2022年04月24日

タテの移動を効果的に使おう

たとえば、
「この村の全景を見るために物見台に登ろうとするが、
老朽化していて取っ手が折れ、落ちそうになる」
というシーンを考えよう。


登るという行為は困難である。
しかも落下の危険がある。
簡単に、危険と障害をつくることができるわけだ。

アクシデントもつくりやすいし、
強い動機も描きやすい。
落下するが、なんとかもう一回やって成功する、
というのは、単純にハラハラしてかつ強いシーンになるしね。

塔とは限らない。
崖の上のシーンは、
映画でよく見るシーンだよね。
落ちそう、ぶらーん、つかまれ、
なんてのはどこの映画にもよくあるシーンだ。

高さの差のあるところは、つまり簡単に、
映画の基本的な要素を詰め込むことができるということだ。

「ルパン三世カリオストロの城」では、
クライマックスは時計台の塔の上である。
クライマックスの見本のような素晴らしいシーンだ。
(その前のデカイ歯車を抜けていくのも素晴らしいよね。
大元はチャップリンの「モダンタイムス」、
時計台関係のアクションはマルクス兄弟にもある)

あるいは、
ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」では、
ラシュモア山で、崖の上と同じような場面がある。

ここから手を掴んで引き上げるシーンからの、
寝台列車でのお姫様抱っこへのアクションつなぎ、
その後のラストカットは、
映画史に残る編集なので、
未見ならば見ておくことをお勧めしておく。
僕はこれこそが編集
(モンタージュ。異なる意味のものを繋ぐことで、
一連のつなぎをつくること)
だと思う。



もちろん、
高さの差を使うことは、
序盤でも機能する。

「マトリックス」のオフィスに、
黒服の男たちが追ってきたときに、
ビルの窓の外に出て、落下の危険を冒しながら逃げようとするシーンなど、
いくらでも「高さの差」を使った場面は、
効果的に使うことができるというものだ。

(中盤でも、ビルを飛び越えようとして落下するなど、
高さは本能的に恐怖を誘うわけだ)


垂直とは限らない。

坂の上と下というのも使える。

買い物袋が破れてオレンジが転がってきたり、
自転車で二人乗りして坂を降りたり、
逆に坂の上まで二人で一気に競争したり、
坂の上からやってきた日傘の美少女に心を奪われたり。

ドラマに華を添えるのは、
こうした上下を使ったシチュエーションである。

天井とベッドというのもよくある。
天井に悪霊がでたり、
天井に穴があいて何者かと目があったり、
天井の穴から忍者が糸を垂らし、寝ている者に毒を飲ませようとしたり。
悪霊に取りつかれた少女は、
たいていベッドから跳ね起きて天井に張り付き、
この世のものではなくなったことを示す。


映画における移動は、
ほとんど水平方向である。

家に帰る、どこかへ向かう、
〇〇に話を聞きに行く、
などはたいてい水平移動である。
歩く、走る、自転車、車、電車、飛行機、
移動手段は水平移動を無意識に想定してしまう。

だからこそ、垂直方向の移動や何かは、
ロマンを伴うのである。

サンタクロースが煙突から入って来るのは、
垂直移動という非日常移動だからいいのだ。
木の上の秘密基地も同様だ。
消防士の鉄棒移動や潜水艦での伝声管は、
垂直方向だから面白いのだ。
女のベッドの下に潜んだストーカーもいたし、
好きな女の部屋の下に住んで、
足音だけを聞く変態もいるかもしれない。
湖の氷の上を歩き、薄いところで割れてしまうアクシデントは、
水の中から真上に向かって撮ると、
ドラマチックに撮れる。
真っ暗闇の山道を走る謎の車は、
ドローンで真上から撮るといいし、
宇宙へ向かうロケットは、横倒しに座って真上に出発する。


上と下は、日常にないからこそ、
使える道具だ。
地下鉄がなんだかロマンがあるのも、
上下要素が入っているからだろう。
逆に、モノレールとかもロマンだよね。
「天空の城ラピュタ」では、こうした上下を利用したものが沢山ある。
(僕の好きなのは嵐の中航行する時に、
見張りの小型機からワイヤー伝って帰ってくるやつ。
ナウシカだっけ)

そういうガジェットだけでも面白いし、
舞台装置にしてもよいし、
ドラマに利用してもよい。

溶鉱炉に沈んでいくT2がよいのは、
上下があるからだろう。



もしあなたのクライマックスが面白くないならば、
上下を利用したシーンにしてみるのはどうか?
はしごの上下や階段の上下で何かできないか?
(「Mi: 4」では立体駐車場が舞台。
それよりも中盤のドバイタワーが強烈すぎて霞んでるが)

クライマックスでなくてもよい。
どこかのシーンで、上下を使ってみよう。

水平で凝り固まっていた先入観が、
急にひっくり返って面白いぞ。
つまりそれこそが、非日常だ。

むしろ映画とは「どんな上下がある?」
で定義されたりして。
塔の移動、トーナメント、出世や降格、どん底と頂点。
色々な上下があるよね。
posted by おおおかとしひこ at 00:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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