2022年06月22日

前のこと前提の展開やセリフ

あることAがあって、
だいぶあとでそれを踏まえた展開やセリフBがあったとする。
ところが、リライトの段階でAが消えたとしよう。
そうすると、AありきのBが効かなくなる。


どうすればいいだろうか。

1 Aを復活させて、AありきのBの関係性を戻す
2 AありきのBをやめて、ABともにカットして、
  新しくCを創作する

どっちが効果的かは、
ABCの出来によるだろう。
AありきのBが出来が良いならば、
Aをカットするのをあきらめるべきだ。
Aのカットが効果的ならば、
Cを創作するべきだ。
しかしその出来がいまいちならば、
次善策のAありきのBに戻すべきだろうね。
いや、それでもAカットがいいなら、
Cだろう。
それでもCが気にくわないならば、
もっとよいDを書き直すしかなく、
最終的には、どれがいいか、
フラットに判断するべきだ。

ライティングとはリライティングである、
というハリウッドの格言は、
こうしたCやDをどんどん新しく書き直すべきである、
ということをいっている。

AありきのBに固執するならば、
何をやってもリライトする意味はなく、
そもそもAをカットすることによる利得がなくなり、
欠点を抱えたままの脚本になるだろう。

だから、AありきのBを超える、
単独CD(E……)を創作しなければならない。
それがリライトこそがライティングである、
という意味である。

とくに「決まったな」という部分では、
AありきのBであることが多い。
しかしこれは文章中に明示されていないから、
リライトのときに見落とす現象がままある。

そういえばAをカットしているのだから、
B単独では意味をなさないぞ、
と冷静に気づけるかどうかなのだ。


何回もリライトをやっていると、
そうした係り結びを忘れてしまう。

決まったぞ!というセリフBについて、
とくにそれは入念にチェックするといいだろう。
たいてい、Aがカットされていたり、
AではないXに変えられていたりする。
それではBの効果が半減するどころか、
意味が分からないものになっている可能性すらある。

作者はBが決まったと思い込んでいるから、
その前提がなくなったことに気づきがたい。
だから見落とす可能性がもっとも高いパターンのような気がする。
経験則だけど。


リライトをあまりしていない脚本では、
こうした事故もあまりないかもしれない。
でもリライトこそが脚本の一番の醍醐味かもしれないんだよね。
なぜなら、リライトでものすごくよくなることがあるからだ。

この場合、Aをカットしたことが、
全体にとても良い影響を与えることが分かったからカットしたわけで、
それを判断できることはリライトでは大変よいことだ。

問題は、それに関係したもののチェックを怠ってしまうことだよね。
とくにAとBの係り結びが遠い位置にあるほど、
発見が遅れるだろうね。

冒頭のどこかに伏線Aが張ってあって、
ラスト近辺になってBで決めたりすることはよくあるが、
そのときにAの消失に気づかないことは、
リライトあるあるだと思う。

というのも、先日書いていたもので、
これをやらかして、
Aをカットしたほうがいいのは分かったので、
B以上に良いCを思いつくまで帰れない、
みたいなことになってしまった。
創作は、第一稿じゃ終わらないんだよな。
こういうときに過去の俺を超えないと、
執筆なんて醍醐味もくそもないよな。

すごいBが書けたんだ、じゃあもっと粘ればもっといいCになるだろう、
あるいは天才的にひらめくかもしれない。
ある程度の経験やそこから来る自信があれば、
へこまずにチャレンジできるだろうね。
自信がないと、AありきのBという過去の栄光にすがってしまいがちだ。


我々は形のないものを毎回新しくつくる。
次つくるものが、前つくったものよりも出来がいいべきで、
それはこうした細かいところでも同じである。


そうして、次々に、過去の自分を超えるものをつくるから、
また自信がわき、なんとかなるわ、
という経験則に変っていくわけだ。

自信とは自負のことでもある。
これだけのことをやれたんだから、
次もやれるだろうという予測のことだ。

それをやるには、
客観性があり、普遍的な目で自分のストーリーを見れることである。
あとはうんうんうなり、思いつくまでやるだけのことである。
posted by おおおかとしひこ at 00:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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