2022年03月19日

【薙刀式】逆に、配列沼を怖がらない人って?

動機がある人、だろうか。


「これ、そもそもqwertyローマ字の指の動きがおかしいのでは?」
と気づいた人。
そこまではっきりと言葉になってなくても、
腱鞘炎に悩む人。
あるいは「その筋で有名な親指シフトはいいらしい」と、
試したが、そうでもなかった人。
DvorakやColmakを試して効果を実感して、
日本語も配列を変えてみようという人。

こんな感じかな。


自作キーボード界隈を見ていると、
「JISと同じ配列がいい」とか、
「HHKBと同じ配列がいい」とか、
「静電容量と同じ感触がいい」などの、
現状維持バイアスが沢山見られる。

ただ、肩こりは大体の人があって、
「分割キーボードがいいらしい」
という噂だけはあるみたい。

だから、
「JISで左右分割」
「HHKBで左右分割」
「静電容量スイッチ」
と、呪文のように繰り返す。

だからすぐにはコラムスタッガードにはいかないんだよね。
ロウスタッガードの左右分割が安心するようだ。

僕は左右分割にすることより、
左右対称型にすることや、
BSやエンターが近い方が、
効果的なファクターだと思うんだけど。
(とはいえ、格子型で左右一体だと両手が窮屈なので、
結局左右分割がいいんだけど)


実際には、
その人の使い方や打鍵姿勢や打鍵方法などによって、
適切な解は異なると思う。

そして厄介なことに、
数分、小一時間触っただけじゃわからなくて、
一週間くらい触らないと効果ってわからないんだよね。

筋トレとかダイエットみたいな、
体が理解するものは、
何週間か遅れてやってくる。

だからか、
「ぱっと見一番効果がありそうな、
インパクトのあるものを求める」傾向にあると思う。

そして現状維持バイアスがかかるので、
「今のキーボードのままで、左右分割」
に飛びつきやすいのだろう。


レイヤーキーのことを理解できれば、
60%なんかより40%のほうが合理的だとわかるはずだが、
それは現状を壊すのでこわいのだろう。
「体が慣れてきたからさらに少ないキーに挑戦」
という試しの途中の人もいるかもだ。

(まあそもそも全キーブラインドタッチしようと思ってない可能性が高い。
40%は、全キーをブラインドタッチにする前提だ)


qwertyを変える人は、さらに少ない。

ブラインドタッチは目に見えないからだと想像する。
目に見えないことを信じるのは、なかなか難しい。

その配列印字のキーキャップ&キーボードがないと、
「それが目の前にある」が信じられないのかもしれない。
そしてそれは、
左右分割より、物理レイアウトを変えるより、
○%キーボードより、インパクトがないのだ。

ほぼ100%、その配列の文字印字キーキャップはないし、
字が入れ替わってることは、
見た目では効果があるのかわかりづらいと思う。

配列は概念上の存在で、物理存在がない。
手続きに関することだからね。


つまり、配列を変えることは、
「手続き、手順を変える」ことだ。

組織改変の際に、
手続きの多さや連絡の仕方の不備を直すべき時に、
目に見える人事異動だけやって、
良くなったと勘違いする上長は大変多い。
目に見えるものしか分からないからかも知れない。



現状維持バイアスと、
目に見えるものしか分からないこと。

このふたつが、
おそらく障壁の正体かな。


配列を変えようとする人は、
「配列を変えられる」というアイデアをそもそも知り、
なおかつ、モチベーションがある人だろう。

現状維持バイアスを乗り越えるには、
「現状のままではいけない」と心から思うしかない。

「現状のままでいいじゃん」という人の、
首根っこを掴んで新配列をやらせても意味がない。


「qwertyは一番使うAが左手小指だ、あたまおかしい」
と批判しても、
左手小指が痛くなるまでqwertyを打ったことがないと、
現状を疑わないと思う。

僕の場合は、
小説を書きたかった。
qwertyでブラインドタッチをマスター出来なかったし、
それで諦めるほどモチベが低いわけではなかった。

「この現状をなんとかしたい」
という思いがないと、
新しいブラインドタッチを覚えるほどの障壁は越えられないと思う。
「おもしろそうだから」「噂で聞いて」
くらいだと無理だろう。



新配列を学ぼうとする人は、
どういう事情を抱えているのだろう?

沢山書きたいけど、qwertyでは無理という人だろうか。
沢山早くコピー打鍵したい人だろうか。
とくに沢山の予定はないが、腱鞘炎などで痛めた人だろうか。

「なんとかしなければ」と、
追い詰められないと、やらないと思うんだよな。


もちろん、
配列を変えるだけが、唯一の改善方法ではないだろう。
リアルフォース30gが劇的に改善してくれるかも知れないし、
アーロンチェアが救世主かもしれないし、
モニタが答えかもしれない。

答えは複合的だと思う。
安いキーボードで配列だけ変えても、効果は不十分だろう。
いいキーボードは一定の答えをくれるが、
それだけでも不十分だと思う。
姿勢や環境の改善もしかり。


PCによる文章書きは、
正座して原稿用紙にペンで書くほど、
やり方が洗練されていない。

今日も間違ったやり方のまま、
腱鞘炎に淘汰されて、
書くことを諦める人が生産されていると思う。

学校でも教えられない。
誰も正解が分かっていないからだ。

エルゴノミクスエルゴノミクスいうくせに、
その個々の主張は殆ど定着していない。
ほんとに効果があるのか、誰も検証していない。


僕はその正解(のひとつ)を、
探している。
そんな旅に出た人が、配列を変えるのではないか。



PCを作った人も、
キーボードを作った人も、
IMEを作った人も、
僕のような書き方は想定していないはずだ。

歴史を知れば知るほど、
僕の使い方や、作家のヘビーユースは、
設計者の想定を超えた使い方だと思われる。

だからつくるしかない。


良いと思ったものは、タダで提供している。
(サドルキーキャップは高いけど、ほぼ原価です)

少しずつ、薙刀式を使う人が増えてきておもしろい。
ひょっとしたら新下駄や飛鳥の方が向いてる人もいるかもしれないから、
そっちに転向しても全然いいと思っている。
その上で、議論が広まるといいなあと思う。



配列沼を怖がらない人は、
目に見える以上の何かが存在してることを、
わかる人だと思う。

人はそれを、知性と呼ぶ。
posted by おおおかとしひこ at 11:21| Comment(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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