まあひとつのコツみたいなもんだけど。
集団と集団、という二つの集団を出すのがコツ。
まずひとつの集団を作ろうか。
色んなやつがいるはずだね。
個性的な連中がいるし、個性的じゃない人もいるだろう。
なぜその集団はその集団になっているのか。
なぜ集まっているのか。
趣味のサークルでもいいし、民族的宗教的団体でもいいし、
呉越同舟でもいい。
なんでもよいので設定できるだろう。
そこに似たやつを設定してもよいし、
険悪で集団が壊れかねない爆弾を仕込むこともできるだろうね。
それは、人間の集団をどれだけ見てきたかで決まると思う。
魅力的な集団をつくってもよいし、
反吐が出るような集団をつくってもよいぞ。
さて、ではもうひとつの集団をつくりなさい。
まったく同じ集団ではないだろう。
でも同じ人間という生き物だから、
どこか似たところは出てくるかもしれない。
でも違うところも多いだろうね。
どういう人間たちがいるだろう。
集まる目的はなんだろう。
一つ目の集団と変えたほうが面白くなるだろうから、
まったく違う方向に考えるだろう。
でも、
もう一方の集団と、
違うけど似たようなやつがいるだろうし、
同じだけど本質は違うやつもいるだろうね。
さて。この集団と集団が出会うとき、
どうなるか?を考えるのだ。
はじめまして、仲良くしましょう、
と最初はなるだろう。
なるべく争いを避けるのが人間だ。
だけど、ある一定期間同居しなければならないとしたら。
たとえば単純に同じマンションの隣部屋になっているとか、
コミケの隣のブースだったとかでもいいよ。
どこかでいざこざが発生するよね。
何か我慢や怒りが溜まってて、
言わない時間があったとしても、
いつか堪忍袋の緒が切れるのだ。
想像しよう。
一つ目の集団と、二つ目の集団の、
誰と誰がもめる?
その内容は?
最初は小さなことからだったとしても、
なんだかあいつ気に入らねえとなったり、
我々と彼らは違うのだ、と納得したりするだろう。
でもそのうち、
「違う者とは一緒にいれない」と、
「異なる者の排斥」という気持ちへと動いていくはずだ。
なんなら少し阿呆なやつがまたちょっかいをかけるかもしれない。
それは、「集団が異なる」ことと、
「一緒にいなければならないこと」に起こる、
人類の本質ではないかと思う。
その集団が国家であれば、
戦争という形態をとるだろう。
未開部族と未開部族ならば原始的戦闘で、
21世紀なら代理戦争や経済封鎖かもしれない。
サークル同士ならば、いやがらせや第三者に訴えるかもしれない。
武術の道場と道場同士ならば、
こっちのほうが強いとなり、じゃあ試そうとなるだろう。
(カンフー映画によくあるやつ)
企業同士ならば、
スパイ映画のようなひそかな潰し合いになるかもしれない。
まあやり方はなんでもいい。
異なる集団と集団を創作すると、
衝突の原因をつくってあげるだけで、
内部の力学が勝手に動きだすよね、ということだ。
勝手に動き出さないなら、
まだ生き生きと集団をつくれていないのかもしれない。
争いの発端から最後まで作れと言っているわけではない。
勝手に動き出すよね、までの話。
こっちの集団のあいつと、
向こうの集団のあいつが、
こうもめて、そいつとそいつが参戦して、止めたりあおったりして、またそれでもめて、
大事態に発展して……
なんてことは、集団内の人間関係ができていれば、
ある程度は想像できるようになる。
集団内の力学が詳しく作られていれば、
それも利用できる。
嫌いなやつとか、苦手なやつとかをつくっておけば、
嫌なやつをもめごとに放り出してやれ、
みたいな内部工作もあるだろうし。
そんなことをして、勝手に転がすことが出来そうだ、
という確信を得よう。
さて。
ここまではまだ準備段階だ。
そういうものをつくったら、
置いておいていいよ。
得意な人は、いくつもの集団対集団の、
ストックをしておいてもいいよ。
リーダーは誰か、どんなタイプか、
参謀はいるのか、他にどんなタイプがいるのか、
マスコットや癒し系は、
軍曹みたいな実行に優れたタイプは、
内弁慶は誰か、スネ夫みたいなダメなやつは誰か。
漢気があるのは誰か、ないのは誰か、
などを考えておくだけで、
何かあったらざわざわすることが想像できるよね。
これは普段から人間関係や集団を、
どのようにして観察しているか、ということでも増幅すると思う。
ようやく本題。
あなたが思いついたストーリーが、
うまく進展しないとする。
ある事件を思いつき、
なんとなくの展開は思いつき、
落ちやテーマらしきものは見えたのだが、
一向に全体が面白くならなそうなときに、
この二つの集団のストックを使ってみるといいぞ、
という話だ。
つまり、主人公を一方の集団に、
すでに敵役がいればそいつをもう一方の集団に入れてしまうのだ。
敵役がまだいなくても、もう一方の集団の中に、
敵になるやつが決まるだろう。
相手の集団のリーダーでもいいし、その中の切れ者でもいいだろうね。
そうすると、話が急に面白くならないか?
