映画的な誇張が沢山あったけど、
劇中のタイピング作法的なものは伝統的な真実だ。
僕がへえ、と思ったのは、
机が低いことだね。
タイプライター専用机がイギリスにはあると聞いた。
通常より低い。
肘を浮かせるためであり、
ピアノの鍵盤位置に手の高さを合わせるためだ。
日本の事務机やカフェのテーブルはこれよりだいぶ高く、
タイプライター的なタイピングに向いていないことは、
これまでも議論してきた。
あの机でタイピングしてみたいなあ。
あの高さを再現するために、
机から下げるタイプのバビロン(キーボード空中庭園)
なんてものも作ったが、
いまいちまだこれだというのには辿りつかないまま、
机の上で撫で打ちする方向に今は夢中である。
あと、
書見台が左にあるのに驚いた。
左ロウスタッガードの根拠としては、
「右側に原稿を置いて、タイプライターを左に置く」
からだと聞いたのだが、
左に書見台置いたらよけいしんどいやん、
などと思った。
横書きは確かにその方が見やすいのだが、
じゃあ左ロウスタッガードはなんのため?
ピアノを習いながら卵の手を教える場面があったが、
タイプライターでもあの手は有効なのかね?
ピアノよりも遥かに押下圧の重いタイプライターは、
もっと上から力をかけないといけないはずだが。
でもキートップはシリンドリカルだったんよな。
それって指を寝かす前提だと思うんだが。
タイプライターって平面じゃなくて段差があるから、
それを動かす手首の動きを縮めるためには、
指は寝かした方が有利だとは思うものの、
じゃあ腱鞘炎になりそうだな、
なんて見ながら思っていた。
短期的スピードはそっちのほうが有利なのかね。
試合での世界記録が510文字程度、
試合時間が5分なので、
2500字程度の三回戦勝負だったことになる。
現在の毎パソの5分勝負で、
1250程度(日本語、変換後)なので、
現在の基準から見てもなかなかだね。
しかし各国語で難易度を合わせたとか嘘ついてるが、
そんなん無理やんと思いながら見てしまった。
英語とフランス語で1文字単位競えるわけないやろと。
まあそこは映画の嘘ということで。
韓国語のタイプライターもないでしょ。
チャイナ服着てたしまあそこはいい加減な色物枠なのだろう。
もう少し加速ワードや減速ワードなんかを調べて、
それをストーリーに生かして欲しかったところだ。
「こころからごめんなさい」をなかなか打てなくて、
でも最終試合でそれが出題されて、
加速して打ち切る、
みたいな展開が欲しかったね。
しかし目線がだいぶ下で、
当時のタイピストは首なんかを痛めなかったのだろうか?
(印字が見えてないタイプライターの歴史の方が長くて、
ほんとのブラインドタッチだったらしいが)
そんなに文字数をこなしてなかったのかしら。
僕的にはDvorak対Azertyの対決かと待ってたのだが、
そこはストーリーに盛り込んでほしかったね。
あのいけすかない社長がせっかくAzertyの話をしたんだから、
Azertyに矯正させられて、
アメリカのライバルは海兵隊仕込みのDvorakで、
というのを期待したのになあ。
(結局アメリカ海兵隊は制式採用しなかったんだが)
最後に父のプレゼントの初代タイプライターを使うのは熱かったが、
それはポンコツで配列のミスがあるから安かった、
(QとAが逆についてたとか)
みたいな話にして、
「最初に覚えた配列に、Azertyから戻す」
ならもっと熱かったのになあ。
もっと取材してほしかったね。
DvorakとQwertyの対決が当時世界大会であったわけだし。
ラストに出てきたゴルフボールタイプライターは、
その後IBMが普及させたそうで、
それが現在の109キーボードの配列のもとだ。
主人公、なんてことしてくれたんや。
犯人はお前だったのか…
ちなみに「Dvorakでギネス記録を保持」(当時)していた、
バーバラ女史のタイピング動画を見つけた。1985。
https://m.youtube.com/watch?v=NndiiezGkNY
miriさんのタイピングを見慣れた目では、
結構遅いと感じてしまう。
Dvorakをもってしてもこんなもんなんかあ。
現代のRTCってやっぱすげえんだな。
2022年05月13日
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