これは、プロパガンダと呼ばれる、
政治的手法であることに気付こう。
典型的な例は、
愛国心を広め、戦意高揚をうたうものである。
第二次大戦で行われた、
映画による洗脳だ。
それは同じく現代でも行われていて、
宇露戦争では、
Twitterや動画で、フィクションと思われる小さな人々の物語が、
沢山拡散されているように思う。
戦争前は、
ロシアの若い兵士が列車の前で恋人と抱き合い、
演習だからすぐに帰ってくるよ、
と約束した話なんかが拡散されていた。
戦争直後は、
ウクライナの大学で出会い、恋の始まる予感の女子大生が、
大学爆撃後行方不明になってて二度と会えない、
なんて話が拡散した。
意図的にバズらせたフィクションなのか、
ほんとうに真実なのかは誰にもわからない。
今もジャーナリストが見たウクライナやロシア、
という設定の、
小さな人々の物語は沢山拡散している。
これがプロパガンダだとしたら、
やり方はより巧妙になっていると感じた。
つまり、
「映画によるプロパガンダ」は、もう古いんだよね。
コスパが悪すぎるんだよ。
何億もかけてつくるより、
Twitterで拡散する180字を考える方が、
目的に対する仕事としてはコスパがいいんだよ。
(バズらせるための架空アカウントでいいねする仕組みも含めて、
何億はかかるまい)
宗教はどうだろう。
映画をつくるよりも、
教祖が目の前で奇跡を起こしたり、
あるいは教祖と直接話をできるほうが、
なんぼかいいだろう。
CDより生演奏、ライブ、といった流れに似ている。
すごい完成度の高い同じものを、
擦り切れるまで聞くよりも、
たった一回のライブの方が、
人の心は熱狂になりやすい。
だから、その宗教の受け入れ態勢が整いやすいんだよね。
広告はどうだろう。
フィクションの物語の形で、
新しい哲学を語れる人は、
今ほとんどいない。
僕はそれをやることで映画監督の力を鍛えようと企んだのだが、
それをやれるチームでないとなかなかうまくいかないことは、
業界に入ってからわかったことだ。
物語を扱うには特別な力(IQでもよい)が必要で、
線のものを点で扱ってしまうと、
線はズタズタになるんだよな。
だから広告の主流は、点なんだよね。
タレントが出てる、一芸をする、
商品カットがドーン。
いわゆる「つまらないCM」に、
簡単に成り下がってしまう。
あるいは、僕は最近ポエムCMって呼んでるんだけど、
いい感じのエモい絵をつないで、
その企業の哲学を語る系のやつ。
そんな他人のポエムなんて誰も興味がないのに、
なぜあれをやりたがるのだろうね。
オナニーショーそのものだと、
なぜ誰も王様は裸だと言わないのだろうね。
つまり、広告のプロパガンダ手法は、
とても単純で退化してるね。
最先端では、ソーシャルグッドという考え方があたらしい。
社会的にインパクトのある何か(大抵は良いこと)をやり、
その哲学がその企業の考え方である、
などのようにアピールするわけだ。
古典的な例では恵まれない子供たちにお金をあげるやつだね。
でもそれは「その企業独自の理念や解決法や技術」
と関係ないから古い。
たとえばアルファ碁による人工知能の勝利は、
Googleの株価を爆上げさせた。
つまりGoogleは新時代を切り拓く騎手の一つになった。
これは広告代理店の企画ではないが、
マスコミへの発表のルートは広告代理店が仕切っている。
まあそれも飽和状態になってきたから、
そのアイデアも枯渇して、
別の手法をみんな考えているだろう。
メタバースの広告、Twitterの広告とか、ダサいものしか出てないが。
つまり、広告においても、
フィクションの物語によるプロパガンダは、
時代遅れである。
もしあなたがすぐれた思想家で、
偉大なる考え方を広めたいなら、
Twitterが最適解じゃない?
YouTubeでもいいよ?
つまりはフィクションによる物語は、
迂遠すぎる、ということを言いたいのだ。
偉大なる考え方を物語で広めたいと思ってるなら、
あなたは時代を読めていない愚か者だと、
自ら告白しているようなものだ。
フィクションでやるべきことは、
面白い物語をつくることだ。
そこを履き違えないことだ。
クソみたいな邦画で、
自分臭を出して、自分の思想の開陳をする人がいる。
古くは実写版「キャシャーン」かな。
あれは陳腐で実に子供っぽかった。
それを文学的とかいって、
「理解の範疇からブラックボックスに押し込める」
行為が僕はよくないと思う。
「この文学性はこれこれこのようなもので、
それはこの映画をより面白くしているか?」
という点で議論するべきだと思う。
つまり、思想の開陳は目的ではない。
それは手段やパーツのひとつに過ぎず、
目的に対して不適格ならば、外すべきものである。
すなわち、偉大なる考え方を物語で広めることは、
目的と手段を間違えているのだ。
2022年09月26日
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