2022年07月18日

全体が見えないと、バランスが整えられない

絵のデッサンにたとえて話してみる。


絵の描けない人は、全身が苦手だ。
顔はかけても全身のポーズが描けない人がとても多い。
それは、単純に経験がたりていないからであることが多い。
逆にいうと、顔ばっか描いてきて、
顔は慣れているが、全身が慣れていないだけの話である。
そういうときは、顔と同じくらい全身を描き慣れるとよい。

全身はただ立つだけじゃないことが多くて、
いろいろなポーズがある。
それは顔でいうと表情に相当する。
顔は豊かに感情を表現するが、
感情以外にも、どういう動作をしているのかとか、
どういう状態にあるのかとか、
全身で表現することはたくさんある。
だから、顔の表情と同じくらい描き慣れるとよい。

下手な人は顔から描いてしまい、
なんなら細かく描いてしまって、
全身がいびつなポーズになることが多い。
そのポーズでその顔の角度にはならんやろとか、
見てる方向と首から下が寝違えているとか。
あるいは全身が紙全体に入らなかったり、
ものすごく余白が余ったりする。

上手な人は、全身のアタリをとる。
顔はまだ細かく描かない。
全身のポーズの流れやバランスを先に取り、
それからディテールを描きこんでいく。
こうすると失敗が少ない。

でも結局、おそらく顔を一番描きこむことになるだろうね。
人物を描く目的は、顔だろうからね。
こういう顔が描きたいのだ、
といっても、顔は単独で存在することはなくて、
全身の上に乗っかっているから、
全体の上に顔があるようにしないと変だよね。
だから、まず全身を描き、それから顔を描く。



絵の話を、
全身を構成、
顔をディテール(やテーマやクライマックスやオープニング)
と読み替えれば、
これはそのままシナリオの話と同じになる。

ただ厄介なのは、シナリオは全身から書いて、
ディテールを詰めていくことができない。
100枚の紙を用意して、
構成だけそこに描き、
徐々にディテールを描きこんでいく、
みたいなことは出来ないよね。
文章というのは、頭から書かないと書けないものだからね。

だから、
段階的に、
ログラインという3行コンセプト、
プロットという全身図、
シノプシスというもっと詳細な全身図、
を先に書いて、
大体の地図を把握してから、
一からディテールを書き始めるんだよね。


さて、本題。
これだけ先に準備していても、
やっぱり全身のデッサンが狂うことは全然ある。
執筆時はその前後しか見えていないことが多くて、
全身を見ながら書いていくことは難しいからだ。

だから絵でいうと、全身のバランスがおかしなまま、
第一稿が出来上がることなんて、
ざらだ。

これで、「バランスがおかしいぞ」
と思えるのは、
全部を書いていないと分らないでしょ、
というのが本題だ。


書いているとき、心配することはとても多い。
「第一ターニングポイントが、予定より早い、
あるいは、予定を大幅に超過している」
「ミッドポイントがとても早くて、
二幕が物足りない」
「ミッドポイントから第二ターニングポイントまでが長すぎる」
「クライマックスや三幕が短すぎる」
なんてことは、
とても多くあり、
そんな毎回デッサンが狂わずに書けることなんて、
滅多にないと思う。

だから、書き終えたあとにリライトするのだ。


全身のパランスとは、シナリオでは、
尺構成にあたる。

前置きが長すぎるとか、
解決が長すぎ、短すぎとか、
中盤がものたりない、長すぎ、とか、
キレが悪すぎるとか、だらだらしているとか、
あっさりしすぎて満足しないとか、
色々な欠点が出てくるものだ。

それは、シナリオは時間軸を持つものだからだ。

時間的バランスというものがあり、
それが構成というものである。

シナリオの全身デッサンが狂っているとは、
この時間構成のバランスがおかしなことになっているということである。

これを整えるには、
まず全身がないと話にならない。
全身があってはじめて、
あそこを伸ばそう、縮めよう、があるわけだ。
つまり、バランスは相対的である。


あるいは、空間的なバランスもある。
登場人物が多すぎる、少なすぎる、
ずっと同じところにいて詰まらない、
移動が多すぎて訳が分からない、
関係性や要素が複雑すぎる、単純すぎる、
読めない、読める、
などである。
これらも調整が必要なことは、たくさんあるだろう。


これらは、書きながら修正していくべきか?
それとも、書き終えてから修正していくべきか?

どっちもありだと思う。
ただ、伸び伸び書いているのを、
書きながら修正するのはもったいないので、
筆が走っているところは、そのままにしたほうがよい。
問題は筆が走らない、全然書けないところで、
まあそこは「こういうことが起こる」「こういうことを言う」
のように、最悪飛ばして次を書いたっていいんだぜ。
なんか書けなくてつまらなくて、
停まってしまうのだけは、避けたいものだ。

全身が描かれていない絵の、
バランスをどうとれというのだ。


まずは全身を描け。
顔ばかり描いていても、全身を描くことは出来ない。
全身を描くには、全身を描く練習が必要だ。

そのあとで、バランスが狂ってるぞとか、
はじめてやればよい。
バランスの基準が、三幕構成理論であったり、
ビートシートであったりする。
posted by おおおかとしひこ at 03:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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