2022年05月30日

脚本上の瑕疵(「トップガンマーヴェリック」評2)

最近までいっぱいリライトしてたからだろうか。
「リライトしまくった脚本にありがちな、
昔の稿の残りカスみたいなもの」
がちょいちょい気になった。

以下ネタバレで。


・目つきの話
・グースJr.の「一言言いたい」「帰還してから聞く」
 がどっかに行ってしまっている
・生意気な生徒(アイスマン似)の使い所のなさ
・フェニックスのキャラの立ちっぷりのわりに使われてないところ
・グースJr.と揉めてるときに、
 急に上官がアイスマンの死を伝えにくるご都合
・AI戦闘機との戦い、という噂だった昔の稿の残りカス
・結局あのヒロイン誰なんだっけ、という微妙な残尿感


お前のその目つきは、いつもと一緒さ、
の繰り返しが意味不明だったね。
下手な漫画なら失明の伏線だったりするんだけど、
何かに使おうとして残った残滓のような気がする。

人を疑った目から、人を信じる目に変わった、
というような話でもなかったし、
たしかワンシーンその話してるのにグラサンかけてたような気がする。

こういう残りカスは、
使わないなら丁寧にアク抜きしたほうがいいよね。

戦闘機乗り特有のレッドアイ(Gに眼球が負ける)でも、
なかったしで、
何がしたかったのか分からないやり取りになっている。
脚本にはあったのかもしれないが、
編集でカットされたゆえに、
分からないセリフになってるかもしれない。


細かい瑕疵は省略するとして、
ケツ二つを論じておく。


「戦闘妖精雪風がトムクルーズに買われた」
という噂はワクワクしたものだった。
だがそれは「オプション契約」というもので、
現在進行中の企画より先行するやつがあったときに、
それを先に映画化されないために、
金を払って止める契約らしい。

つまり、小説「戦闘妖精雪風」の、
「自我を持った戦闘機」という部分が、
「今度の敵はAIドローン」という部分に触れて、
雪風はトップガンやるまで映画化するなよ、
という前金が払われたわけだ。

アビスをやるときも、寄生獣が買われた
(似たようなビジュアルだったので)もあった。
なんだよ寄生獣をやるんじゃないのかよ、
なんだよ雪風をやるんじゃないのかよ、
アメリカ人金で叩くのかよ、
って思いつつ、
いや、AIとのバトルってどうするつもりなんだろ、
と想像を逞しくしたものだ。

別に今回のクライマックスが、
そうであっても不思議ではなかったが、
テーマがぶれるからやめたのかな。

残滓は2箇所残ってて、
冒頭の、「人間の乗る戦闘機はいずれなくなる」
というアンチテーゼとして、
もうひとつは、
クライマックスで、マーヴェリックの放ったミサイルを、
重力を無視したかのような機動でよけられるシーンだ。

AIの操る戦闘機は、
中に乗ってる人間がいたらGでぐちゃぐちゃになる機動でも、
自在に取れることがわかっている。

コンピュータシミュレーションでは、
それらを使うAI戦闘機が、
熟練パイロットにドッグファイトで勝つそうだ。
(実機シミュレーションはやってないはず)

これが見れるのか、なんて思ってたが、
それも鳴りを潜めたので、
それはやめたんだな、
と思っていたら、
二箇所残りカスがあって違和感だったね。

冒頭のセットアップに残したのはダメだよな。
でもいいシーンなんだよな。
リライトの難しいところだ。


あと最大の残尿感は、
あの女誰?だろうね。
まあ若い頃口説いてた女の一人、
くらいに思っていたが、
そもそもあの1の女教官どうなったんだっけ?
からやって欲しかったところ。
離婚の激しいアメリカでは、
そんなことどうでもいいのだろうかね。
その辺の温度感にちょっと戸惑うよね。

若い天才パイロットが、
どエロのブロンド女教官と激しい恋、
というのは中二病の原点のひとつだから、
そこはうまいこと着地して欲しかったところだ。

ネットであの女優の現在が晒されてしまったから、
彼女が出ないのはいいとしても、
あの女は元教官設定なのか別人設定なのかも、
劇中では判然としなかったよ。
まあ別の昔の知り合いとして解釈して見てたけどね。


これらの残滓が、
リライト脚本にはたまにある。
編集しすぎた映画にも。

こういうことがないように、
脚本はいつ書いても、
初見の気持ちにならないといけないね。

完璧はないからこそ、気をつけたい。
posted by おおおかとしひこ at 01:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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