自作キーボード界隈では、
Macベースの、「対称位置のキーで、
右手側でオン、左手側でオフ」
というパターンが多い。親指キーが多いかな。
先日、左シフト単押しでオフ、右シフトでオン、
というのを見て、なるほどとうなった。
自作キーボードは親指キーを活用するので、
Mac方式の、
スペースの左右のIMEオンオフを採用すると、
色々渋滞するんよね。
スペース、BS、エンターは当然として、
Tab、Escなんかまで持ってきたい人にとっては、
IMEオンオフはそれだけでモリモリになってしまう。
これと、モデファイヤとレイヤーキー、
Shift、Ctrl、Alt、Win、
Lower、Raiseを組み合わせて、
「単押しだと単押しキー、
押しながら何かだとモデファイヤかレイヤー」
みたいに設定することは可能だから、
親指に3×2ずつ割り振るとすると、
単押しが余ってしまうんだよね。
で、小指外にキーがあれば、
下段を仮にシフトにすれば、
そっちにIMEオンオフを割り振ると。
なるほどいいアイデアだ。
「単押しだと単押し、押しながらだと押しながらキー」
(これを表す一般名称がない)は、
「押しながら何かを押そうと思ったが、
やっぱやめたいのに、
このまま何も押さず離すと、
単押しが出てしまう」
を回避できない欠点がある。
それを回避するために、
自作キーボードでは、
「一定時間(たとえば100ms。デフォは200)
押しっぱなしだと押しっぱなし、
それ以下で離せば単押し」
のように、時間で区切ることが多い。
ゆっくりな作業ならこれで問題なく、
スピード勝負ではないエンジニアの仕事ならば、
これが一番確実なやり方だと思う。
(ただ、文字入力のシフトキーとして使うならば、
そこだけモッサリするからおすすめではない)
IMEオンオフは、
USキーボードのデフォルト設定では、
Alt+`(全角半角キーに当たる場所にあるキー)だ。
なんでこんな所にアメリカは置いたんだろう。
本国モードと現地国語モードを、
ハッキリ切り分けたかったのだろうか。
採用するJIS側も阿呆で、
その位置に全角半角キーを置き、
余った`を移動して…
なんてことをやってしまったがために、
Windowsユーザーは、
IMEオンオフのたびにQの隣のTabの上、
1の外のキーまでいちいち左手を出張しなければならず、
しかもトグルにしてしまったため、
今どっちモードか分からないという愚行を犯している。
この不便を解消するために、
・Capslockを英数キーと読み替えて、A横キーでIMEオフにして、
変換キー横のひらがなカタカナキーでIMEオンにする
(動作が非対称で分かりづらい)
・ローマ字入力前提だが、IMEオンで英語を入力したときに、
確定前状態で、F10(Ctrl+T)で半角英数、
F9(Ctrl+P)で全角英数に変換する
(IMEオフ時に誤ってローマ字を入力したとき、
日本語に変換する機能はない非対称性。
また、FキーとCtrlキーが対照的でなくややこしい。
さらに、かな入力では使用不可)
という問題があり、
これを解消するためにWin10の後期に導入されたIMEでは、
無変換キー、変換キーをIMEオフ、オンに定義するという、
Mac方式を堂々とパクることとなった。
なんという迂遠なことをやっているのだろう。
馬鹿ではないかと僕は思う。
Macの、スペースの左右にオフオンという分かりやすい機能は、
初期から決まり、全く変更のないすばらしいデザインだ。
デザインとは見た目のことではなく、
動線の整理、つまり論理デザインのことである。
もちろん見た目のデザインもMacはすばらしいのだが、
それは動線が整理されているから、
視覚的に整理しやすいのだ。
ビジュアルデザイナーはつまり、
機能をビジュアル化している、
最小の仕事しかしてないんだよね。
「Macはデザインがすばらしい」という文脈では、
視覚的な見た目のデザインと誤解されやすい。
Macのデザインとは、動線と使い方の、
論理デザインのことなんだよな。
そもそもデザインとはそのことなのだ
(美大のデザイン学科ではそれを教える。
だからデザイン学科はバカでは出来ない)が、
日本語の「デザイン」は見た目100%のことだと思われている節がある。
