極端なテーマを選んで、どのように書くか考えよう。
「バカは死ぬべき」と、
「バカだからと言って死ぬべきではない」の、
二種類の両極端なテーマで考えようか。
「バカは死ぬべき」というテーマの話は、
とても簡単だろう。
チーム内にバカがいて、
色んな人に迷惑をかけて、
いざその人が風邪をひいて休んだら、
めちゃくちゃ効率がよくなった。
風邪から復帰したバカが、
居場所がなくなり、チームを辞めるとしよう。
そしたらチームがめっちゃ回るようになった、
というオチで十分だろう。
命まで取らなくてもよい。
社会的に死ぬだけで良い。
その後そのバカが、別のバカと喧嘩してる現場を見て、
バカはバカ同士がちょうどいいんじゃないか、
と思って終わりでいいと思う。
だけど容易に想像されるように、
「バカだからといって死ぬべき、というのは、
極端で人権思想にもとるのではないか?」
と反論があるだろう。
だとしたら、仕事よりももっと極端な、
戦争を舞台にするとよい。
バカな味方のせいで部隊の半分が死んだ、
ある小隊の話とすればいいか。
そのバカはどうやって死ぬかな。
バカゆえに敵兵に撃たれるのか。
またミスをして、部隊の1/3が死ぬ時に一緒に死ねばいいか。
あるいは、隊長が後ろから射殺するか。
最後のものはもっと深いテーマを含むだろう。
そんな権利が隊長にはないと思うが、
事は有事である。
自分の部隊が全滅するよりもましだと判断すれば妥当だとも言える。
さて、
「バカは死ぬべき」というのは極端なテーマゆえに、
簡単すぎて面白くないわけだ。
最後の後ろから撃つ隊長の話は、
それをもっと複雑な、簡単に答えの出ないテーマにたどり着いたわけだ。
このようにして、
単純なテーマだとしても、
色々考えているうちに、
予想もしなかった興味深いテーマにたどり着くことがある。
それを呼び込むために、
あえて簡単な極端なテーマから始めたのだ。
もう一方の逆テーマ、
「バカだからと言って死ぬべきではない」
についてはどうだろう?
バカは死ねという単純な自然淘汰にくらべて、
人権思想が入っている分、
一段階ややこしくなる。
ということは、このややこしさをきちんと描かなくてはならない。
つまり要素が増える。
会社のチームにバカがいる話で言えば、
リーダーはそのバカを殺したくてもできないから、
たとえば宴会部長をやらせて、
彼のプライドを守りつつ、
チームの有用なメンバーに生まれ変わらせる、
という話が考えられる。
ただストーリーのためのご都合主義にみえるから、
最初に酒を飲んで面白いことをする、
伏線を張っておかないと唐突だろう。
ただそんなシーンが最初や途中にあれば、
適材適所というふつうの話になってしまう。
では、また極端に戦場の話だと?
二つの部隊がある。
役立たずの部下を切り捨てて、後ろから射殺し続ける部隊と、
バカがミスするのを懲戒はするものの、
見捨てずに一緒にいる部隊である。
テーマを描くことから逆算すれば、
前者は恐怖政治になりすぎて部下が萎縮して全滅し、
後者は部下は大切にされることを部下が知り、
リラックスして能力を発揮できる、
などを対比する話になるだろうか。
ただそれは「バカだからといって死ぬべきではない」
まで到達していないため、
バカの価値を考えなければならなくなる。
「バカにも生きる権利がある」と言われても、
平時ならまだしも、命のかかった戦場でそんな余裕はない。
ではバカともう一人の二人が撃たれて、
衛生兵に運び込まれた場面を考えようか。
薬は一人分しかない。どっちを助ける?という話にしようかね。
半分に割って二人とも助けようとするか。
しかし両方とも死んだという話にするか。
どちらかがもう一方に薬を譲る話になるか。
薬を半分にして、「運のある方が生き残る」
という話にするか。
このようにして、
少しずつ複雑で深いテーマを掘り進めることは可能だ。
もちろん、会社のチームと戦場の部隊以外の、
まったく別の設定でも話をつくることはできる。
そしてそれが短編でなく、
二時間の映画の中心になるテーマまで発展させられれば、
実に深い話をつくることができそうだね。
そう、
たかが「バカは死ぬべき」なんて戯言でも、
強い戯言であれば、
それをテーマに、あるいは逆をテーマにして、
複雑な話をつくることは可能なのだ。
どんな話を書こうかな、
なんて思った時、
テーマから考える、というのはこうした感じだ。
テーマはつねに命題である。
命題Pと、否定not Pの、両方を考えると、
面白い描き方を思いつくことが多い。
逆に、あなたの話のテーマPは、
not Pをテーマにするとどのように書き直せる?
どういう構造がいい?
悪が勝利して正義が敗北する以外の、
構造やストーリーはありえるだろうか?
そうしたことを考えるのに、
こんな訓練は役に立つ。
2022年07月26日
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