あれだけキースイッチを色々言うてた僕が、
そういえばピタリとキースイッチについて何も言わなくなった。
それは、Pearlioでもうエンドゲームではないかと思っているからだ。
かなり高いけど、一度JKLの3キーだけでも装着してみて欲しい。
これ以上のエンドゲームはもう現れないのでは。
このスイッチの最大の特徴は、滑らかさである。
キーの滑らかさを司る要素は、
接合がきっちりしてること
(ブレとも関係するが、そもそも精度の低いスイッチは、
滑らかには感じない)、
摩擦係数のふたつだろう。
このうち、摩擦係数を下げるためにルブがある。
昔は手で塗っていたが、最近はファクトリールブも増えてきた。
ルブはあくまで加工手段でしかないと思う。
もっと本質的なのは、
ステムとボディの材質だ。
いわゆる普通のプラスチック(ABS?)から、
POM(自己潤滑性があるやわらかめ)、
ナイロン(柔らかく衝撃吸収にすぐれているので、
ボトムに使われやすい)、
PC(固くてグラつきが少ないが、摩擦は大きいような)、
などが工夫されてきた。
摩擦係数は科学的な解明はまだ完全にはされていない。
何と何の要素がどのくらい効くのか、
方程式が確立されていないのだ。
だから、素材の組み合わせで、偶然いいものができるのを待つ必要がある。
POM×POMよりも、POM×PCのほうが摩擦がなかったりするから、
話はややこしい。
またプラスチックは混ぜることも可能で、
どの要素がどれくらい配合されてるかでも変わってくる。
だからこれまでのキースイッチの滑らかさの歴史は、
どのプラスチックをどう組み合わせるか、
の歴史であったといっても過言ではない。
(ルブはオプション)
そこに登場したのがウムピエ素材だ。
正式名称UHMWPE。超高分子量ポリエチレンの略らしい。
製法や構造は各自調べるとして、
最大の特徴が、摩擦係数が極めて小さいことだ。
じゃあ最強じゃん、なのだが、
極めて成形精度が不安定らしい。
ステムの精度が出ないっぽい。
なので、ウムピエをいくらか配合したものが、
ウムピエステムなどと呼ばれて珍重されてきた。
代表的なのは、
Everglide Jadite、
Tecsee Ice gprape
などだろう。
これらはたしかに滑らかで、
最初に触った時は驚いた。
だけど成形精度の問題か、
ステムのぐらつきが気になった。
また、軽いバネに交換すると、
なんかザラザラさが増すような感覚があった。
大量にルブしてごまかしていたが、
正解かはなんともだ。
Pealioは、
このウムピエ100%ステムを実現した、
初のスイッチである。
(ステムパーツだけならかつてInkvrが出してて、
みんなすげえって言ってたんだけど、
v2が精度がガタガタで、ブームが急速に萎んだ。
僕は買いそびれたので、
余計ウムピエステムが気になってたのだ)
成形精度の問題はクリアしたようだ。
おそらくハズレを選別してるだけだと思うが、
その分のコストが乗っているのだと思われる。
この滑り感が素晴らしすぎるのである。
僕は軽い押下圧を求めて自作キーボードに入ったので、
30g前後にバネを交換する前提で、
スイッチを選別している。
ところが高級スイッチと呼ばれるやつって、
大体60g前後でチューニングされていて、
30gになると急にぽやっとするんだよね。
なんでかは分からない。
軸ブレも感じるし、
滑らかさが失われてザラザラを感じることが増える。
指の感じる垂直成分が減ると、
水平成分のことを感じるようになるのだろうか?
