どんなに面白くても、これだけコンテンツがたくさんわいていると、
まず見てもらえないという状況が発生していると思う。
じゃあ釣り餌は何か、ということを考えるように自然となってくるよね。
コンテンツが場所に制限されていたころ、
つまりネットがなかったころは、
「その棚にないものはないです」だったから、
その棚だけが世界のすべてだった。
子供のころは毎日テレビ欄を見て、
今夜見るものの計画を立てていたものだ。
「この中から選ぶしかない」から、
その組み合わせを考えることだけを考えていればよかった時代だ。
雑誌もいけてるやつは数誌しかないから、
その中を選べばよかった。
アイドルグループで3人しかいないみたいなことだ。
これだけをチェックしていれば大丈夫だった。
今アイドルグループは48人がデフォになってしまった。
その中から「選ぶ」はできない。
隅々まで検討して、
神の一手にたどり着くようなことはなく、
「パッと見で直感で推しに出会う」しかないような気がする。
多チャンネル時代になると、
少ないニーズも抑えられるようになる、
なんてことが昔言われたが、
その少ないニーズにどうやってリーチするのか、
まで誰も考えていなかった。
つまり、ゴミの山と、宝の区別がつかなくなってしまった。
小チャンネルならば、宝はおのずと絞られた中から選べばよかったから簡単だった。
今の時代、
全員がホリプロのプロデューサーなみの、
アイドル選球眼を持たないといけなくなった。
で、そんなものは面倒なので、
ぱっと出会ったものしか、選ばなくなっているともいえる。
つまり、情報による高度化されたハイコンテクストが、
成り立たなくなりつつある。
ネットに散らばった情報はほとんどがゴミで、
釣り餌がないと、引っかからなくなっている。
どんなに宝だったとしても、ゴミと区別がつかないからである。
つまり、釣りのうまいやつが勝利する世界になったといえようか。
その中身のあるなしと関係なくね。
すなわち、中身のあるコンテンツを作りたかったら、
釣りがうまく中身のないやつの、
釣りと同じくらい釣りがうまくないといけない、
というパラドックスが成立しているぞ、
というのが本題だ。
私がゴミではない、
という証明をどうやるかは、
釣り餌しかない、という状況になっているということだ。
(他の手段としては、誰かの紹介ということがあるだろう。
だけど容易に想像できるように、
これはある種のコンツェルン、サロンを生み、
閉鎖性の高い身内になるだろう)
ゲリラ活動をしたい人は、
中身で勝負したいからゲリラをやっているというのに、
中身で勝負するためには、
釣り餌が偽物と同じくらいよくできていないと、
まず喰ってくれない、
という状況になっていると思う。
だから、
テレビや映画は、身内の紹介、
という閉鎖性に陥っているのだと思う。
そしてネットは、一部の身内と、
釣り餌だらけになっているわけだ。
さて、「じゃあ釣られてやろうじゃないか」と、
釣られにやってくる好事家はどこにいるだろう。
誰もが釣られるのが怖く、
騙されることを恐れている。
簡単なものは、
釣り餌と中身のペアを初手で公開して、
これ以降も信用される、というやり方だ。
釣ります、でも中身もあります、
よかったでしょ、続きは有料コンテンツで、
という感じだね。
でも人は有料にはなかなか金を払わない。
それが価値があれば払うが、
価値があるかどうかは終わるまでわからない、
というのが物語のややこしさだろう。
だから、釣り餌に金を払うのはいいや、
という考え方になってきて、
「〇〇が出てるからそれに金を払う」しか、
金の払い方がなくなっているのが問題だ。
中身に金を払わせるにはどうしたらいいだろうか。
すぐには解けない問題で気を引くのは、
ひとつの手だろう。
デスゲームものはこれで問題そのものに関心をもたせた。
デスゲーム以外にも、
へんてこな設定をつくることは可能だろう。
「恋人が生まれ変わりの記憶を思い出して、
かつて我々は敵同士であったことがわかった」とか、
色々なものはつくれるはずだ。
そこからどうなり、どう結論が出て、
それが最終的にどのような意味になるかが物語の価値なのだが、
釣り餌の前提ありきで、
結論までうまくできたものをつくることはむずかしいのは、
つくったことのある人ならわかるはずだ。
だけど、
やるしかないとおもうんだよね。
こういう面白そうな釣り餌があります、
こういう展開になります、
釣り餌以上に面白いでしょ、
どうなると思う?
これからこうなるんです、なるほど、
じゃあこれはこうなるのかな、
いや、こうなるんです、これはおもしろい、
そして最後はこうなるんですよ、
なるほど、これは最初から考えられた仕掛けで、
もともとこれを言いたいがための、
釣り餌だったのか、うまいなあ、
というものになっていない限り、
見られて満足できるものにならない、
ということを言おうとしている。
それは難易度がめちゃくちゃ高い。
でもこのネット時代には、それをやらないと、
物語が見られて、人々の心を貫くようにはならないと思う。
分散した状況でどう目立つかは、
釣り餌で決まる。
ネット時代って、そこからやり逃げが出来る。
でも物語とは、それ以前に発生した芸術なので、
やり逃げない責任を負うものである。
やり逃げないくせに、釣りもうまいという、
ふたつのアンビバレントなものを、
両立しないといけなくなった、
と解釈することができると思う。
じゃあどうすればいいかはわからない。
釣り餌から考えるべきか、
中身から考えるべきかもわからない。
両方やってみて、出来るほうを続けて、
たまには逆をやってみて、鍛えるしかないのではないかなあ。
「何がフックになるんだい?」
なんてのが少し前によく言われた。
情報の洪水の中で、何かしら引っかかるものがないと、
見逃されてしまうということだ。
フックはビジュアルが一番速い。
情報が多くて一瞬で見れるものだからだ。
言葉のみではフックには遅いんだよね。
(だからインスタが流行るわけだ)
だけどビジュアルだけだと、
「それがどういうものか」の理解が浅いから、
鮮度がすぐに落ちる。
それを言葉で補い、
「こういう考え方がおもしろいんだよ」の段階にいかないと、
定着はしないと思う。
つまり、ビジュアルで釣って、
言葉で入り口を開くのが、
情報の鮮度と理解の順番としては正しいのだろう。
重要な場面のイコン、
導入のイコン、
キャラクターのイコン、
シチュエーションのイコン、
など、絵によるコミュニケーションができていないと、
フックがないと思われる。
で、「一体それがどういうものか」という言葉による理解が面白くないと、
フックは鮮度をうしないネットの海ですぐに溶けてゆく。
フックをつなぎとめて、成長させるものが、
言葉によるものであるといえるかな。
それを「コンセプト」というんだよね。
「これはこのようにおもしろいものだ」とわかるものが、
次の入り口になっているわけだ。
ここまでが釣り餌だと僕は思っている。
もう飽きたパターンのデスゲームだと、
異様なシチュエーションがビジュアル的なイコンになり、
「ここから脱出しないと死ぬ、これは死を賭けた、
中継されているゲームなのだ。
そしてそれを知ってここに潜入しているやつもいた」
みたいな言葉の理解が必要だということだ。
異様なシチュエーションがフックになればなるほど、
「それがどういうものか」の理解をしたときに、
「その先は?」という興味が生まれるわけだね。
もはやデスゲームは飽きたパターンだから、
あなたの物語は、
これとはまたちがうパターンを編み出さないといけない。
どういう釣り餌があり得るか、
それがどういう入り口になっているか。
その釣り餌の先の、本格的な内容とは。
つまりは三段階、考えないといけないわけだね。
それをうまく制御して、
プロデュースできる人は少ないと思う。
相当な知性と計算が必要だからだ。
だから今、映画やドラマは、
曲がり角に来ているような気がしている。
映画やドラマの釣り餌が、
人気芸能人だけになってしまっていて、
それ以外のイコンを生み出していない。
ブロッコリーポスターがその象徴だ。
トップガンは戦闘機というイコンを我々に提供したが、
それは80年代のレガシーに過ぎなかった。
新しいイコンを、
我々はつくれるだろうか?
それは釣り餌としても機能して、
中身の充実の象徴にもならなくてはならない。
むずかしいことだが、それが出来ないと、
映画やドラマの未来はないのではないか。
一定の枠を抑え、
なんでもいいから流していれば見られる時代は終わった。
うまく釣って、しかも満足させないといけない時代になった。
そしてそれをビジネスに出来ている人はほとんどいない。
だから撤退するか、挑むかは、自由だ。
2022年09月14日
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のよう。
ショート動画で新規をとりこんで、長い動画に誘導する。
おすすめを 次々提示するアルゴリズムが ITの最先端分野の 一つです。
推薦システム の本はITの新作・話題作の棚に並んで ます。
ユーザーの嗜好と動画の傾向のマッチング のいろいろ。
Amazonの過去に購入商品の繰り返し おすすめより高度な。
Youtube 対 TikTok の戦い、リールズも。
日本語でおk
全員がホリプロのプロデューサーなみの、
アイドル選球眼を持たないといけなくなった。
??
9/24 渋谷 宮益坂を歩いていたら、
第45回ホリプロ タレントスカウトキャラバン のパネルが ダンススタジオの玄関に。
ピュアガール ピュアボーイ オーディション #クラスで一番の推しの子 募集
う〜ん、いまどき ピュア を使うワード感覚・センス に違和感。
ーー
オーディション成功の第一条件は 数、 乃木坂46五期生は 8万人以上集めて 合格倍率7千。
そろそろブロックしますね。