よくあるのはミッドポイントか、後半の真ん中あたり。
どちらもあると思う。
最大の悲劇からの立ち直りが、
どれだけ後半の物語に寄与するかで変わって来る。
その立ち直りの末に、
またひとやまが必要ならば、
ミッドポイントで最大の悲劇を起こすべきだろう。
ミッドポイントでは、
「かりそめの敗北または勝利」とブレイクシュナイダーは分析しているが、
この場合、「かりそめの敗北」になるということだ。
個人的には、
立ち直りからずるずると行くと、
「あの悲劇はなんだったんだ」ってなるから、
最大の悲劇はミッドポイントでなくてもいいと思っている。
むしろ、
ミッドポイントで悲劇にあい、
さらなる悲劇が後半で待っているほうが、
わかりやすくなるかもしれない。
で、後半の真ん中あたりに、
最大の悲劇があると、
そこで落ち込み、
だがしかし立ち直り、
その勢いのまま第二ターニングポイントを経て、
クライマックスに行けるため、
これがうまくいくのが、
一番いい構成ではないかと思う。
これを僕はボトムポイントなどと言っている。
ブレイクシュナイダーは、
「死の予感」というビートで表現していて、
たしかにこれは主人公の「死」になることが多いため、
(たいてい誰かほかの人が死ぬとかになるが)
それを乗り越えるドラマが後半の後半ということになるわけだ。
別のパターンでは、
冒頭という手がある。
乗り越えるべき悲劇で、
最大のものを最初に起こすのだ。
ただ、セットアップからやったほうが、
その悲劇がどれほどのものかよくわかるから、
冒頭ではなくて、開始数分から8分くらいまでが、
起こりえるポイントかもしれない。
「ベンハー」では、
親友と会わせるセットアップ後、
奴隷の身分に落とされるという最大の悲劇が待っている。
そこから這い上がることが、ドラマの最大の目的で、
クライマックスは、そのセットアップした親友との戦車戦での直接対決なんだよね。
実にうまく出来ている。
(だがそのあとキリスト教的な何かが付けたされていて、
それが宗教的なドラマでやりたかったことなのかもしれないが、
そこは蛇足になっているよね)
「アイアンマン」では、
武器商人であった主人公がつかまり、
心臓に爆弾を抱えることになり、
洞窟で監禁される生活へと、
どん底に突き落とされるオープニングから始まるわけだ。
ここが最大の悲劇であり、
そこからがらくたを集めてつくったリアクターと、
アイアンマンの誕生こそが逆転になるようにつくられている。
これが冒頭の芯になり、
そこから本編になるわけだ。
さすがにこれから始めると地味なので、
クライマックスの派手な絵からはじまり、
「その何か月か前」とタイトルあけから時間を戻して、
これまでの事情を語る形式で、
退屈さをカバーしているテクニックは使えるものだね。
最大の悲劇を頭で起こすと、
あとはここから登っていく一方になる。
「あの幸せを取り戻すぞ」
「自由を再びこの手に」
なんてことがストーリーのメインになるから、
途中で悲劇が起こるよりわかりやすい全体になるかもしれない。
「インディペンデンスデイ」とかさらにわかりやすくなっていて、
最初に地球が宇宙人によって侵略されるという、
最大の悲劇から始まるわけだね。
最大の悲劇はどこで起こるのか。
それはそのストーリー中でもっとも暗黒で、
もっとも光の当たるところから遠くなっている。
「夜明け前が最も暗い」というのがセオリーだけど、
最も暗いところと、最も明るいところがどこかを考えることは、
ストーリーの構成で本質的なところだと思う。
冒頭過ぎてミッドポイントには、
たぶんないだろうね。
そこで盛り上がってしまったら、
後半それ以上何を持ってくるか、ってことになってしまう。
もし冒頭に最大の悲劇がある場合、
後半戦にもっと悲劇を起こせないか。
それもある。
しかしそれからもっと逆転できるほどの駆け上がりがつくれないと、
そのプレッシャーに負けてしまったストーリーになるだろう。
忘れてはいけないことは、
悲劇はそのあとの逆転勝利とペアであることだ。
絵や写真で、
もっとも明るいところ(ハイライト)と、
もっとも暗いところ(最暗部)を決めて、
その間で表現することと同じである。
音楽で、
もっとも静かで穏やかなところと、
もっともはげしく盛り上がるところを決めて、
その間で表現することと同じである。
(そして写真でも音楽でも、それをダイナミックレンジという。最大と最小の差のことである。
ストーリーではダイナミックレンジという言い方はないが、
感情におけるダイナミックレンジと考えればわかるかもしれない)
