2022年03月22日

漫画にあるが映像にはない表現

最近マンガをそのまま映像化したやつをやってて、
擬態語の例に気づく。




ガラーン(かつていっぱいあったのだが、今は空っぽ)
ホッ(安心する)
ガーン(ショックを受ける。漫画的にピアノを鳴らすこともあるが)
フワッ(と浮く。浮く音はしない)
ザワッ(群衆が不安になる。ザワッ、ドヨッという音はない)
ターン(足場を蹴って宙に飛ぶ。足場が鳴らない限り音はしない)
キリキリキリ(空中回転する。音はしない)
ニュッ(物陰から現れる)
ピーン(と来る。何かに気づくとき)
ハッ(と驚く)
スッ(と構える。音はしない)
そっ(と手を触れる。音はしない)
ムカーッ(と怒る。音はしない)
しゅん…(と落ち込む。音はしない)
グキッ(ぎっくり腰。音が鳴ったら骨折だね)
じんじん(と痛む。これも音は鳴らないが、痛覚の表現だ)
じろり(と睨む。音がしたら怖えわ)
パチパチ(と瞬きをする)

どれも、現実には音がしないが、
アクションに当たる音である。

漫符といってもいいし、
擬態語といってもいいかもね。

手塚治虫が「シーン」とした無音を発明したそうだ。
漫画は動きがないから、
動きを表現するこうした表現が発達したんだね。

そういえば、
時代劇で良くある、
刀を構えるときに「チャキッ」っていう音は、
日本刀には存在しない。
あるいは、鯉口を切るときや、
刀を返すときのチャキッという音もだ。

現実に音がしたら実戦でバレちゃうから、
刀というのは基本音がならないようにできている。

でもそれじゃ分かりにくいから、
音を出してわかりやすくするわけだ。


以前も書いたけど、
登場シーンに、与作の「カーッ」(ビブラホン)を鳴らしたんだけど、
それってヤッターマンの登場シーンなんだよね。
アニメーションの動きなしで、
ただ立ってるだけなのに登場したことがわかるのは、
こうした効果音による漫符表現でカバーしてるわけだ。
車田正美の「ザシャア」も同様である。
なるほど奥が深い。


表現というのは、
それをそのまま見せても分かりにくいことがある。
分かりやすくするために工夫があり、
それが定番化するわけだ。
ガラーンって音はしないのにねえ。

ためしに、
上の例をシナリオ形式にしてみたまえ。
なかなか苦労すると思うよ。
漫符で表現の伝わりが早くなっていることに気づくことだ。

ガラーンはなかなか難しいよね。
「な、ない!」みたいに説明台詞が必要になるだろう。
posted by おおおかとしひこ at 01:42| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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