(この感覚はもとの60g前後のバネに戻すと消えるため、
バネと主観的滑らかさは、
一見関係ないようでも相関があると思う。
僕の経験論だ)
で、このPearlioだけは、
軽いバネに変えても滑らかさが減じなかった。
だから僕はエンドゲームだと思ったのだ。
僕はタクタイルとクリッキーは使わず、
リニア一辺倒なので、リニアのスペックを以下にならべる。
押下圧
フォースカーブ
滑らかさ
軸ブレ
底打ち感
トラベル距離
押下圧は軽ければ軽いほどよいと思っていたが、
リニアで軽くすると、底打ちの時に底を叩いてしまい、
指にダメージがあることがわかる。
だけど単なるリニア30gだと重い。
25g以下は指が痛い。
リニアのフォースカーブでないバネで、
この問題を解消する。
プログレッシブ(後半重く)は、
ふわふわ感は面白いのだが、
底打ちの感覚が欲しい時に、重たくて曖昧で嫌だった。
ロングスプリング(前半重く後半抜ける)が、
僕の好みだとわかった。
色々ためして、Tecsee 2 stage 37gを愛用している。
しかしこうなると、
底打ちが硬いと同じ問題にぶちあたるため、
底打ちをどう柔らかくするかがしばらく課題だった。
色々試したなあ。
重たいバネを短く切って二重バネを仕込むとか、
シリコンシートを切って底に貼るとか、
ステム穴に柔らかいエラストマー素材を入れるとか。
Pearlioはどうだったかというと、なんと無改造。
ウムピエが硬くない(衝撃が抜けない)ので、
このカラカラしてる底打ち、悪くないな、
と思ってしまったのだ。
CAPスイッチの構造だから、
ステムが円柱のヘリが当たることで衝撃分散しているため、
ポールによる衝撃と違う点もあるかもしれない。
トラベル距離はスピードスイッチの好きな僕は、
1mm前後に拘り、
底にプラ板を入れて短くしたりして改造してたけど、
Pearlioの前ではどうでもよくなった。
軸ブレも、Boxステムは最低限必要で、
Kailhの丸型ステムを組み込めるような改造を、
よく考えていたものだ。
ところが、
Pearlioの滑らかさは、
それらのスペックよりも、
圧倒的な滑らかさならば、
何もいらないと主張するのである。
アクチュエーション距離やトラベルがふつうでも、
まあまあ軸ブレしても、
底打ちしても、
滑らかさには勝てない、
というのが、
僕の結論だ。
静音スイッチももはやどうでもよく、
このスイッチの快感が減るくらいならば、
改造せんとこ、
というのが現在。
たぶん、セミサイレントには改造できる。
トップハウジングのステムの両肩が当たるところに、
手芸用のシリコン接着剤を塗布する改造でできる。
実際親指キー2個はそうしている。
数をやるのがめんどうでサボってるだけ。
あとステムの通り道に接着剤がはみ出すと、
滑らかさが失われるので、それを避けたい気持ちもある。
それくらい、ヌルヌルの次の次元の滑らかさ、
スルスルとでも表現するか、
が気持ち良い。
まさか全てのスペックよりも、
滑らかさが最優先とはね。
死ぬほどスイッチを触って、
キメラも色々やってみて、
それがやっとわかったのか、って感じ。
歴代の改造スイッチは保管してあるが、
もういらないかもしれないなあ。
Everglide Tourmaline v2
Tecsee Jadite
Gateron Silver Pro
Everglide Aqua King
NK Box Cream
Durock Alpaca
Durock L1
Kailh Speed Silver
Gateron Ink Yellow
NK Cream
あたりを改造しまくってきたが、
結局Pearlioには勝てないんだな。
問題は価格のみだ。
これさえ乗り越えれば、涅槃の打鍵が待っている。
まずは30キー6000円を投資してみたまえ。
あとTecseeの2 stage 37gのバネも合わせてどうぞ。
もっと軽いのも欲しい気がするが、
まあとりあえずこれでなんの文句もない。
これだけ長い時間不満が出ないスイッチは、
今までではじめてだ。
静電容量のHHKBやNiZですら、
僕は不満だった。
それより不満が出ないのは、
かなり珍しい。
僕は涅槃に達したのだろうか。
アクリルのコンベックスキーキャップとの組み合わせは、
極上の体験で、
先日のキー部でも好評だった。
みんなここに来いよな。涅槃はここにある。
2022年08月18日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック