先日ふと思い立ち、実際に測定してみた900種の2連接。
全文は論文並みに長いので、時間のある時に読まれたい。
先に結論だけまとめておく。
これまでの打鍵理論では語られてこなかったことばかりだ。
・平均速度で言うと、
左→右>右手2連打>右→左>左手2連の順に速い。
・右アルペジオのトップレベルは左右交互打鍵より速いが、
遅いものは左右交互打鍵より遅い。
・左右交互打鍵はキーにバラツキが少なく平均的に優秀。
・同手2連はアルペジオの飛び抜けて速いものと、
悪運指のものすごく遅いものの両極端がある。
・人差し指から外側に行くアルペジオが速い。
・内側へのアルペジオが速いのは、薬指小指始動のみ。
・中指は特定のアルペジオしか速くない。
・右手人差し指2連は、他の指のアルペジオより大体速い。
・中指縦連のみ他の指の縦連より速く、
下手な位置のアルペジオより速い。
・薬指小指は、同鍵連打の方がマシなくらい遅い連接がたくさんある。
・左手中段始動で、右手の一部のキーで受けるのが平均的に速い。
・右から左は、人差し指中指が絡むほど遅くなる。
全体の構成:
【データ収集の背景と目的】
【測定法】
【この測定以前に経験的に言われていたこと】
【結果】
【考察】
【データ収集の背景と目的】
キーボードの配列設計において、
日本語のカナ連接統計頻度(2gram, 3gram...)は、
様々な統計収集が行われていて、
客観化されたデータが色々揃っている。
だがそれを打つ物理キーボード側の、
各キーの打ちやすさ、キーの連接の繋げやすさに関しては、
経験的な言説、主観的な数値化でしかなく、
客観的なデータが存在しない。
僕が知る先行する唯一の例が、○配列(幸花配列)の、
http://rage2050.g1.xrea.com/GeneKana/_ReadMe.html
だ。(ぶな配列、ミズナラ配列もこのデータを使用したそう)
だが二つの打鍵の間の秒数しか測定してなくて、
「2連接の打ちやすさ/打ちにくさ」
という直感とは遠いと感じた。
またやってみて分かったことだが、
30×30=900連接の膨大なパターンの測定の中で、
慣れによってスピードがあがることが判明、
初期の測定と差が出ることがわかった。
上のデータは、最速(OD、qwertyでS;…65)と
最遅(;'、qwertyでZQ…304)の開きが5倍近くあり、
慣れていない時と慣れていない時の差ではないかと感じた。
また最速といわれるJK(表ではHT)が90と比較的遅く、
S;薬指小指の65に大敗していることも疑問を持った根拠だ。
(なお僕のデータでは、4倍程度に開きが収まり、
最速トップ3がJK、JI、MKとなっている)
このため、
慣れていない初期に測った右アルペジオブロックは、
再測定して直感に近いものが得られた。
その他は比較的直感に近かったため、
これを今回のデータとした。
そもそも我々の指は等価ではないし、
キーの配置も上中下段があり、
届きやすさも異なる。
ピアニストはこれを等価になるように訓練するのだろうが、
我々の目的は、
「日常で出来上がった指で、
どのキーが打ちやすいのか/打ちにくいのか、
どのキーとどのキーを繋げやすい/にくいのか」
を知ることだ。
なぜなら、「ピアニストのような大変な訓練を必要としない配列」
こそが、普通の人が使える配列だからである。
これを実際に測定することで、
「繋がりやすい連接/繋がりにくい連接」を、
客観化、可視化することが今回の目的だ。
「連接頻度の高いカナを繋がりが良いキーの流れに、
低いものを悪いキーの流れに配置する」
ことは配列設計の基本であるが、
この基礎データを収集したい、