あなたのストーリーの最も暗いところは、
最大の悲劇のポイントだ。
そして最大に明るいところはどこだろう。
ハッピーエンドならばラストシーンだろう。
明と暗で、ストーリーを構成するとしたら、
どのへんが最も暗くて、どのへんが最も明るくて、
明るい→暗い→明るいという話なのか、
暗い→明るいがまだ完璧ではない→暗くなる→明るくなる、
という話なのか、
などの明るさの変化を考えると、
どういう話なのかの構造がつかみやすくなるかもしれない。
今書いている話だと、
冒頭に(一見)最大の悲劇があるようにして、
そこから立ち直り、活躍し始めるという前半から、
それ以上の悲劇がクライマックス前に起こるように計算してある。
あれは最大の悲劇ではなかった、
という感じになるようにだ。
それを立ち直り、超えられるかは、
これから書くのだが、
その立ち直り方を先に作っておいたからこそ、
これだけ落ち着いてられるわけだ。
もしアドリブで書いていたら、
最初の立ち直りの部分よりも、
後半の立ち直りを面白く書けないと、
冒頭のほうが面白かった、
ということになってしまい、
プレッシャーで死んでいただろうね。
最大の悲劇をつくることは、
全体をつくることでもある。
それをどう乗り越えるかで、
全体の明暗の一番のコントラストが決まるわけだ。
2022年08月24日
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>ミッドポイントで悲劇にあい、
>さらなる悲劇が後半で待っているほうが、
>わかりやすくなるかもしれない。
>で、後半の真ん中あたりに、
>最大の悲劇があると、
>そこで落ち込み、
>だがしかし立ち直り、
>その勢いのまま第二ターニングポイントを経て、
>クライマックスに行けるため、
>これがうまくいくのが、
>一番いい構成ではないかと思う。
ミッドポイント→悲劇
第二幕後半部分の中頃で→最大の悲劇
第二ターニングポイント→立ち直り(第二幕終わり)
ということでしょうか?
あと、ちょっとずれた質問かもしれませんが、そもそも物語の構成を考える時に、
第二ターニングポイント=第二幕終わり
として考えている私の認識は正しいのでしょうか?
いつも構成をする時、そう考えてやっているんですが。
というより、第二ターニングポイントと第二幕終わりを別要素(別シーン)として思いつく能力がないために、いつもそうしている、といった方が正しかもしれませんが。
同様に第一ターニングポイントも第一幕の終わりとして構成しています。
よろしければ大岡様よりご教授いただけましたら、ありがたく存じます。
よろしくお願いいたします。
言葉の綾になってしまうかもしれませんが、
第一、第二ターニングポイントは、
「それまでの終わり、かつ次の始まり」
になるといいと思います。
誰かが死ぬシーンだと終わりになりますが、
その後「妊娠してることがわかった」とか、
その人が託した情報が見つかったとか、
あいつの死を無駄にせず戦うぞと仲間が一丸になるとかの、
「終わりかつ始まり」がないとキツイと思いますね。
漫画の第一話には二種類あって、
きちんと終わるタイプのものと、いきなり次に続くタイプがあります。
前者は一旦母型を見せることで、
2話目も期待できそうと思わせるところがポイントで、
次に続くのはすでに始まってるパターンです。
第一、第二ターニングポイントは、
このどちらでもありません。
じゃあ前者でうまく終わったところでいきなり爆発があり、
次に続く期待があればいいかというとそうでもありません。
これまでの文脈が総決算された結果、
次やることの方向性が明らかになり、
そこへ走り出そうとする、
というポイントと考えると良いでしょう。
これは通常のターニングポイントでも同じですが、
第一は一幕全部の総決算で、
第二は一幕二幕全部の総決算、
という点が違います。
総決算の桁が違う感じですね。
立ち直りが第二ターニングポイントにくるならば、
立ち直りこそが第三幕の方向性を決める立ち直り方になるべきです。
少年漫画でいえば、新必殺技の誕生が分かりやすいパターンで、
このあとのクライマックスは、「その使用」という方向性が明らかになるわけです。
「ただ心が立ち直る」は絵になりません。
「よし!」って小さくガッツポーズしても観客はおいてけぼり。
他の絵になる何かで代用するべきです。
新必殺技は、その中でわかりやすい象徴(絵)による期待になります。
いつも貴重なご教授、誠にありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。