デザイナーがオシャレという誤解だ。
デザイナーは「機能的!」と称賛されなければならないのに。
というわけで、
エンジニアはMac使いが多いため、
自作キーボードでもMac方式の、
IMEオンオフを採用することが多い。
「今IMEがオンかオフか打ってみるまでわからず、
打って間違ったらBSする」
なんてシュレディンガーの猫みたいなものを、
論理デザインとして採用するバカはいるまい。
これらの議論は、
日本語入力をする時に、
全員が議論するべきことであって、
そしてそれは非常に馬鹿馬鹿しいと思う。
Mac方式の採用は遅まきながら賢明だが、
逆に無変換キーと変換キーは、
そもそも何に使うキーで、
何に使われて便利とされたのかの、
歴史的事実が闇に葬られてしまい、
その発掘が難しい。
(詳しい方いたら一覧できるものを教えてください。
XFER、NFER時代から、
すべてのFEPで日本語はどのようにして入力されてきたのか、
そのアイデアを知りたいのです)
無変換キー変換キーは、
もともと短いJISスペースキー(2.5U程度)の真横に、
2U程度のデカさをもってあったキーだ。
それが「使われていない(実態は使い方が周知されていない)」ため、
スペースキーは6U程度に長くなり、
無変換変換は0.75Uに縮まり冷遇されている。
こんな状態で無変換変換にIMEオンオフを当てられたら、
余計使いづらいわ。
この、
Windowsサイドの、何もかも後手の感じが、
僕はとても頭が悪いと思う。
もともとAlt+`にしたのが原因だと思っていて、
さらにそれを全角半角単打のトグルに設定した、
日本のWindowsがバカだと考えている。
「すいません、それよくないんで変えます」
が出来ないことが、
デファクトの原因であることは、
後世の歴史家によって暴かれるであろう。
これに対してMacの日本支部は、
実にスマートなIMEオンオフの実装を発明した。
おそらくこれに勝る動線はないと僕は思う。
惜しむらくは、FJ直下にそのキーがなく、
やや外側に位置することだけだな。
ブラインドタッチではそこへの到達はやや難しいので。
キー配列の標準化は、
普及期に慣れさせるためには有効であったが、
使い込むにつれて改良するべき点が明らかになったとしても、
変えられないという、
重大な欠陥があった。
自作キーボードの流行は、
「誰も改良しないなら、
アイデアを持ち寄ろうじゃないか」
という、
デザイン(論理デザイン)の本来の姿に戻っていると、
僕は強く思う。
そのアルチザンに僕も参加したい。
ということで、
薙刀式は、30キーとスペースキーのみで、
日本語入力をすべて完結することが目的なので、
左右シフトキーは存在しないのが残念。
でも標準運指ではあり得ないから誤打することなく、
同時押ししやすい、
FG同時でIMEオフ、HJ同時でIMEオンというアイデアは、
他のものでパクられてもいいくらいに、
すぐれた動線だと思うけどね。
かつて全角半角キーがつくられたころは、
ここまで日本語と英語が混在することは、
予測されていなかったように思う。
日本語文書だって一太郎で縦書きが主流だったろう。
日本語の横書きで「、。」の代わりに、
「,.」や「,.」に変えようなんて運動すらあったときだ。
(理系論文ではそのスタイルがまだ主流なのかしら)
ここからずっと日本語で書き、
ここから英語でずっと書く、
のように使われていて、
「このhtmlが悪さをするのでdelしてreboot」
みたいな文章(単語は適当)が存在することになるとは、
夢にも思わなかったろう。
ということは、
Windowsの日本語システムは、
すでにずっと現実より遅れている。
メーカーがやらないなら、
我々がメーカーになるしかない。
もし三菱鉛筆やぺんてるが倒産したら、
我々がきっと鉛筆やボールペンをつくらなければならない。
本気で日本はそんな国になりつつある気がする。
欲しい人はきっと沢山いる。
でもその探し方がわからないし、
あるということすらわからない。
だからバンバンアピールしていくべきかもしれない。
2022年09月09日
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