というのが大目的である。
理想は収集法が標準化され、
統計データが集積して、統計的に有意な数が集まることだが、
ぶっちゃけ900パターンの連接を測定するのはとてもつらい。
だけど一覧できることは重要だと思ったので、
今回の測定と分析に踏み切った。
サンプル数が1であるため、
僕個人の傾向がまともに反映されたものになっている。
人によって得意不得意の運指があることが考えられるので、
傾向が偏る可能性は指摘しておく。
サンプル数を集めれば、
「ここは個人の傾向」「ここは共通の傾向」
「いくつかの典型的なパターン」
が抽出されることが期待される。
【測定法】
・ブラインドタッチ可能範囲を30キーとして、
このうち全ての2キーの連接速度を測定する。
その30キーとは、
QWERTYUIOP
ASDFGHJKL;
ZXCVBMN,./
である。以下qwerty表記でキーの表記を統一する。
・連接「AB」を測定する時、
ABAB…とトリルで文字を打つ。
ミスタイプせずに、20回計40文字表示されたものを測定対象とする。
・ABとBAは、「その2連接を打つつもり」で、
打ち方の意識を変えるものとする。
つまり、AB AB AB…とBA BA BA…という意識で打ち、
(最初)2キー繰り返し(最後)という意識で打っていない。
単にトリル(ABABAB…)だと両者が等価になってしまい、
逆順が打ちづらいかどうかを測定できないからだ。
・動画でエディタを録画しておき、
最初の文字が出現したフレームから最後の文字が出現したフレームまでを数えた。
映像は1秒30フレーム=0.033秒単位なので、
タイムの下一桁は、.03、.07、.00の三種しかないことに注意。
(これ以上の精度は、何かしらの測定プログラムを組む必要があるだろう。
問題文を入力して、それをタイピングして測定するタイプの、
タイピングソフトならば可能か?)
・トリル法による測定のため、
2連接を指が先に準備するため、JKとUIは大差がつかないおそれがある。
つまりホームポジションからの距離はあまり効いてこない可能性。
(ところが結果を見ると、指の形が影響してそう)
また、3連接でのローリングと折り返し打鍵の区別をつけられない、
シフト打鍵も測定したい、
などなどの課題は今後とする。
・僕の環境上、
・格子配列左右分割キーボードMiniAxe
・軽めのスイッチ(Pearlio+2stage37g)
・オールコンベックスキーキャップによる撫で打ち
という条件で測定した。
これにより、たとえば以下のようなメジャーなものとは異なるかもしれない。
・左右非対称なロウスタッガード
・スタンダードな重さ(55g〜65g)
・指を垂直に下ろす突き刺し打ち
キーボードや打鍵法の違いで数値が異なるかは、
今後の課題。
・動画録画ソフトはWin+Gのゲームバー、
エディタはiText、
動画編集ソフトはAdobe Premiere。
・使用した配列は、DvorakJの薙刀式から、
同時押し関係、固有名詞モードをすべて削除し、
単打とシフトに文字があるだけのもので、
TYUにもカナを一時的に置いた測定用のもの。
(編集モードは作業用に残した)
これによって、「離し押しで文字が出る」を防ぎ、
処理を軽くし、測定をしやすくした。
・実際の測定では、○を40個置き、
それをスタートゴールに見立てて次の行にタイピングすることで、
イン点とアウト点を測定した。
40文字ぴったりで止まる場合もあれば、行きすぎた場合もあり、
行きすぎるのはよしとした。
【この測定以前に経験的に言われていたこと】
・ホームポジションが基準であり、
もっとも効率が良く、高速で、打ちやすいキーである
・内側の指の方が強く速く、外側の指の方が弱く遅い
・中指が強い説がある
・小指は速いが連続に向かない説もある
・左手は遅くて右手は速い(以下利き手を右として話す)
・左右交互打鍵がよく、同手の連続はよくないから、
同手連続を減らすべきだ
・ただしアルペジオと言われる同手連続、
隣指隣キーや打ちやすい組み合わせの方が速いこともある
(どれが打ちやすいアルペジオかは主観であった)
・アルペジオは、内→外よりも、外→内が速い
・同指連続はよくないから減らすべきだ
・同指連続のうち、同指縦連はよくない、同指段越えもよくないから、
減らすべきだ
・同鍵連打もよくないので減らすべきだ
(たとえばqwertyローマ字の促音の子音連打は、
よくない方法である)
・全ての指は独立である(またはそのように訓練するべき)
これらは全て真ではないことが、今回の調査で判明した。
ただし最初に議論した通り、これは僕個人の測定のため、
「一般論は半分も僕に当てはまらない」
「僕は一般的でない」
という言い方になるかもしれない。
そして一般論は、個人によらない部分のことを指摘してるかもしれない。
それは今後サンプル数がたまればわかることだろう。
少なくとも僕個人に関していうと、
これまでの打鍵論が、まったく通じていないことが判明した。
道理で僕がこれまでのキーボードや配列に、
違和感を覚え異議を唱えるわけだ。
【結果】
測定結果を示す。
画像は.jpeg形式。
.xls形式も貼っておくので、連接調査のためであれば自由に使われたい。
結果は始動キー別、終了キー別に整理した。
ABという連接において、Aを始動キー、Bを終了キーと呼ぶことにする。
特に左右交互において、終了キーから見たほうが、
「手の形」がわかりやすいようだ。
なお表中で、下線部はホームキー、囲みは同鍵連打をしめす。
(画像はクリックで拡大)
900連接調査.xlsx
【考察】
まずは大づかみな視点から考える。
左右交互がよい、あるいはアルペジオがよい、と議論する前に、
左→右、右→左、右2連、左2連のブロックの平均を取ってみた。
全平均が6.62秒。20回の2文字なので、秒換算すると秒6.04カナとなる。
僕のタイプウェルの成績が5.5カナなので、
トリルのみの測定だとやや高速で打っていることになる。
逆に、5.5との差が、ワードを読んでいる時間ということになろうか。
ブロックごとに見ていくと、
左→右の平均が、右2連の平均を超えている。
これは、右2連の中に高速なアルペジオがあるものの、
遅い連接が含まれて、それが平均を下げているのが原因だ。
最速と最遅の差が、左→右では小さく、
バラツキなく高速な2連打が行われていて、
右2連では最速タイムをたたき出しているものの、
遅いもののバラツキが大きく、
平均の足を引っ張っている。
左2連は予測通り最も遅い。
最速の4.53でも、左→右の最速より遅い。
右→左が、左→右より有意に遅いことは以前から知られてきたことだが、
今回の調査でも如実に現れた形となった。
行段系ローマ字は、
左手に母音(Dvorak、Eucalyn、tomisukeなど)系と、
右手に母音(SKY、きゅうり、けいならべ、カタナ式など)系に、
大きく分かれるが、
一文字を書くだけを考えると、
左子音→右母音の形のほうが高速であるといえる。
もっとも、右手のほうが器用だからたくさんある子音を右手に担当させる、
という合理がDvorak系の設計思想であろう。
(左手子音を7キーに圧縮し、右手母音で二重母音のアルペジオを打つカタナ式は、
この合理を両方体現しているといえる)
左右交互は絶対正義だろうか?
このデータを見る限り、
左→右は速く、右2連は速く、
右→左は遅く、左2連は遅い。
データから、左右左右左右……が高速になることはない。
左右、左右、左右……のようなよちよち歩きならば高速を実感できるが、
一気に5文字や7文字(日本語の文意の構成最小単位の例)
を打つときには、左右交互は絶対的に高速ではない。
バラツキのなさから、
「左右交互は平均的に速い」ということは可能だが、
それだと非常に高速な組みあわせを、
多数見逃しているということになる。
最も速い2連接と遅い2連接を見ていこう。
900連接のうち、上位3%と下位3%を確認する。
トップ15までは右手のアルペジオが独占していることがわかる。
とくに高速なものは薙刀式でもよく使うもので、薙刀式の合理が示される形となった。
トップ30までを眺めると、
左→右の上位も参入している。
薙刀式で使っていない連接には×印をつけた。
また、同時押しでよく使うものには下行にそれを示した。
さらに、qwertyで使用している連接を示した。
qwertyは、この高速なアルペジオをほとんど利用していないことがわかる。
とくに頻度の高いものは「に」「ん。」くらいのものだろう。
これだけ見てもqwertyはいい連接を使用していないわけだ。
ワースト30は、左アルペジオの独占状態である。一例だけ右2連の悪運指がランクイン。
全体的に薙刀式ではほとんど使わない連接なので、
それが最悪な運指にあてられている合理を確認できる。
qwertyはどうか。
adの運指はわりとあるため、ここで減速するのではないだろうか。
(小指と中指の組み合わせのアルペジオは遅い。あとで議論する)
それ以外はあまり使うものではないから、
qwertyは最悪の運指は使っていないが、最速の運指もつかっていない、
平凡な配列、というべきかもしれない。
薙刀式では、アルペジオ運指を利用して、
「日本語でよく使う二連接」を高速で楽に書けるようになっている。
その一端が、最速アルペジオの利用で浮彫になった。
以上のことを鑑みると、
最速右アルペジオをたくさん利用して、
次に左→右を利用し、
右→左はあまり利用せず、
左2連を避けるような配列が、
もっとも合理的だと考えることができる。
もっとも、右手ばかり利用もできないため、
左→右右……ときたあと、どこのつなぎで左に切り返すか、
という、
文字と運指の組み合わせが大事な要素になるかもしれない。
次に、アルペジオ運指について深く考えよう。
同手2連のうち、
「同鍵二連打より速いもの、遅いもの」を、色分けして示す。
赤系が同鍵連打するより遅いもの、
青系が同鍵連打するより速いものを示す。
同鍵連打は、打鍵理論では「遅い」と扱われるが、
同手2連打では同鍵連打より遅いものが半数近くあることがわかる。
これはかなり意外な結果だった。
特に左手はひどく、
左手アルペジオはそれほど有効でないことが色からわかるね。
(これは被験者=俺の指の性能による部分かもだ)
アルペジオは「打ちやすい同手二連接」
と定義されて、どれがアルペジオに当たるか、
あいまいな定義であるが、
同鍵連打より速い同手二連を、アルペジオと定義してもいいかも知れない。
たとえば中段同士の二連接はどれもアルペジオである、
という風に理解されていたが、
LLのほうがL;や;Lよりも速いという結果が出た。
手のローリングを使っているから遅いかも知れない。
速い(客観)と打ちやすい(主観。ただし疲労度を感じている可能性はある)
はまた異なるため、
以下では速さに関して議論しよう。
上の定義によるアルペジオ運指は、
指によって、段によって傾向が異なる。
右手から見ていこう。
人差し指、人差し指伸ばしは、
中指、薬指、小指方向へアルペジオをなす。
中段から…すべての外の指への流れがアルペジオに
上段から…指を折りたたむ下段系以外はアルペジオ
下段から…中段と同等。なぜかMNの同指連続が速くてびびる。
中指は、
人差し指方向(内側)へも、薬指、小指方向(外側)へも、
アルペジオをなす。
ただし、指が伸びている上段ほどアルペジオのパターンが多く、
中段、下段と、指が縮むほどアルペジオしにくくなる。
薬指、小指は、
内側方向、つまり人差し指、中指との組み合わせで、
初めてアルペジオをなす。
薬指小指の組み合わせを打つくらいならば、
同鍵連打の方が速い。
薬指は、伸びている時はアルペジオの範囲が広いが、
縮めた下段からはアルペジオしにくい。
また、伸ばした薬指→縮めた中指は、
最悪に遅くなる。
小指始動はさらにひどく、人差し指としかアルペジオしない。
左手は、これらの傾向がさらに縮んだ形になっている。
人差し指がらみ以外は、
限られた組み合わせしか速くならない。
また、今回調査してわかったのだが、
FJ始動が最強だろ、と思っていたのだが、
人差し指が縮んでいるほうから他の指を伸ばせる、
VM始動のほうが、アルペジオの組み合わせが多くなる。
FJ始動からだと、中指薬指を畳む下段が相性が悪いようだ。
左右交互打鍵について。
平均的には左→右が速く、
右→左は遅い。
これは始動キーで見るよりも終了キーで見たほうが分かりやすく、
始動キーよりも終了キーで速さが決まるようである。
また、予想と異なったのは、
右→左の運指において、
左右の人差し指中指が絡む運指が、
明確に打ちづらく遅いことだ。
普段意識していなかったことなので、
この全数調査で明らかになったことだ。
原理は不明だが、
左→右の運指において、
人差し指中指がらみがとても速いから、
逆順の手の使い方、右→左で、
戸惑うのではないかと予想する。
左右交互打鍵は、
平均的にとても速いことが今回明らかになったが、
このような明確な苦手運指が、
右→左で発生することがわかった。
色々な平均を取り、
全体的な傾向を見ていこう。
左上から順に。
同手二連、始動キー別:
このキーから同手二連へ行く時、
どのキーを先に打つと速いか、という平均。
(それぞれのキーからの、
全同手二連接キーのタイムの平均)
まず左手を見ると、
FV以外からは、どのキーから左手アルペジオを打っても、
平均的に遅いとわかる。
右手を見ると、
同様にJMからの右手アルペジオが優秀で、
Y以外の人差し指始動も優秀(U始動は意外)、
IKLからもアルペジオを組んだ方がいい、
ということがわかる。
薙刀式使用者ならば、ここからのキー始動(Uを除く)
のアルペジオで多数よく使うものがあることを、
実感しているはず。
もちろん全てを活用できているわけではないので、
気づいていない組み合わせを炙り出すために、
今回の全数調査をした次第。
だが、手の感覚が数値に非常に反映している結果表となった。
ざっくり言えば「そらそうやろ」って感じ。
同手二連、終了キー別:
同様に、このキーで同手二連を終えるとどれくらいの平均速度か、
という表。
これは左右の手で対称の結果だ。
つまり左右の手の平均速度は右手が速いものの、
人差し指伸ばし上段、
中指下段、薬指下段、小指下段、
小指上段(僕は薬指でPQを取る)で、
終わるようなアルペジオはやめるべき、
ということである。
薙刀式では「れ」が右小指下段に来ていて、
あれ、これ、それなどの二文字目を高速で単打できるのだが、
その中では遅い部類に入るということ。
(とはいえ多くの配列では「れ」はシフト側に来ていて、
指示代名詞を単打二連で打てないことが多い。
薙刀式の拘りのひとつは、「れ」を単打に出していること)
それ以外は比較的どのキーで終えても良好のようだ。
左右交互、始動の平均:
左手は、このキーから右手に行くタイムの平均、
右手は、このキーから左手に行くタイムの平均。
左手は打ちやすいキーが速くなっていて、
とくに内側の指が速い。
右手は全般的に遅く、右→左が遅いことを示している。
左右交互、終了の平均:
同様に、左右交互がどのキーで終わると速いか、
という表。
右手終わりだとどこに帰着しても速いが、
とくに人差し指中指終わりが速い。
薬指はなぜか下段だけ速い。qwertyの「.」の影響?
左手は何故か、QAXCで終わると速い、
という結果が出ていて、
右手からそこにたどり着くのは、
これまで想像もしていなかった速いポイント?
かも知れない。
A終わりはqwertyローマ字で慣れていた可能性はある。
ただ他はよくわからない。
そのまま下へいくと、
同手二連の平均:
アルペジオを組むならこのキーを使え、
みたいな表。
左手はFVしか信用できない、
右手は小指絡みはダメ、Y絡みはやめとけ、
そして中指下段絡みはやめとけ、
のような特徴が見出される。
だがこれはあくまで平均値なので、
特異的にこの平均から外れたものもあるのが、
アルペジオ運指の面白いところだと思う。
それらを積極的に使いつつ、
このキーをなるべく使うべき、ということ。
左右交互の平均:
左→右も右→左も平均化されてしまうため、
平均化された結果となった。
これだけを見ると、
「左右交互打鍵は正義」と安易に結論づけてしまうが、
細かい特徴を平均化してしまった結果なので、
これまで議論して来たディテールは全て失われていることに注意されたい。
横を見ていこう。
始動キーの平均:
アルペジオだろうが左右交互だろうが、
このキーから指導すると速いよ、という表。
右手は、中指下段を除いた人差し指中指。
左手は、FGB始動がよく、QA始動はよくない、
とバランスの悪い結果となった。
qwertyローマ字ではAから次の音につなぐ確率はかなり高い
(Aの出現率12%)ため、
これだけからもqwertyローマ字の不合理さがわかる。
Qは、まあそうかだと思う。
終了キーの平均:
右手のどのキーに終着してもヨシ、である。
一方左手は、
届きにくい、
人差し指伸ばし(届きやすい下段を除く)、
小指全般(Aを除く)、薬指は上段以外、中指下段へ、
終着させるべきではないという結果。
Aだけ成績がマシなのは、
qwertyローマ字の慣れの要素ではないだろうか。
いうても遅いので、
ここでもqwertyローマ字の不合理さ、無駄さが理解できる。
全平均:
あらゆるものが平均化されて、
どのキーは愛されているか、
くらいのぼんやりした結果だ。
それでもざっくりと、
右手は速く左手は遅い、
P;は愛されていない、
QZは愛されていない、
という結果となった。
左右が非対称なのが気になるが、
qwertyローマ字の残滓か、
左ロウスタッガードの残滓か。
ちなみにこれを、同鍵連打と対比したらどうなるか、
と思って並べてみたら、
大きな傾向はあっている気がする。
同鍵連打は、大きくは指とキーの関係を測定するのに、
ちょうどいいかも知れない。
最後に、
従来言われていた打鍵理論が、
今回の調査で一部修正されるべき、
という議論をしたい。
もっとも、サンプル数は1なので、
すべての人に共通の反駁にはならない。
だが、従来の打鍵理論が僕には半分程度しか当てはまらない、
ということは言えて、
統計数が溜まれば、新しい傾向や、
異なるタイプの別々の典型例などが、
抽出される可能性がある。
・ホームポジションが基準であり、
もっとも効率が良く、高速で、打ちやすいキーである
→薬指、小指は怪しい。
人差し指伸ばしは、人差し指よりやや劣るものの、
中指と同程度。
また、人差し指は下段が優秀、中指は上段が中段並みで、
下段はよくない。
・内側の指の方が強く速く、外側の指の方が弱く遅い
→妥当。人差し指伸ばしは人差し指よりやや劣るが、
中指と同程度。ただし人差し指伸ばし上段はダメ。
左手はこれより劣る傾向。
・中指が強い説がある
→上中段に関してはそう。下段は性能が悪い。
・小指は速いが連続に向かない説もある
→同鍵連打、人差し指への連携以外は性能が悪い
・左手は遅くて右手は速い(利き手を右として話す)
→おおむねその通り、予想以上に左右差がある
・左右交互打鍵がよく、同手の連続はよくないから、
同手連続を減らすべきだ
・ただしアルペジオと言われる同手連続、
隣指隣キーや打ちやすい組み合わせの方が速いこともある
(どれが打ちやすいアルペジオかは主観であった)
→右アルペジオ > 左→右 > 右→左 ≒ 左アルペジオ
