2022年06月25日

結節点をそのストーリーにしかない絵にする

ストーリーの重要な場面を、
どこかで見たことのある、
ベタな絵にしちゃいないか?

だとしたら、平凡で記憶に残らない、
平凡なストーリーに見えてしまう。


たとえば「友達になる」が、
重要なストーリー上のターニングポイントだとしよう。

どんなエピソードでそれを表現してもいい。
むしろその「二人が友達になったきっかけ」こそが、
そのキャラクターを決定づける、
オリジナリティだったりするよね。

まずベタで良く見たことのあるやつを考えよう。
「カバンにつけたキーホルダーが同じで、
話すきっかけをつかむ」
なんてのは、どこででも見たことがあるやつだ。

これは新しくない。
だから、その「友達になる」は、
あまり記憶に残らなくなってしまう。

「二人が友達になったきっかけってなんだっけ」
と思っても思い出せなくなるやつだ。
これは、
ストーリーの重要結節点の場合、
機能しなくなる。


じゃあ似た考え方で、今風なのを。
「格ゲーで使ってるキャラが同じ」
「VRチャットでアバターが被った」
とかかね。
昔は「ケータイが同じ機種」もあったけど、
今のスマホじゃあビジュアルで区別がつかないよな。

これなら、
「キーホルダーが同じ」や、
「同じ県出身」みたいなものよりは、
記憶に残りやすいだろう。
見たことないからね。


「喧嘩する」はどう?
向かい合って言い争う、
ビンタしたり殴ったりする、
なんてのは、
ベタで良く見たことのあるやつすぎて、
全く記憶に残らないだろう。

「皇居のランニングコースで走りながら言い争う」
「はしごの上と下で喧嘩する」
なんてのは見たことがないから、
記憶に残りやすいよね。

昔電車で、母と娘が「手話で喧嘩する」
のを見たことがある。
それまで見たことがなくて、
そうか人間だもんな、喧嘩くらいするよな、
なんて妙に記憶に残っている。

これを真似すれば、
紙飛行機に喧嘩メッセージを書いて、
お互いに飛ばし合う、
みたいな喧嘩の仕方を描くこともできるだろう。

「手紙を受け取る」は?
スマホが鳴ったり、
ポストに手紙が入ったり、
紙飛行機でメッセージが届くのはベタだ。

じゃあ、
「手紙を今その場で書いて渡す」はどうだろう?
「僕と別れたあと、この手紙を読み返すこともあるだろう。
その時のために、今日がとても良かったと、
書き記しておくね」
なんて書き出しから始まれば、
もうその手紙は一生取っておく価値があるよね。



こんな風にして、
重要な場面ほど、新しくて記憶に残る絵にするとよい。
それほど重要でない場面は、
逆に流すべきだ。

通勤するとか中間テストが、
まったく特別でなくどうでもいい場面ならば、
よくある普通の絵でいいわけだ。

ところがもしこれが、
ストーリー上特別な場面になるならば、
「電車のレールがジェットコースターみたいに一回転している」
「氷の机と椅子でテストを受けなければならない」
だったら、
これは相当特別な場面だぞ、
とバカでもわかるわけだね。

なんでそういうことになったのか、
という辻褄合わせは各自考えてくれ。
それは脚本家の仕事である。

つまり脚本家とは、
「Aという理由で、
Bというヘンテコな、変わった、記憶に残る場面で、
Cする羽目になった」
を考える人だともいえるのだ。


仮に、
「友達になる」→「喧嘩する」→「仲直りする」
という、
どこにでもあるプロットだとしても、
VRチャットの世界だけで完結してたりすると、
全く違った新しい話に見えるわけである。
(すでにありそうなので、
新しく見えなさそうではあるが)

いっときゲイやレズビアンの恋愛ものが流行ったのは、
JGBT配慮でもなんでもなくて、
ベタなプロットを新しい絵の具で描けば、
新しい話に見えたからである。

「転校生がやってきた」は、
普通だとあまりに普通だから、
外人が来たり、宇宙人が来たり、
プーチンが来たりしなければならないのである。


ただインパクトのある新しい絵だけならば、
誰でも考えられる。
そこはアイデアマンではない。
その突飛な新しい絵は、
実はこのような理由で、
まで作ることができるのが、
アイデアマンに期待されていることだ。

あまりにも暑い日、
氷屋のミスで沢山氷を作り過ぎてしまった。
ほっといても溶けるだけなので、
それを見た先生は、
大量に安く買い付けて、
一時間目のテストを氷机と氷椅子でやることにして、
生徒たちは大興奮、
というようにつくれば、
その中間テストは、とても特別な場面になるはずだね。

そのテストで万年0点だったやつが、
突然100点を取った、
その理由は…
などのように、
その結節点から、話を続けていくことができるだろう。



あなたのストーリーの、
重要な結節点をあげよう。
最も重要な、
第一ターニングポイント、第二ターニングポイント、
ラストシーン、クライマックス、オープニング、
ミッドポイント、
あたりは特別で新しい絵が多いだろう。
でもそれは普通のことだ。

そうではなくて、
他の部分での重要場面も、
もっと新しい絵で表現するべきだ。

そして理想は、
その新しくて記憶に残る度合いと、
重要度が、比例していることだろうね。
posted by おおおかとしひこ at 00:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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