2022年06月02日

アイデアマンになるにはどうすればいいか

あなたが「うまい!」と思うアイデアを、
収集するのである。


アイデアマンにならなければならない。

シナリオというのは複雑な構造であり、
それを突破するにはアイデアが必要だ。
あることを素直に実現するのは難しいから、
アイデアでバイパスをするのである。

ところが、生まれながらにしてアイデアマンである人以外は、
なかなかアイデアを思いつくことはない。

だが安心して欲しい。
あなたは発明家ではないので、
この世になかった、まったく新しいアイデアで、
その状況を突破する必要はない。

使えるアイデアはたくさん転がっているので、
それを利用すれば良い。
だから、アイデアを日々収集するのである。

注意するべきは、
あなたが集めるべきアイデアは、
まずシナリオのそれであること。

シナリオ以外のアイデアも勉強になるが、
まずあなたはシナリオで使われるアイデアに慣れ親しみ、
それからよそを見るべきだ。


何から集めるべきか?

「あなたがうまい、と思ったものから順番に」
である。

アイデアだけを抽出することはたいへん困難である。
だからまず、目立つものから順番で良い。

「死んでたと思ったら生きてた」でもよい。
「この世界は仮想世界だったのだ」でもよい。
最初は大がかりなアイデアが目立つから、
それから集めるとよいだろう。

アイデアを自分のものにするコツは、
そのアイデアを日本語で書くことである。
他人の言葉で書くべきではなく、
自分の言葉で書くべきだ。
なぜなら、今からそのアイデアを、
自分のものにするためだ。

まずそのアイデアを、
自分の言葉で表現してみなさい。
つたなくてもいいから、その具体を見なくてもわかる、
自分の言葉で書いてみなさい。

そしてそれが、なぜ「うまい!」と思ったかを書きなさい。

あることをアイデア一発で突破してることを、
分析してみるわけだ。
そして、
それがもし平凡なアイデアによる突破、
つまりよくあるやつだったら、
どれだけつまらないか、予想して書いてみなさい。

その、平凡から「うまい!」の差分が、
そのアイデアが成し遂げたアイデア力である。


このようなものを沢山書き留めるのだ。

アイデアノートとはちょっと違うね。
アイデア収集ノートを別につくるべきだね。
いくつ集める?
10じゃ応用が効かないだろうね。
30?50?200?
数日じゃ無理だから、何ヶ月もかかるだろう。

大量に摂取するのに便利なのは、
映画を一本見ることだ。
そこで使われていた「うまい!」と思うアイデアを、
収集ノートにメモするのだ。

最初は一個や二個抽出するだけで精一杯かもしれないが、
慣れてくると、
「あれのあれはよかった」
「あれは秀逸」
ともっと思い出せるようになる。

また、一度書いたタイプのアイデアを、
新しく抽出する必要はない。

「この世界が仮想世界だったのだ」を一回書いたら、
マトリックスみたあとにダークシティーを見ても、
同じことは書かなくて良い。
むしろ、マトリックスにはなくて、
ダークシティーにあるアイデアを抽出するとよい。

こうすることで、
大きなアイデアから、
小さなアイデアまで集めることができるぞ。


普段こうやって集めていると、
困ったときに思い出せるのだ。

「アレのアレを応用すれば、
コレを解決できるのでは?」とね。


僕が未だに助けられるアイデアは、
「煮詰まったとき、突然電話がかかってくる」
というやつ。
これはドラマ「高校教師」を見てメモしたやつ。
1993年なので、その時から使わせてもらっている。

このことによって事態が前に進み、
膠着を逃れられるからね。

そういえば「トップガンマーヴェリック」でも、
変形的に使われていた。
マーヴェリックとグースJr.がもめているときに、
教官がなぜかやってきて、
アイスマンの死を告げるシーンだ。
電話じゃなくて直接知らせに来たわけだが、
「膠着したときに電話」のアイデアと同一である。

電話(知らせ)の内容さえ先に考えておけば、
わざと膠着に持っていく、
という「つくり」すら考えることさえ可能だね。

「高校教師」のころは昔の黒電話だったから、
ちょっとびっくりして怖かった。
今のスマホのバイブじゃ、
ビクッとする感じはあんまり出ないよね。

さらに応用すれば、
「廃墟探検したとき、
そこに残っていた黒電話が突然鳴る」
というホラー場面をつくることができるよね。


そう、アイデアは応用してなんぼである。

そのまんま使うのはパクリで、それはいつかバレる。
オリジナルであればあるほどね。
そうではなくて、
「応用の効くようにメモっておく」が大事なんだよね。
そうすれば、
いつでも応用できるわけだ。

そのアイデアのひとつの具体例が、
収集したその場面にすぎない、
みたいになっていると、理想だね。


この収集ノートのいいところは、
時々読み返して、忘れてるアイデアを思い出せることだ。
困った時のアイデアレシピ本ってかんじだ。
昔僕はこんなのを作っていたが、
引越しの時に散逸してしまいもったいない…


アイデアマンにならなくていい。
アイデアを探せる人になればいい。
そして、アイデアを応用できる人になればいい。

たとえば、
「私は愛されていたのだと、残されたアイテムで知る」
なんてのは百万回使われたアイデアである。

これ以外に「私は愛されていたのだと知る」
方法ってあるかなあ、と考えて、
「あれはどうだろう」と応用できるか、
というのが、
次のアイデアを連れてくる。

なんなら、突然黒電話が鳴り、愛してると伝えられてもいいのだ。
今どことも言わずに電話は切れ、
次の日その人が死体としてあがる、そこからはじまるストーリー、
なんてのへ応用するわけである。

それが、
他所から見たらアイデアマンに見えているだけなんだよね。
posted by おおおかとしひこ at 00:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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