ストーリーの重要な場面を、
どこかで見たことのある、
ベタな絵にしちゃいないか?
だとしたら、平凡で記憶に残らない、
平凡なストーリーに見えてしまう。
たとえば「友達になる」が、
重要なストーリー上のターニングポイントだとしよう。
どんなエピソードでそれを表現してもいい。
むしろその「二人が友達になったきっかけ」こそが、
そのキャラクターを決定づける、
オリジナリティだったりするよね。
まずベタで良く見たことのあるやつを考えよう。
「カバンにつけたキーホルダーが同じで、
話すきっかけをつかむ」
なんてのは、どこででも見たことがあるやつだ。
これは新しくない。
だから、その「友達になる」は、
あまり記憶に残らなくなってしまう。
「二人が友達になったきっかけってなんだっけ」
と思っても思い出せなくなるやつだ。
これは、
ストーリーの重要結節点の場合、
機能しなくなる。
じゃあ似た考え方で、今風なのを。
「格ゲーで使ってるキャラが同じ」
「VRチャットでアバターが被った」
とかかね。
昔は「ケータイが同じ機種」もあったけど、
今のスマホじゃあビジュアルで区別がつかないよな。
これなら、
「キーホルダーが同じ」や、
「同じ県出身」みたいなものよりは、
記憶に残りやすいだろう。
見たことないからね。
「喧嘩する」はどう?
向かい合って言い争う、
ビンタしたり殴ったりする、
なんてのは、
ベタで良く見たことのあるやつすぎて、
全く記憶に残らないだろう。
「皇居のランニングコースで走りながら言い争う」
「はしごの上と下で喧嘩する」
なんてのは見たことがないから、
記憶に残りやすいよね。
昔電車で、母と娘が「手話で喧嘩する」
のを見たことがある。
それまで見たことがなくて、
そうか人間だもんな、喧嘩くらいするよな、
なんて妙に記憶に残っている。
これを真似すれば、
紙飛行機に喧嘩メッセージを書いて、
お互いに飛ばし合う、
みたいな喧嘩の仕方を描くこともできるだろう。
「手紙を受け取る」は?
スマホが鳴ったり、
ポストに手紙が入ったり、
紙飛行機でメッセージが届くのはベタだ。
じゃあ、
「手紙を今その場で書いて渡す」はどうだろう?
「僕と別れたあと、この手紙を読み返すこともあるだろう。
その時のために、今日がとても良かったと、
書き記しておくね」
なんて書き出しから始まれば、
もうその手紙は一生取っておく価値があるよね。
こんな風にして、
重要な場面ほど、新しくて記憶に残る絵にするとよい。
それほど重要でない場面は、
逆に流すべきだ。
通勤するとか中間テストが、
まったく特別でなくどうでもいい場面ならば、
よくある普通の絵でいいわけだ。
ところがもしこれが、
ストーリー上特別な場面になるならば、
「電車のレールがジェットコースターみたいに一回転している」
「氷の机と椅子でテストを受けなければならない」
だったら、
これは相当特別な場面だぞ、
とバカでもわかるわけだね。
なんでそういうことになったのか、
という辻褄合わせは各自考えてくれ。
それは脚本家の仕事である。
つまり脚本家とは、
「Aという理由で、
Bというヘンテコな、変わった、記憶に残る場面で、
Cする羽目になった」
を考える人だともいえるのだ。
仮に、
「友達になる」→「喧嘩する」→「仲直りする」
という、
どこにでもあるプロットだとしても、
VRチャットの世界だけで完結してたりすると、
全く違った新しい話に見えるわけである。
(すでにありそうなので、
新しく見えなさそうではあるが)
いっときゲイやレズビアンの恋愛ものが流行ったのは、
JGBT配慮でもなんでもなくて、
ベタなプロットを新しい絵の具で描けば、
新しい話に見えたからである。
「転校生がやってきた」は、
普通だとあまりに普通だから、
外人が来たり、宇宙人が来たり、
プーチンが来たりしなければならないのである。
ただインパクトのある新しい絵だけならば、
誰でも考えられる。
そこはアイデアマンではない。
その突飛な新しい絵は、
実はこのような理由で、
まで作ることができるのが、
アイデアマンに期待されていることだ。
あまりにも暑い日、
氷屋のミスで沢山氷を作り過ぎてしまった。
ほっといても溶けるだけなので、
それを見た先生は、
大量に安く買い付けて、
一時間目のテストを氷机と氷椅子でやることにして、
生徒たちは大興奮、
というようにつくれば、
その中間テストは、とても特別な場面になるはずだね。
そのテストで万年0点だったやつが、
突然100点を取った、
その理由は…
などのように、
その結節点から、話を続けていくことができるだろう。
あなたのストーリーの、
重要な結節点をあげよう。
最も重要な、
第一ターニングポイント、第二ターニングポイント、
ラストシーン、クライマックス、オープニング、
ミッドポイント、
あたりは特別で新しい絵が多いだろう。
でもそれは普通のことだ。
そうではなくて、
他の部分での重要場面も、
もっと新しい絵で表現するべきだ。
そして理想は、
その新しくて記憶に残る度合いと、
重要度が、比例していることだろうね。
2022年06月25日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック