止まらないストーリー、
停滞しないストーリーを書くコツは、
シークエンスをうまく使うことである。
シークエンスとは複数のシーンで構成される塊のことだ。
1シーンごとにブツブツ切れるより、
シークエンスごとにブツブツ切れる方が、
まだ全体に流れがあるわけだ。
1シーンの平均は1分から3分ぐらいだろう。
3シーンのシークエンスならば、
3分から9分ぐらい、
「ストーリーが流れている」状態になるわけだね。
シークエンスとは、
たとえば「○○に買い物に行く」を考えた時、
家を出る、駅まで歩く、電車に乗る、店に着く、
買い物をする、
などのように、
一連の動作を細かく割ることではない。
なぜなら、
家で買い物を思い立つ、
その店で買うシーン、
のように直結できるからだ。
せいぜい間に電車移動の1カットを挟むくらい?
つまり、
目的の発生と、結果は直結できる。
間に挟む価値のあるのは、
電車移動のような日常シーンではなくて、
非日常であるときだ。
駅前にモンスターが出現したとか、
電車にジョーカーが現れたとか、
店が地震で真っ二つになったとかあれば、
間のパートはシークエンスとして描く価値がある。
極論すれば、
映画は、目的発生のシーンと、
ハッピーエンドを繋いで終わってもOKだ。
意味は通じてしまう。
なぜ間のシーンがあるかというと、
「それが楽しい、ハラハラする冒険になっているから」なんだよね。
シークエンスの間にあるシーンも同様で、
つまり全体は常に相似形になっているわけである。
目的発生と結果の間の冒険で代表的なのは、
障害である。
駅前に現れたモンスターは、その例であるわけだ。
一直線にいかないように、壁を置けばいいわけだ。
突如崖が出現してもいいのだ。
シークエンスを書くコツは、
あるシーンの終わりが、
次のシーンを予感させるように書くことである。
「あ、買い物行かなくちゃ。
自転車でいこう」で部屋のシーンが終われば、
次のシーンは自転車に乗ることを予想される。
でもこれじゃ面白くないので、
自転車が壊れているアクシデントがあり(障害)、
一輪車なら行けることがわかるとしようか。
苦労して一輪車で駅まで来たはいいけど、
停めるところがない、みたいな障害をつくるかね。
あるいは、誰かに突っ込まれて恥ずかしい思いをして、
駅まで行けない、みたいにしてもいい。
こんな風にして、
ただの、部屋から店までの移動を、
面白おかしくできれば、
それはシークエンスにする価値がある。
もちろん、一直線に目的を遂行する必要はなく、
途中で別の目的が発生したり、
それ以前の目的が途中で解決できたりする。
一輪車に乗っている時に、デートに今度行こうと言ってた女の子に会ってしまい、
ドン引きされるのを入れて、
買い物に行くべきか、その子に言い訳をするかを選ばせるわけだ。
こうして、シークエンスはどんどん複雑になるし、
買い物が成功したとしても、
その子のデートの件が終わってないため、
シークエンスは終わらず、まだ続くことになる。
つまり、
話が転がり続けている間は、
シークエンスである。
途切れないわけだ。
「一方こちらでは」とシークエンスの外に出てしまったら、
シークエンスは途切れるだろうか?
いや、そのラインが元のラインと絡むようになれば、
そのシークエンスはそれごとひとつになる。
先程の例で言えば、一輪車にドン引きする女の子が、
家を出るところを挿入するとしようか。
それはシークエンスが途切れて別のシークエンスになったのではなく、
同じシークエンスの一部ということになるね。
で、このシークエンス全体は、
「一輪車で買い物」と名付けられることになるだろう。
容易に想像できるように、
映画が、ひとつのシークエンスだと最高だね。
頭からケツまで、
全く途切れないものができると最高だ、
と思うに違いない。
けれど色んな理由で、
映画は複数のシークエンスに分断される。
第一の理由は、
長いシークエンスを書くのは難しいことだと思う。
そして第二の理由は、
観客の集中力は15分、ということもある。
15分以上のシークエンスを、
飽きずに見ることは難しい。
同じ興味を15分以上保つことは全然無理だ。
授業が45分しかなくたって、
興味の持続と集中は45分したことがないだろ?
ということで、
シークエンスは複数ある。
数個かな。10個かな。20〜数十かな。
物語によるだろう。
理想は、シーン単位でブツブツ途切れるのではなく、
シークエンスがはじまり、集中して、終わり、
次のシークエンスにターニングポイントで接続され…
がうまく機能することだろう。
それが波のようにうまく流れれば、
心地よい語り口になるはずだ。
そんなにうまくいかないことの方が多いけど、
それが欲しいなら、それを作るしかないのだよ。
転がり続ける石に苔は生えない。
停滞を避けるなら、
話を転がし続けるしかない。
停滞しそうになったら、別の石を転がして、
そっちに乗っかることだ。
それがバラバラの石に見えていなければ、
観客はそれが展開だと思う。
そして全体の石を同時に転がして、
どんどんまとめて大きな石にするのだ。
プロットとはすなわち、
その石「たち」をどう転がすかという計画書なのだ。
2022年05月14日
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