2022年09月05日

アングル2

アングルを規定してしまえば、
それは争いの大義名分になるよ、
という話をもう少し続ける。


宇露戦争を考えればわかりやすいか。

プーチンは、
「ウクライナにいるロシア人を解放するため」
この侵攻をはじめた。

ウクライナにはロシア人が取り残されていて、
ウクライナにいじめられているらしい。
だからロシア人が多く住むクリミア半島を奪回して、
ロシア人を解放させようと。

その事実が本当かどうかはおいといて、
ロシアの戦争のアングルはこのようなものだ。

領土侵攻せずに、
ウクライナ在住のロシア人を、
移民として受け入れたらええやんか。

ウクライナへの武力侵攻の理由としては、
かなり弱すぎる。

二週間で決着をつけると豪語したプーチンは、
世界中から非難され、孤立し続けている。


ウクライナは、
「領土侵犯してきたロシアを撃退する」
が大義名分だ。

武力的には大敗と予測されていたが、
なんらかの武器供与があり、
いまだ持ち堪えている。

ウクライナ側は、ロシアをけしかけて、
武器供与を狙っていて、
兵器の実験場になるかわりに、
その後の利益を約束されている可能性は、
なくもない。

いずれにせよウクライナのアングルは、
「領土侵犯を撃退」から変わらず、
正義はここにある。


アングルとはつまり、
正義対正義の構図をつくることでもある。

一方の世界の見え方と、
他方の世界の見え方は違うのだ。

勝った方の世界の見え方に、なるということだ。


世界は同じかも知れないが、
それをどう見るかは、
人によって異なる。

価値観や判断も異なり、性格も好みも違う。
だから人と人の間に喧嘩は絶えないのだ。
喧嘩はどちらか一方だけが正しいということはなく、
世界の見え方が異なっていることが原因である。

だから正論だけが客観的に正しいはずなのだが、
正論で議論するとなぜか嫌われる。
議論が客観ではなく、世界の見え方の調整で運用されている証拠だ。
だって正論で決着したあとですら、
「あの貸しををこっちで返してくれ」なんてネゴシエーションがあるくらいだからね。
それは議論ではなく調整になってるわけだね。



このように、
大義名分を見つけ、
それらがうまく対立すれば、
それはアングルを見つけた、ということだ。

面白く、感情移入しやすいアングルを、
発明できる人が、
物語作家に向いているわけだ。


すぐれた政治家は、
大衆を巻き込むアングルの発明にすぐれている。

「大量殺戮破壊兵器を見つけ、
自由を取り戻す」というブッシュの中東侵攻は、
そういうアングルであったのは、
結末やその後を見ればあきらかだ。

「働きもせず金を転がして儲ける、
汚いユダヤ人を排斥して、
正しいドイツ民族の国家をつくる」
は、ヒトラーの決めたアングルだ。
実際ドイツは破産寸前で、
第一次大戦の賠償金が足りなかったらしい。
悪役をつくれば、大衆は団結しやすい。
そのことをヒトラーは知ってたんだね。

トランプもアングルがうまい。
Twitter活用は、わかりやすいアングル劇場だったのだろう。
バイデン投票の不正の話は非常に面白かったが、
扇動されたQアノンが阿呆すぎたね。
なんだかんだで売り抜けることがトランプの目的だとしたら、
大したビッグマウスの大商人であったことよ。



別に政治や戦争だけではない。
組織をまとめあげなくてもよい。
人が人と争うときには、
大義名分が必要になる。
嘘として利用してもいいし、
本気でやっててもいい。
真意は本人(と観客)しかわからず、
大義名分で戦っていればいいだけだ。

そういえば宗教戦争は、
神の所在についての大義名分というアングルだったわけだね。

「別件逮捕」なんて言い方がある。
本件で逮捕しにくいから、
別の容疑を無理やり捏造して逮捕することは、
まれによくある。
このことも、大義名分が利用されているわけだな。
野球しにバットをトランクに入れていても、
「凶器を持っている」というアングルにされてしまうわけだ。
posted by おおおかとしひこ at 00:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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