> 右手二連の遅いもの > 左手二連の遅いもの
高速な組み合わせは決まっている。
左→右は平均的に速い。
右→左は遅い。そして、人差し指中指だけが絡むと、
とても遅くなる。(左→右の逆の感覚が打ちにくい)
・アルペジオは、内→外よりも、外→内が速い
→人差し指から他の指へ、が速い。
中指は、内→外、外→内とも速いが、
折りたたむ指の組み合わせによっては遅い
中指と小指の組み合わせは極端に悪い
薬指、小指は内側への方が速い
・同指連続はよくないから減らすべきだ
→薬指や小指につなぐくらいなら、同指連続の方が速い組み合わせがある。
疲労面についてはのぞく。
・同指連続のうち、同指縦連はよくない、同指段越えもよくないから、
減らすべきだ
→中指は縦連のほうが、薬指小指につなぐより速い組み合わせがある。
段越えはよろしくない。
・同鍵連打もよくないので減らすべきだ
(たとえばqwertyローマ字の促音の子音連打は、
よくない方法である)
→薬指小指は、同鍵連打のほうが速度的にはマシな組み合わせが多い。
疲労面はのぞく。
・全ての指は独立である(またはそのように訓練するべき)
→かなりの従属性がある。
これを利用した方が合理的である。
若い時ならば訓練可能かも知れないが、
ピアニストが少ないように、
訓練を前提とするべきではないと考える。
「我々はピアニストではない」を前提に、
配列は組まれるべきではないか?
議論は以上だ。
900連接を全て調査することで、
曖昧であった2連接の描像が、
ずいずんハッキリと見えたように思う。
今後は人による差異、
n連接に拡張したい。
2022年09月04日
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私も計っていたことをすでに忘れていました!
まあ、自分は幼いころに左利きだったのを右利きに直されたらしく、利き手が中途半端なんで参考になるかどうか……。
それでも大岡さんの分析を参考にエクセルにデータを入れるだけで分類するものを作ってみようと思います。
もっとも計りなおすかもしれません。
というのも、左右交互でやたら速いものがあり、脳か神経が疲れていないときは再測定しても似たような数字が出るんですが、900通りもあると3時間はかかるので疲れたときの数字が取れたほうがいいと思えるんです。
100個ランダムに測定したところで破棄して全部計りなおすとか。
ほか、画面を見ると失敗しやすいので見ないで測定してしまったし、500通り過ぎたころから左右交互は左右同時押しっぽく「タラッタラッタラッ……」と入力すると少し遅いが確実、とかの発見もあったので。
同時押し禁止で計るとものすごく結果が変わるかも知れませんね。
それにしても、アルペジオは最初の勢いのまま20×2打鍵を押し切れる気がしますが、ほかのキー連続は途中で失敗するから我慢してゆっくりにするといったことになりました。絶妙な打鍵数です。
左右交互打鍵は平均的、って同感です。
僕の測定も数日に分けてやったので、
条件が対等かといわれるとそうでもないです。
ただもう一回やるのはしんどすぎるので…
左利きから右利きへの矯正のデータは、
また違う傾向があるんですかね。
色々な人のデータは見てみたいですね。
私の測定値を組み込んで、入力欄から自動で結果へ色分けした数字が入るようにしました。
結果は微妙に異なるところがあるものの、だいだい同じ傾向だと考えられます。
矯正していても左手は遅かった!です。
だいぶqwertyの運指が入ってる感じを受けました。
ouとか僕苦手運指だからなあ。
長年の習慣というのは部分的に影を落とすんですねえ。
qwertyが得意な人が作った配列は、
qwertyがマスターできなかった僕はかなり苦手なんだろうな…
特に右手アルペジオの傾向が全然違ってて興味深いです。
これは他の人のも覗いてみたくなるな…