展開がいくつも思いつかないか?
要はこれは、
事件の発端と解決という主人公が担うストーリーラインと、
コンフリクトという物語のエンジンのストーリーラインを、
別々につくっておいて、
合成しよう、というレシピである。
あくまで合成だから、
かっちり合うわけではなくて、
ある程度アレンジして合成する必要があるかもしれない。
暴走族の集団同士のつもりが、
国家の戦争ものになるかもしれない。
でもそこに面白いキャラクターがいたり、
面白い人間力学があれば、
かならず面白いストーリーになるに違いない。
そして、面白いキャラクターがいればいるほど、
湯水のように展開のアイデアがわくだろう。
主人公が最初はある集団に属していて、
途中から別の集団に属するようになってもいいよ。
ある部隊が全滅して別の部隊に加わるとか、
転職するとか、
引っ越すとかなどのきっかけを途中でつくればいいんだよ。
その集団が先に準備してあった集団Aで、
集団Bがすでにいるか、あるいはまた集団Bを出現させればいいだけの話だ。
主人公は明快な事件解決の動機と目的があるから、
主人公の属する集団が、
それを同じくするか、違うんだけど主人公の目的と近くなるように修正するか、
になるなどして、話は進めればよい。
その修正するまででもすでにプロットがいくつか書けるだろうね。
そうこうしているうちに、集団Bとの間にいざこざがあって、
因縁が生まれて、当初の事件と相まって、
話がコンプレックス化(複雑化)すればいいわけだ。
それらを全部解決するにはどうすればいいかを考えて、
最終的に最初に考えていたような、
落ちへと誘導できれば、
一本できると思うよ。
シナリオ創作の難しさのひとつは、
中盤にあると思う。
でもストーリーの中盤のエンジンはコンフリクト、
たいていは人間の集団同士のコンフリクトなのだから、
その火種だけを先につくっておく、
というパターンだ。
ものすごく荒っぽく「風魔の小次郎」でたとえると、
小次郎と姫子、蘭子、
白凰と誠士館という対立構図と、
敵の中に忍びがいて、ライバルは武蔵で、
ゴールは白凰の勝利、という明確なメインプロットラインと、
中盤、
風魔忍者集団と、夜叉八将軍集団との対決は、
別々の仕込みを合成してよい、
ということだ。
つまり、
先に、竜魔、霧風、項羽、小龍、麗羅、みたいなキャラと、
人間関係と、目的みたいなものをつくっておき、
対称的な、八将軍のキャラをつくることは、
小次郎や武蔵や学院の対立構造をつくらなくても、
可能であるといえる。
そして、この風魔集団、夜叉集団というストックは、
風魔の小次郎という物語に使われなくても、
宇宙戦争ものにも使えるかもしれないし、
性を女に読み替えて、
女子高のどろどろした内部抗争の物語にも使えるかもしれないということだ。
車田正美の場合は、
メインプロットありきで本編を走らせて、
あとづけでこの集団たちをつくっているような印象を受ける。
映画の場合はあとづけはばれるから、
そうではなく、
まるで最初から準備していたかのように作るのが理想だ。
で、そんなのなかなかぱっと創作できないものだから、
「ここに3時間煮込んだものがあります」
という風に仕込んでおく、
ということである。
僕は、メインストーリーラインを思い付くことと、
コンフリクトを中心とする展開を思い付くことは、
別の才能というか脳が必要ではないかと思っている。
じゃあ、
別々につくっておいてもいいんじゃないか、
って思ったわけ。
勿論、まったく使えない場合もあるだろうが、
ストックを増やしておくことは、
別に問題じゃないぜ、ってことだ。
自炊する人は、冷凍庫や冷蔵室の片隅に、
ストックした何かくらいはあるだろう。
鮮度が保てないものもあるかもしれないが、
わりと持つタイプもあるだろう。
流行の人をモデルにしたキャラクターはすぐに腐るよね。
長いこと寝かせたら逆にうまく発酵するかもだが。
ふたつの集団を作ろう。
対比的であってもよいし、
似ているところがあってもよい。
それは人間観察の結果生まれるものだろう。
どちらが魅力的でもいいし、両方くそでもいいかもしれない。
メインプロットをその宇宙に放り込むと、
どういう化学反応が生まれるかな。
あるいは、別の集団と集団に放り込むと?
あるいは、メインプロットBをその集団と集団に放り込むと?
こういう風に、組み合わせとしても使えるのがこの手法のメリットだ。
デメリットはたくさん作り置きしておかないと、
ってことだけど、
たくさんつくることくらい、鍛えているよね?
2022年09月14日
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