2022年05月18日

骨を固定して肉を動かす

リライトのコツは、
全体の構造を把握しながらやることだ。
骨に当たるものと、肉に当たるものをまずは腑分けしよう。


骨の最たるものは、
第一ターニングポイント、第二ターニングポイントだ。
これが境目になり、一幕、二幕、三幕を区切る。
当初思っていたものと、
真の第一第二ターニングポイントが違う、と考え直すこともあるし、
新設したそれに、前の何かを混ぜたりすることもある。

それは背骨のようなものだ。
ほかがどんなに出来が良くとも、
背骨が曲がっている生き物はいずれ死ぬし、
美しくないし、つまりは機能していない。

それが骨だとしよう。
さらに骨になる部分はあるか?
どんなストーリーになるかはわからないが、
そのストーリーにとっての重大ポイントというものがあるはずだ。
いくつあるかもそのストーリーによるが、
1個か2個というわけではないと思う。
数個はあり、多ければ10程度はあるだろう。

それらを固定しよう。
それを固定して他を動かしたり、
他の部分を別の場面に書き直すのだ。

固定するのを骨となるシーン、
その他を肉のシーン、と仮に呼ぶ。
骨を固定して、
肉を色々と動かしたり、足したり引いたり、
ニコイチにしたり、枝分かれさせたりと、
可塑的に色々やってみるということだ。

骨が変わっていなければ、
肉で多少の機能は変わるが、
大きくは同じストーリーだといえる。
肉付けが違うだけで、
同じ人間が太ったりやせたり、筋肉質になったり運動をさぼったりしたようになるだけで、
アイデンティティーは同じだと思われる。
(多少は違うけど)

骨を変えるのは、アイデンティティーを変えることだ。
まったく別の生物、カタチになるわけで、
別の話になる、ということだ。

原作風魔の小次郎と、
ドラマ風魔の小次郎は、
肉が違うだけの骨が同じストーリーである。
そういう感じ。
まあ黄金剣関係は骨が変わっているから、
そこはまったく同じではないが、
おおむね同じストーリーを見ているという感覚は、
骨がほとんど変わっていないことが大きい。
もし風魔と夜叉と第三の一族のみつどもえのストーリーにしたり、
項羽が死ななかったり、
霧風が活躍しなかったり、
武蔵が麗羅を殺していない、
などのアレンジがあったら、
原作とは別の世界線になってしまったと感じるだろう。
それは違う骨になったからだ。


同様に、
自分のストーリーをリライトするときは、
骨をいじっているのか、
肉をいじっているのか、
自覚しながらやることだ。
逆にいうと、
「このストーリーの骨は何か?」
を的確にとらえているか、
ということなのだ。

骨の定義は、
「その場面を大幅に変えてしまったら、
ストーリーのアイデンティティー(同一性)が保たれなくなるもの」
という定義でいいだろうね。

これを変えたらアカンやろ、
というのを変えてはいけないのだ。

しかし、
リライトの際は、
その骨がどれなのか、
まだ分かっていないときもある。
だから「前の稿のほうがよかったな」という現象がまれによくあるのだと思う。
きっと、骨をいじってしまったんだね。

骨をいじる前に、肉を動かしてみよう。
新しい場面にしたり、
設定を変えてもいいくらいだ。
出番を変えてもいい。
骨さえ変わらなければね。

肉は柔軟性がある。
多少変えたって、
同じストーリーというアイデンティティ―は保たれるというものだ。


今やっているこのリライトは、
骨ごと変えて、まったく別のストーリーにしようとしているリライトか?
それとも、
骨はそのままキープして、
肉付けを変えようとしているリライトか?

その目的があやふやなままリライトをすると、
迷路にはまるぞ。

なんか面白くなくなった、
なんか面白くなった、
だけのアテモンになってしまう。

骨がよくないから骨を変える。
骨はいいから骨はキープする。
肉を変えることでよりよくする。
肉はそのままのほうがいいなら、
それは肉でなく骨だったのだ。
あるいは骨だと思っていたものが、肉でもいいか、
となるかもしれないわけだ。

どれが骨で、どれが肉に当たるのか?
それは読解力と関係してくるね。
自分の書いたストーリーを客観的に見れていないと、
どれが骨でどれが肉かわからなくなる。
全部大事だから全部骨に見えてしまう現象もよくある。
肉と骨を見極めて、
客観的に解剖して改造していかないと、
キメラになってフランケンになって、
ついには死肉のつぎはぎになり、
ストーリーは死体になるぞ。

そして「前のほうがよかった」と単純に戻り、
問題を抱えた脚本だけが次へ進むことになる。
時間だけが浪費されたことになるわけだ。
それはリライトのやり方を知らないのだね。
posted by おおおかとしひこ at 00:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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