2022年05月13日

【薙刀式】映画「タイピスト!」におけるタイピングの話

映画的な誇張が沢山あったけど、
劇中のタイピング作法的なものは伝統的な真実だ。

僕がへえ、と思ったのは、
机が低いことだね。


タイプライター専用机がイギリスにはあると聞いた。
通常より低い。
肘を浮かせるためであり、
ピアノの鍵盤位置に手の高さを合わせるためだ。

日本の事務机やカフェのテーブルはこれよりだいぶ高く、
タイプライター的なタイピングに向いていないことは、
これまでも議論してきた。

あの机でタイピングしてみたいなあ。

あの高さを再現するために、
机から下げるタイプのバビロン(キーボード空中庭園)
なんてものも作ったが、
いまいちまだこれだというのには辿りつかないまま、
机の上で撫で打ちする方向に今は夢中である。


あと、
書見台が左にあるのに驚いた。

左ロウスタッガードの根拠としては、
「右側に原稿を置いて、タイプライターを左に置く」
からだと聞いたのだが、
左に書見台置いたらよけいしんどいやん、
などと思った。
横書きは確かにその方が見やすいのだが、
じゃあ左ロウスタッガードはなんのため?

ピアノを習いながら卵の手を教える場面があったが、
タイプライターでもあの手は有効なのかね?
ピアノよりも遥かに押下圧の重いタイプライターは、
もっと上から力をかけないといけないはずだが。

でもキートップはシリンドリカルだったんよな。
それって指を寝かす前提だと思うんだが。
タイプライターって平面じゃなくて段差があるから、
それを動かす手首の動きを縮めるためには、
指は寝かした方が有利だとは思うものの、
じゃあ腱鞘炎になりそうだな、
なんて見ながら思っていた。
短期的スピードはそっちのほうが有利なのかね。

試合での世界記録が510文字程度、
試合時間が5分なので、
2500字程度の三回戦勝負だったことになる。

現在の毎パソの5分勝負で、
1250程度(日本語、変換後)なので、
現在の基準から見てもなかなかだね。

しかし各国語で難易度を合わせたとか嘘ついてるが、
そんなん無理やんと思いながら見てしまった。
英語とフランス語で1文字単位競えるわけないやろと。
まあそこは映画の嘘ということで。

韓国語のタイプライターもないでしょ。
チャイナ服着てたしまあそこはいい加減な色物枠なのだろう。


もう少し加速ワードや減速ワードなんかを調べて、
それをストーリーに生かして欲しかったところだ。

「こころからごめんなさい」をなかなか打てなくて、
でも最終試合でそれが出題されて、
加速して打ち切る、
みたいな展開が欲しかったね。


しかし目線がだいぶ下で、
当時のタイピストは首なんかを痛めなかったのだろうか?
(印字が見えてないタイプライターの歴史の方が長くて、
ほんとのブラインドタッチだったらしいが)
そんなに文字数をこなしてなかったのかしら。 


僕的にはDvorak対Azertyの対決かと待ってたのだが、
そこはストーリーに盛り込んでほしかったね。
あのいけすかない社長がせっかくAzertyの話をしたんだから、
Azertyに矯正させられて、
アメリカのライバルは海兵隊仕込みのDvorakで、
というのを期待したのになあ。
(結局アメリカ海兵隊は制式採用しなかったんだが)

最後に父のプレゼントの初代タイプライターを使うのは熱かったが、
それはポンコツで配列のミスがあるから安かった、
(QとAが逆についてたとか)
みたいな話にして、
「最初に覚えた配列に、Azertyから戻す」
ならもっと熱かったのになあ。
もっと取材してほしかったね。
DvorakとQwertyの対決が当時世界大会であったわけだし。


ラストに出てきたゴルフボールタイプライターは、
その後IBMが普及させたそうで、
それが現在の109キーボードの配列のもとだ。
主人公、なんてことしてくれたんや。
犯人はお前だったのか…


ちなみに「Dvorakでギネス記録を保持」(当時)していた、
バーバラ女史のタイピング動画を見つけた。1985。
https://m.youtube.com/watch?v=NndiiezGkNY
miriさんのタイピングを見慣れた目では、
結構遅いと感じてしまう。
Dvorakをもってしてもこんなもんなんかあ。
現代のRTCってやっぱすげえんだな。
posted by おおおかとしひこ at 13:30| Comment(0) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック