テクニカルなメソッドだけど、結構これが馬鹿にできない。
僕はいつも、履きやすく脱ぎやすい靴を履いている。
いつも知り合いからそんな薄い靴で大丈夫ですかと心配されるやつ。
雨には弱く、濡れたら結構つらいやつなので、
天気にわりと敏感だ。
何のためのそれかというと、
自分を締め付けると、自由な発想がでてこないからだ。
ネクタイをする職業に就きたくなかったのも、
このことと関係している。
自分を締め付ける服は、自分を殺し、制限するように感じる。
感じるのは主観だから、客観的にはそうじゃないかもしれない。
だけど、俺が感じるわけだからそれは真実だ。
理想は下駄やサンダルや草履だな。
日本人がたどり着いた、この地球の中での自然が一番いいと思う。
しかし仕事でその靴を履くわけにはいかないので、
なるべくそれに近い靴を履き、
自分の発想に制限をかけないように心掛けている。
さて。
これを逆に使う。
制限がきつい場面を書くときに、
革靴を履こう、ということである。
革靴を履きなれているならば、
ハイヒールを履いてもいいぞ。
とにかく、自分に制限をかけるようなものを履いて書くのは、
そういう場面のときにとてもいい、
という話をしている。
こうした無意識の身体感覚が、
執筆に影響を及ぼさないのがプロである、
ということもできる。
しかしこうしたことに敏感で、
使い分けるのもプロである、
ともいえるわけだ。
日差しのぽかぽかしているいい縁側で、
雪山の遭難シーンなど書けるわけがない。
寒いところでガチガチに震えながら、
逆に暖かいものは書けるかも知れない(無意識の願望なので)。
あるいは、ネクタイを締めて書く場面と、
締めずに書く場面は違うだろうことも想像される。
もし厳格で正確できっちりしないといけない場面ならば、
スーツを着て書くのもいいと思うよ。
ホテルマンの話とか、営業の話ならば、
スーツを着て書く言葉は、
作務衣みたいな楽な服装で書く言葉と違うと思う。
手っ取り早くできるのは、
履物が楽で替えやすいよ、という話。
文豪が着物で旅館で裸足で書いていたのは、
なるべく身体に負担をかけないためだと思う。
カフェで書くときも裸足が理想だろうね。
でもさすがに裸足はアレだから、
なるべく負担が少ない靴にしよう。
でも厳しい制限的な場面では、
革靴やぎちぎちに締めたブーツとかがいいかもしれないよ、
ということだ。
家で書くときはどうか?
夏場はもちろん裸足。
冬場はしんどいよね。
なので昔はコタツで書いていた。
今そのコタツは壊れてしまったな。
あとコタツ執筆は腰に悪いので、
今は机と椅子で書いているのだが、
足もとに電気毛布を敷くことが多い。
結局靴下か、裸足になりたいわけだね。
夏場に暑いとき、
わざと冷房をかけず、
洗面器に水を張って足元に置くこともある。
水に足をつっこんで書くと気持ちいいよ。
(冬場に足湯的にお湯を置くことも考えたが、
わりとすぐ冷める……)
こうした身体感覚をわざとコントロールすることで、
出力の質をコントロールすることは、
プロになりたいなら知っておくべき知識だろう。
もし「あの場所で書くと、集中して書ける」
という場所があるならば、
そのときの足元を再現してみるといいよ。
青竹を踏みながら執筆してもいいし、
愛犬を足元で愛でながら書いてもいいんだぜ。
エンジニアには、猫を膝上にのせてプログラミングする人もいる。
ただしキーボードの上に乗りたがるらしいので、
猫が入りやすい箱を机の上に準備するのがコツだそうな。
触覚は案外脳に影響を与えることを、
無意識的に知っているというわけだ。
先日とあるVPのナレーションを担当したんだけど、
雨が降ってる日で、
固めの分厚い靴のままナレーションを張ってしゃべっていた。
なんだか窮屈だなあと思って、
靴を脱いで録音すると、生き生きした声になることに気づく。
ああ、元ちとせとか、一青窈とか、
昔沖縄系の人が靴脱いで歌ってたなあ、
なんてことを思い出したというわけ。
靴は人を締め付ける。
よくない。
脱ごう。
締め付ける場面が書きたいときは、
逆に締め付ける靴を履こうぜ。
スキーする場面では、
スキーブーツを書きながら考えてもよい。
裸足のときにはスキーじゃできない無茶な場面を書いてしまったりするミスを、
防ぐことができるかもしれない。
刀を振るう場面では、
実際に刀をもって書いてもいいだろう。
女子高生が大剣を振り回すような、
現実味のない場面を書かないだろうね。
坂道を走って上る場面では、
坂道ダッシュをしてから書いてもいいぞ。
リアリティがないならば、
そうやってリアリティをつくって書くという手だってある。
海で泳ぐ場面のために、市民プールにいってもいいんだよ。
そこで感じたこと、そこではありえないことが、
無意識の感覚で継続することになるだろう。
2022年06月20日
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