2022年06月01日

ホップ、ステップ、ジャンプ

一発で解決できないような場合は、
段階を組むといい。
逆に、ラスト一発で決められるところを残して、
他を解決していくと良い。


仮に料理にたとえる。
塩の話だとして、
最後に塩を振ることが一番大事だという設定としよう。

仮に野菜炒めだとして、
炒め物をすること、
材料を切ること、
材料を買うこと、
などはその前段階になる。

「うまい料理を作る」が解決だとして、
これを一気に解決することを描く場合、
材料を買う〜切る〜炒める〜塩
というモンタージュにしてはいけない。
できれば塩だけバーンのシーンでカタルシスを得るべきで、
すべての解決は塩でなされた、
という一発KOにするのが理想だ。

しかし塩だけで解決するとも思えないよね。
だから、
他のものを「つくり」と考える。

すべての解決から「塩」を引き、
その残りの段取りを考える。
野菜炒めをつくる、という一段階でいいかどうかを考える。
この塩が効く食材がある、
この塩が効く切り方がある、
などの条件があるとしよう。
勝利条件、解決条件みたいなことである。

ここで、ひとドラマつくっておくのだ。
そうすると、
ドラマ→ドラマ→ドラマと、
連続するシークエンスになり、
最後に「たったひとつまみの塩を振る」という、
一発で解決するカタルシスになるわけだ。

最初に出したモンタージュの例では、
どれもが「ただの進行」になってしまう。
そうではなく、
ドラマをつくらなければならない。

ドラマとはコンフリクトであり、もめごとであり、
危険であり、乗り越えることであった。
そのようなものを、
たとえば材料選びでつくれるか、
ということである。
その結果が野菜切りに影響を与えて、
それが炒め方にも影響を与えて、
ラストは塩の振り方次第でこれまでの全ての問題が解決する…
という風につくらないと、
一発解決の気持ちよさにならないわけだ。

このような「つくり」をしなければ、
クライマックスの一発解決は気持ち良くない。

ただ状況をダラダラと繋いで見せられても、
解決の面白みにはならない。

今俺たちが出来ることはこれだけ、
という極限状況においこみ、
なんとかしてクリアして次に繋いだぞ…
となるほうが面白いに決まっている。
そして繋いで繋いで繋いで…
…………塩ッ………!
ドーン!
となるほうが、スッキリするわけである。

そう、つまり、
塩以前のすべてのシーンは、
塩の伏線であるといってもよい。

あなたのストーリーの問題はなにか?
この場合「うまい野菜炒めをつくれないか?」
ということだ。
あなたのストーリーの解決はなにか?
この場合「うまい塩をひとふり」である。

その間はなにか?
ラストのジャンプだけ見せておもしろいのなら、
ストーリーを語る意味がない。

クライマックスはド派手でものすごいアクションのほうが望ましいが、
そうでなかったとしても、
「たった塩をひとつまみふる」
ことでカタルシスを得られるのが理想だ。

「アベンジャーズ: エンドゲーム」ではこれができていて、
たった指パッチンひとつで、
すべてが解決するように組まれている。
あんなにアクション、アクション、アクション、
CG、CG、CGで来たものが、
たった指パッチンで、10年の物語を解決させたのだ。

つまり、すべてのド派手ななにかは、
塩のための伏線、
ホップ、ステップであったわけだ。

ホップやステップは、
最後にジャンプを見据えた行動である。
それを分からないと、
ホップやステップは面白くない。
常にジャンプを観客がイメージしたまま見れることが、
ホップやステップを面白く見るコツだ。

で、
この場合のホップやステップは、
もののたとえにすぎず、
2個あればいいというわけではない。
100個あってもいいんだよ。
それは、ストーリーの全体の長さと、
テンポによって変わってくるだろうが。

僕はよく、
ストーリーを「組む」という言い方をする。
「編む」という人もいるが、
僕は「組む」を使う。
それは、「段取りを組む」の「組む」と同じかもしれない。
あるいは、「プラモを組む」の「組む」と同じだね。
毛布を「編む」、詩集を「編む」だと、
均等なものを集めるだけになってしまい、
「順番があり、それが緻密な順番連関性がある」
ニュアンスが落ちると思うので、
僕は「組む」をつかう。

何十個もの、ホップ、ステップは、
それ自体有機的に関係しながら、
たったひとつまみの塩へとつながる。

クライマックスの塩を決めたら、
残りの何をホップステップにしないといけないか、
考えよう。
逆算とはこういうことである。


ただ料理番組モンタージュになってはいけない。
ホップはステップのためにありながら、ジャンプを見据えている。
ステップはジャンプのためにありながら、ジャンプを見据えている。
そのような関係性を分かって見れるようにしておこう。

これだけやってもまだ足りないのか!
一体何が必要なんだ!
と追い込み、
途中のホップやステップを増やして、
面白くしていくのだ。

ジャンプはいつでも見据えることができる。
最低でも、第一ターニングポイントと第二ターニングポイントの、
二箇所で具体化する。
そうでなくても、
事件発生の瞬間にも見据えるし、
途中大事な場面でも再確認することがあるし、
それが塩であると毎回見えてなくてもよいが、
この塩を使えば一発で…と途中で見えても良い。

とにかく、みんなが塩の瞬間を待ち望み、
………塩………ッ
と一発でKOできるように、
すべてが組まれていくわけだ。

ホップ、ステップ、ジャンプは三段跳びか。
あなたのストーリーは何段跳びだろう?
ラスト以外の補集合を考えよう。

ラストを塩だと決めたら、
意外とやることあるよ。
むしろ、塩にするために、
沢山の段取りが大忙しになってくる。
それを上手に省略したり、
ある部分はじっくり見せるのが、
中盤だと思うといいよ。
posted by おおおかとしひこ at 02:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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