつに分かれることになる。
すなわち、
雑音レベルのビートが、
最終的に2ビートに収束していくことが、
ストーリーのリズムであると考える。

その中でも三角関係ものは特別で、
これはワルツになるわけだね。

カットバックの気持ちよさは、
実は8ビートの気持ち良さなのだ。
そう考えると、
シナリオは楽譜だという考えがよくわかるだろう。

なぜ頭でなく心に訴えるのか?
2ベースのビートを使っているからだ。
三角関係は3ベースのワルツだから、
ハートに響く原始的な衝動ではなく、
頭で考えたゲームのような感覚になるだろうね。


5拍子や7拍子のシナリオは?
要素が多すぎて、絞れ、ということになるだろう。


音楽は歩くことだ。
その発見が、僕にリズムの根本を教えてくれたように思う。

今でも歩きながらシナリオを練ることはとても多いが、
その感覚で書かないと、
原始的で体に響くストーリーは書けないと考えている。


ちなみに、こんな面白動画があった。
https://mobile.twitter.com/_figensezgin/status/1501569668854816771
右手が延々三角を描くから、
これはワルツだろうか?
違う。左手のめくるのが入ってて、四拍子だ。
左右の手を操るのは、偶数拍子が楽なんだよね。

これがハンコが3個になったら、
5拍子になって急にテンポがおかしくなるはず。
「要素を絞れ」とはそういうことだ。
posted by おおおかとしひこ at 06:00| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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