2022年09月06日

100倍vs1.5倍

某仕事で、音楽の出来がよくなかった。

音楽屋さん的には「これはまだ仮録音で、
このあとの本録音で100倍良くなります!」
と言われて、そんなには良くならんやろ、
と疑っていた。

で、出来上がった音楽は、1.5倍程度の出来だった。

つまりこれは、主観的努力と、
客観的評価の差である。


自分的には当初の100倍になったと思っていても、
周りから見れば、
まあ多少良くなったね、
にしか見えていないということだ。


客観的に100倍になるって相当だぜ?
名曲ランキングが100位以上上がるってことでしょ?

急にそんなにはならないよね。

ある台本で、素人役者が演じたものがあって、
それをプロの役者が演じても、100倍にはならない。
10倍くらいにはなるかもだけど、
100は盛りすぎだ。
それは役者の過大評価というものだ。

役者を変えるよりも、ほんとうは台本を100倍良くするべきだ。
そしたら、役者の増幅力で1000倍を目指せる。


もちろん、台本を100倍良くすることはできない。

あるものの増幅だけでは、せいぜい1.2倍だろう。
1.5倍に出力を上げるアンプは、
相当歪みが出ると思う。

もし台本を数倍よくしたかったら、
「同じパーツの構成で、各パーツを磨くこと」だけでは足りない。

再構成、足し引きだけでなく、
そもそもの柱の大転換や骨格レベルの工事が必要で、
あるいは目指す方向性も全く変わるかもしれず、
それって別物ってことだ。

つまり、別物のよりよいものを目指すと、
1.数倍の世界から離れられる。

もし100倍努力したのに届いていないと疑問に思うならば、
登る山を変えることを検討すると良い。
でもそれって別物をつくることで、
ほぼほぼ同じ労力を支払うことになるけどね。

あるものを増幅するアンプでは、
1.5もいかないのが相場だね。



あなたの100は、他人から見て1.5。
あなたの努力や成果は届かない。

他人の1.5は、あなたから見て100。
他人の批評や誹謗中傷はものすごいダメージ。
あるいは期待に応えるには途方もない壁を登る必要。

整形を繰り返す人は、
1.00001が100000くらいに見えてるんだろうな。

この、主観と客観の目盛りの差を、
どう理解してるかが、芸術家には必要なのだ。


自分の納得だけではない。
世間の納得だけでもない。

自分と世間の納得の、両方をやらないといけない。

自分の納得は、他人からすると余計なこだわりに見えるかもしれない。
しかし同業者から見て手抜きだとバレるわけにもいかないし、
同業者が度肝を抜かれるものが、時を超える芸術になる資格がある。

他人の納得は、うつろいやすい。
でも火がつけば一気に広がる。
常に誤解と不正確さを持つ、雲のようなものだ。
あなたのたくさんの他人への接し方がそうだろう。
全然細かい区別がつかないし、だけど芯の部分を食いにくる。



100倍よくなりますと言った音楽プロデューサーは、
プロ同士の信頼の基盤、「センス」を、
もっとも疑われる結果となった。

目盛りのチューニングを意識しよう。
今あなたはどこからそれを眺めているか?
posted by おおおかとしひこ at 07:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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