2022年06月23日

【風魔】2話を評価してる人を初めて見たので

なかなかいい所を突いてらっしゃる。
https://twitter.com/dandan374/status/1539542783853498368?s=20&t=C_rAck4TRxQ3TXP79OiwFw

文脈が分からないんだけど、
「30分だけ試しに一本だけ見るとしたら」ってことなのかな。


「野球回に外れなし」というのは初めて聞いたヲタク用語であったが、
調べるとそういう格言があるらしい。
なんでだろうね。
脚本家が良く知ってることや、
視聴者が良く知ってることが大きいからかもね。

ルールの端から端まで知ってるから、
どこからがアレンジか分かりやすく、
説明不要というのが効いてるからかも知れない。
何から何まで知ってるから、
新しい部分はアレンジだと説明をする必要がない。

これがボウリングだったら、
「裏はこうなってるんだ」とかの驚きがあるが、
野球には新しい驚きがもうないので、
驚かせるには新しいことをしなければならず、
その「新しいことを考える手腕」を、
試しやすい題材なんだろう。

一話をサッカーにしたのは当時最も人気のあったスポーツだからで、
二話を野球部にした理由は伝統的な理由だ。
当然、原作の部活助っ人のネタを引っ張ってきたのもある。

原作通りの活躍をさせたかったのだが、
19ページと30分という長さの違いもあるし、
一話で変態的な活躍をさせてしまったため、
「目立つな!」を縛りにして、
原作とは違う活躍をさせるアレンジを加えた。
で、ちょっと外れたところでよそ見してるときに、
絵里奈に気づくという構造にしてある。
原作みたいに大活躍したら、絵里奈と遊んでる暇がないからね。

あとは「風魔」というわりには、
風を操る忍術が原作にないため
(風魔烈風はどんな剣なのか分からずじまいだったし)、
明示的に「風を操る術」をやってみたかった、
というのはある。
野球のボールなら、サッカーと違って風でなんとかなるやろ的な。
(今考えれば、卓球部とかのほうが風で操りやすそう)

風系といえば、
カマイタチか吹き飛ばすくらいしか技がないから、
原作ではアレンジしにくかったのだろうか。
ドラクエでもバギ系は初期の頃全体攻撃できるから使うけど、
後半使わない系になるしなあ。

あとはやはり「忍者が学園にやってきた!」
という初期の面白さはキープしたくて、
あらゆるところにぴょんぴょん飛ぶ、
というのをやりたかったよね。
(これによって絵里奈の所へ飛ぶ、
というのを無理なくやっている)

屋上で告白しようとしてるカップルがいて、
そこに毎回小次郎が「失礼!」と横を走って邪魔される、
みたいなギャグも考えたけど、
あの校舎屋上がないんだよな…
(最終回に小次郎が来なくてやっと告白できるんだけど、
そのことで観客は「もう小次郎はこないんだ」と寂しさを感じる、
という高度な伏線)


軽量級の小次郎、背の高い武蔵という構図を作るためにも、
小次郎は飛び回るアクション、
武蔵は静かに動かない系のアクション、
という差をつくっている。
今から考えれば、小次郎のぴょんぴょん飛ぶ術は、
スコアボード内の垂直の壁を登って天井から攻撃したりとか、
立体戦術に使えたのになあ。
そこまで思いつかなかった。
なんせ狭くて暑くて。

スコアボード内で戦う、というのは、
甲子園が電光掲示板になる前の時からのアイデア。
高校野球を小学生くらいに見てたとき、
スコアを手で変えてたのを見て、
「あそこ人入れるんや!」と衝撃を受け、
いつかあの中に入りたいと思った夢が叶った感じ。
暑いんだなあ。スコアラーの皆さんおつかれさまです。

あの中で撮影するなんて例は、
多分誰もやってないやろ。
目の付け所の勝利だね。


ストーリーラインの大枠は、
原作の、
野球部助っ人と、
影三兄弟を倒した(省略。逆さ吊りとパンチラだけ貰いました)
あとの、武蔵小次郎戦→風魔の助っ人、
メンバー表交換(不知火瞬殺なし)、
の三つのストーリーラインをベースにしている。

原作の武蔵小次郎戦、
何回読んでもいつどこで戦ってるのかようわからん。
逆さ吊りで夜になっていたのはわかるが、
誠士館の校庭?門の前?あたりなのかなあ。

そのことから「忍びの本気は夜」という設定も考えたんだけど、
ナイトシーンの撮影って、
照明を作らないといけないから、
昼間の三倍時間がかかるため、
アクションなんてもっての他なんですよ。

12〜13話のバトルを全部夜でやりたいと言ったら
(雪も映えるし)、
1分だけならOKと言われて、諦めた記憶。
絵里奈も乱入させたかったし。


などなどの事情も鑑みて、
結局昼間にがんばることになったなあ。
それでも実は日没を迎えてて、
天空時刻(日没後夜になるまでの、まだ空が明るいギリギリの時間の業界用語)
で、武蔵の長刀に巻物が絡むカットを撮っている。

日が沈むことと、キレイに長刀で絡まることとの闘いだったなあ。
小次郎の太腿を貫通したあとの血糊があるから、
メンバー表血がついて使い回せないんだよ…


野球部の「9vs9」に引っ掛けて、
「人数は合う」を思いつけたのは幸いだった。
「俺を人数に入れてないな…!」は、
壬生のこれからの最大の動機になるからね。
ドラマ版の風魔はもちろん小次郎の話だが、
裏は壬生の話でもある。
(武蔵にするには原作武蔵が完成されすぎてて、
動かしようがなかった。
だから壬生には自由に動いてもらったのだ)

あと個人的に大好きなのは、
CMの入り方なんだよね。
絵里奈と小次郎を会わせて、
そのあとにやってきたお兄ちゃん、
そして「風向きがね、変わったの!」
「風…?」という武蔵。
この、「これからとんでもないことになるぞ」
って感じは、序盤ならではの盛り上げ方だよね。
もちろんこの「風向き」は、
小次郎が教えた忍者の風向きの見方のことだけでなく、
「誠士館vs白凰」の風向きという、
ダブルミーニングになってるのがニクイわけだ。
(そしてそれはきちんと13話で回収される。
でも小次郎と武蔵が病院で鉢合わせして、
揉める、というのはやるべきだったなあ)

DVD鑑賞だとイマイチだろうけど、
オンエア時にCMが入ると、
「今のうちにトイレ行かなきゃ」って気分になる、
いいヒキだったと思う。
カメラマンの菊池さんの息子さんも特撮マニアらしくて、
このシーンのヒキが一番好きだそうです。ヒキマニア。


…などなど、
苦労の連続だった2話は、
さらっとやってるけどなかなかの苦労作です。

ファンミーティング時のアンケートだと、
5話(贋作)、7話(柔道)、10話(告白)が人気なんだけど、
2話を選ぶとはなかなかお目が高い。
ストーリーラインの完成度でいうと9話(将棋)もあるんだけど、
最初に見せるには話が進みすぎてるしねえ。

1、2話は、
「へえ、悪くないじゃん、続きを見てみようか」
とどれだけ思わせるかが勝負なので、
その意味で2話は大成功ということだろうか。
シナリオを書く段階で、
1、2話だけ収録したDVD1巻を廉価版で出すことが決まってたので、
なんとしてでもDVD2に進んで欲しかったから、
ちょっといい感じで終わらせたろ、
というのは計算だ。
笑わせてから落とす、関西人らしいラストシーンになったと思う。

絵里奈をただの可哀想な子にしなかったり、
姫子に高校生なりの悩みを抱えさせたりと、
女子に人格を持たせたのは、成功だと思っている。
その辺が昭和から平成への変化というかね。


この2話を最後に、クレーンの予算がなくなり、
以後クレーンはなくなります。
予算というより時間だな。クレーン組んでバラす間に、
あと3カットくらい撮れるもんな。
一日15秒ぶんしか撮らないCMの現場から、
一日8分ぶん撮る深夜ドラマの現場に行った、
まだ初期の頃でした。
でもこれに慣れたら何でも撮れるという自信がついたね。
posted by おおおかとしひこ at 09:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 実写版「風魔の小次郎」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック